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ニコニコ動画研究──その死角と展望【11】

記者会見中継からユーザー動画まで──ニコニコ動画は震災をどう報じたか?

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──ここ3年ほどの間に、"報道"色の濃い番組を増やしているニコ動。今般の東日本大震災でも、その技術やノウハウは生かし、発生直後からさまざま番組を配信した。ここでは、その中でも色濃く特徴の出た8つの番組を紹介し、ニコ動が震災をどう報じたのかを見ていこう。

ニコ動"運営"への激励コメントも

■「経済産業省原子力安全・保安院 記者会見」

「経済産業省原子力安全・保安院 記者会見」

3月14日〜 @公式生

担当者であった根井寿規審議官が「こんなこと、やりたかないんですが......」などと笑みを浮かべながら発言したことが問題視され、以降、西山英彦大臣官房審議官にバトンタッチするなど、しょっぱなから波乱含みだった原子力安全・保安院による記者会見。ニコ動ではこの会見を、連日公式ニコ生で配信している。3月13日未明の会見1日目は、始まる1時間以上前から会場で中継を始め、会見終了まで配信は約3時間にわたった。なお、この会見以外にも多くの地震関連の公式生が、ニコ動アカウントがなくても観られるように措置が取られている。

#edano_neroも大盛り上がり

■「枝野幸男内閣官房長官記者会見生中継」

「経済産業省原子力安全・保安院 記者会見」

3月17日〜 @公式生

首相官邸で行われる枝野官房長官の記者会見が、17日からネットメディアにも開放され、ニコ生での中継が始まった。計画停電開始から4日が経過した同日は、計画外の大規模停電の可能性が報じられており、より徹底した節電が呼びかけられた。話題が、燃料プールの冷却のために同日スタートしたヘリコプターでの放水に移ると、ユーザーから効果を不安視するコメントが続出。その他に特徴的だったのは、震災直後105時間不眠不休ともいわれていた枝野長官に対して、多くの激励コメントが見受けられたこと。今回、ネット上で最も株を上げた人物といえそうだ。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【10】

"奇妙な法学者"白田秀彰が吼える! 「なぜニコ動に動画を上げるに至ったか? それはテレビ出演のフラストレーションだ!」

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──専門である知的財産権法を中心に、ネットに関して活発な発言と積極的なコミットを続ける、法学者の白田秀彰氏。論じるだけでなく、自身も公式チャンネル「茶会ちゃんねる」にて討論動画等を公開している氏は、ニコ動のどこに魅力を感じているのか?

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白田氏の著書『インターネットの法と慣習』

 私、NHK-BS2でやっていた『ザ☆ネットスター!』(2008〜10年)という番組に出演していたんです。批評家の東浩紀さんや声優の柚木涼香さん、金田朋子さんなどが出演して、ネットで起きているおもしろい現象を取り扱う番組でした。そこで思ったのは、テレビっていうのは尺が本当に短くて、発言の要所だけがまとめて使われてしまうということ。そこにフラストレーションが溜まったので、「じゃあ自分で録画すればよくね?」と思い、昔からやっていた勉強会「ロージナ茶会」のメンバーで動画を撮り始め、うp【※1】したのがそもそもニコ動で活動を始めたきっかけです。

 それまでもけっこうニコ動は好きで観ていたんです。最初はやっぱり初音ミク。自分でも昔多重録音とかやってたので、ミクを取り巻くP【※2】たちのアツい魂に、もうwktk【※3】ですよ! あと外せないのがMikuMikuDance。実用に堪え得る素人の作ったモーション系のプログラムが現れて、さらにほかのユーザーがモデルを追加したり、物理演算効果を加えたりしている。もう、日本人のムダにかける情熱みたいなものが見事に表れていて、感動しました。そんな感動を自分のサイトに書いたのがきっかけで、前述の『ザ☆ネットスター!』出演につながったんですが、いざ出演してみたらフラストレーションを感じ、今度は動画をうpする側に回ったというのがニコ動と私の関係です。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【9】

ニコ生が日本を変える!? 政府会見から討論番組までガチなマジメ番組が急拡大中!!

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──東日本大震災では、既存メディアが届かない場所へ、あるいは既存メディアとは違うやり方で独自の活躍を見せたニコニコ動画。政府会見の中継から始まったそれら公式系コンテンツは、今やテレビを超えようとしている!?

