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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【7】

「一時の感情で動いても意味がない!」現代芸術家・ヤノベケンジが説く"反原発のために芸術がすべきこと"

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──「アトムスーツプロジェクト」をはじめ、20年にわたり独自の視点から"反原発"作品を作り続けてきた現代芸術家・ヤノベケンジ氏。同氏に"反原発"をアートで表現することの意味、そして今後"反原発"作品はどうあるべきか、インタビューを決行した。

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ヤノベケンジ氏の公式HPより。

「今ここに芸術が必要か?の問いにはっきりと答えたい。今でこそ必要だ。と。」

 京都造形芸術大学のアートプロジェクト「ウルトラファクトリー」の公式ブログに、震災後、力強い言葉がつづられていた。同プロジェクトを主宰し、日本の"反原発"アートを20年にわたって牽引し続けてきた現代芸術作家、ヤノベケンジ氏の言葉である。

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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【6】

30万ダウンロードで寄付は4800万円......でも、反原発作品は儲からない? 反原発運動とお金のカンケイ

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写真左/斉藤和義の「ずっと好きだった」。オリジナル
曲のオリコン週間最高順位は8位。写真右/CD化も
したチーム・アミューズ!!の「Let's try again」。

──RCサクセションの反原発ソング「サマータイム・ブルース」を収録したアルバム『COVERS』が、Amazonの一部門で4位にランクイン。20年以上前に発売された作品として異例の売り上げを見せた。そこで、物流コンサルタントの坂口孝則氏に、反原発作品は儲かるのか、話を聞いた。

 ヤノベケンジのトらやん人形(体長34㎝のミニバージョン)は一体約36万円。村上隆の「タイムボカン」はリトグラフでもおよそ20万円......と、"反原発"を訴えるだけでなく、売り切れ続出のこれらの作品を見るに、「意外とカネにもなるのか?」という気がしてきた。『思考停止ビジネス』(徳間書店)の著者で、消費者心理に詳しい坂口孝則氏は、こう分析する。

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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【5】

ガンダムの生みの親・富野由悠季が語る「モビルスーツの動力となる原子力と表現活動の脆弱」

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『機動戦士ガンダム』から、新著『「ガンダム」の家族論』まで、多くの場面で原子力の運用について慎重に言及してきた富野由悠季監督。希代のアニメ作家に、昨今の反原発表現について聞くと、「脆弱」と一蹴されてしまった。その後、原発に対するレポートは続き......。

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富野由悠季監督。(写真/若原瑞昌)

──今日はガンダムの動力源に核反応炉を用い、またその一方で劇中、核兵器の使用を禁ずる南極条約を締結させるという設定を作った監督に「原子力と表現」について伺いたいのですが......。

富野由悠季(以下、富野) 創作の際、原子力の問題を考えたことはありません。当然、ガンダムの動力についてはアニメというファンタジーを成立させるためにあり得ない核反応炉を使っただけです。

──何も考えていなかったんですか!?

富野 考えない理由はあります。ガンダムのような人型の巨