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本誌連載陣の佐々木俊尚氏もニコニコ動
画に注目。『ニコニコ動画が未来をつくる』

 これまで見たように、「オタクのもの」という印象が強かったニコ動は、それゆえにこそ人気を博し、今やテレビに匹敵するほどの巨大メディアと化している。しかし、今ニコ動が注目を浴びているのは、むしろそうしたオタク向けではないほうのコンテンツ、"マジメ"な番組の数々だ。

 それを証明するかのように、今後のニコ動にとってひとつの大きなターニングポイントとなった出来事がある。ほかでもない、今回の東日本大震災、そしてその後に続いた福島原発事故である。

 震災翌日の3月12日から開始された、NHKやフジテレビの震災特別番組の同時放送のみならず、ニコ動では、独自の震災情報番組が制作され、また、枝野幸男官房長官や東京電力、原子力保安院による記者会見の生中継も行なわれた。

 確かに、被災した現地の取材といった、人員や機動力が必要となる番組の制作は、既存のテレビ局にはかなわない。しかし、記者会見などの生中継を、始めから終わりまで編集することなくすべて流すという貴重な環境を提供したことは、メディアによるバイアスのかかっていない、詳細かつフラットな情報を欲している視聴者によって高く評価され、有益な情報源のひとつとして高い認知を得たのだ。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【8】

AV監督・村西とおるが見てみた『エロ配信』──ニコ動には"ナイス"なエロ動画がいっぱい!

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【エロ配信】×村西とおる

「ネットのエロには、とても可能性がある! 一般の人でも、頭を使えば新時代の織田信長になれるツールですよ!!」と語る、村西とおる監督。言わずと知れたアダルト界の巨匠・ハメ撮りの帝王である監督が、日夜キワドい映像が配信されているニコ生で、現存する映像の中から話題の3本をジャッジする!

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村西とおる(むらにし・とおる)
1948年、福島県生まれ。80年代よりAV監督として活動し、3000本以上のAVを制作。「ナイスですね~」といった独特のトークでメディアを席巻する。主な著書に『村西とおるの閻魔帳』(コスモの本)。


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ニコニコ動画研究──その死角と展望【7】

美人振付師・竹中夏海が見てみた『踊ってみた』──胸を打たれた原石の輝き

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【踊ってみた】×竹中夏海

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 モダンバレエ・ジャズダンス・コンテンポラリーダンスなど中学校時代から踊り一筋の人生を送り、現在はアイドルの振り付けを担当する竹中夏海さん。「Perfumeののっちは別格!」「ハロプロの技術は本当にすごい!」と語るように熱狂的なアイドルオタクでもある彼女は、「踊ってみた」動画をどう見るのか?人気の3本をレビューしてもらった。

竹中夏海(たけなか・なつみ)
1984年、埼玉県生まれ。アイドルグループ・ぱすぽ☆の振付師を務め、自身もそのルックスから美人振付師としてメディアで活躍中。公式ブログ


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ニコニコ動画研究──その死角と展望【6】

アナウンサー鈴木史朗が見てみた『ゲーム実況』──ニコ動で人気の"伝説の老兵"も感嘆!

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──圧倒的なタイトル数と再生数を誇る、ニコ動上の投稿動画。その中の「ゲーム実況」「踊ってみた」「エロ配信」という3ジャンルから人気の動画を、その道のプロにレビューしてもらった。

【ゲーム実況】×鈴木史朗

 御年73歳ながら、熱烈なゲームファンである鈴木史朗氏。中でも『バイオハザード4』は、マーセナリーズというミニゲームで6万点取れれば上級者と呼ばれる中、18万点以上を叩き出す腕前を持つ。実況のプロであり、「ゲームへの偏見を取り除きたい」と日々願っているという鈴木氏に、2種類の『バイオ4』と国民的作品のゲーム実況動画を見てもらった。

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鈴木史朗(すずき・しろう)
1938年、京都府生まれ。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、TBSに入社。『さんまのスーパーからくりTV』の"ご長寿早押しクイズ"の司会者として人気を博す。現在、キャスト・プラス所属。


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ニコニコ動画研究──その死角と展望【5】

『踊ってみた』のカリスマ・愛川こずえが語る──「気をつけていることは"下着"です!」

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愛川こずえさんがジャケットを飾り、踊っ
てみた『ルカルカ★ナイトフィーバー』

 自らが振り付けを考えた「踊ってみた」動画で人気が爆発し、ほかの有名踊り手たちとともにダンスアイドルユニット「DANCEROID」を結成し、精力的な活動を続けている愛川こずえさん。彼女にとってのニコ動とは──?

 初めて投稿したのはニコ動を知ってすぐ、高校2年の頃でした。たまたま「踊ってみた」動画を見て、「私もやってみようかな」って、本当に軽い気持ちで始めたんです。幼稚園の頃からモダンバレエをやっていたので人前で踊ることにも慣れていたし、恥ずかしさもありませんでしたね。でも、やるからにはランキング入りを目指そうとは思ってました。そのための工夫というほどではないけど、ツインテールで踊ると、なぜか再生数が上がるんですよ(笑)。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【3】

『ゲーム実況』『踊ってみた』のカリスマが語る──私がニコ動に作品を公開する理由

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 ニコニコ動画といえば、まずは一般ユーザーがアップした独自コンテンツの数々だろう。既存コンテンツを独自編集したものから、投稿者自らが出演したものまで、何がその魅力だとされているのか?

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ニコニコ動画から人気に火がついた初音ミク
のゲーム『初音ミク -Project DIVA- 2nd』

 ニコ動と聞いたときに多くの人が頭に思い浮かべるのは、いわゆる素人系動画だろう。一口に素人系といっても、その中身はさまざま。ドワンゴが公開した公式コンテンツではなく、ユーザーがアップロードしたものということ以外に共通点はないといってもいい。

 それに、素人系とはいうものの、実は制作者が職業作曲家だったり、ゲーム会社でグラフィックを制作していたりするなど、まさしくプロの人間が、個人的な活動としてコンテンツを作成していることもあるので、一概に素人とも呼べないのだ【プロがかかわったそうしたコンテンツは、「プロの犯行」と呼ばれることも】。つまりニコ動が、プロ/アマを問わず、商業的な利益を求めずに自分の作品を発表する場として認知されているともいえよう。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【4】

『ゲーム実況』のカリスマ・ルーツが語る──「ニコ動で人気が出ても、世間じゃな〜んにも通用しない!?」

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ルーツ氏が「月刊コミックバーズ」にて連載中
『するめいか 1』

 自らが作ったRPGゲームの実況動画を投稿したことによって、人気投稿者のひとりとなったルーツ氏。それがきっかけでウェブ上でのマンガ連載、果てはマンガ家デビューを果たしたという異色の経歴を持つ氏だが、そこには人知れぬ苦労もあったようで──。

 2007年くらいに、ニコ動で偶然見た『ファイナルファンタジー4』のゲーム実況に衝撃を受けて、自分もすぐに動画投稿を始めたんです。それまではMAD系の動画ばかりだったから、コレは斬新だと思って。ランキングで上位に食い込むのがモチベーションで、再生数が増えるのを、いつもひとりでニヤニヤして見てました。そうしたら実況を見た編集者の方に声をかけていただいて、幻冬舎ウェブマガジンで連載スペースをもらえることになり、そこで僕はマンガを描いていて、それが「コミックバーズ」での連載につながっていきました。 だからマンガ家になれたきっかけはニコ動だったんです。

 でもいまだに"ゲーム実況の人"と思われることが辛くて、この前ブログで引退宣言をしました。「ずっと見てました」って言ってくれる人もいてうれしかったんですけど、ニコ動での人気は、社会ではなんの実績にもならないんだとたびたび感じます。就活の時「ゲーム実況で何十万再生されました!」って面接官に話したら、ポカーンとしてましたし(苦笑)。人気が出るとチヤホヤされて気持ちいいけど、それは結局ネット上だけでの話。そのギャップへの戸惑いはありましたね。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【2】

女子高生から政治家、 批評家まで──ニコ動初心者は必見!"マスト!"な6ジャンル

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──今や約575万超もの動画コンテンツを擁するニコニコ動画。「ものは試し」とアカウントを取ってのぞいてみようと思っても、「何をどう見ればいいの!?」ということになる可能性は大。そこでここでは、今注目のジャンルを6つピックアップ。これらを念頭に、当特集を読んでいただければ幸いだ。

【素人系動画】

素人のリアルな生態をかいま見

■ユーザー生放送

 素人であるユーザーたちが独自に行うのが、ユーザー生放送。内容は、"生主"(配信者)によるただのおしゃべりから、ゲーム実況、犯罪スレスレの過激なネタまでさまざま。画質や音質が低いことと、同種の放送の数がかなり多いことから、ある程度ニコ動に慣れ親しんだユーザー向けかも。

 しかしそんな傾向を越えて話題になったのが、この「化粧配信」。すっぴんで登場する、正直かわいいとは言いがたい生主が、独自の「抱かれ系メイク」を自らに施しながらポイントを指南するこの動画、後編では同じ人物とは思えないほどの変貌を遂げており、多くのユーザーに驚きと感動と希望と恐怖を植えつけた。その変貌ぶりと話題性は「週刊ポスト」(小学館)などの週刊誌や『DON!』(日本テレビ)のようなワイドショーで紹介されたほど。

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連載
映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

“超”現代哲学講座
哲学者・萱野稔人の
“超”現代哲学講座
『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』

おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。
花くまゆうさくの
カストリ漫報
『おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。』


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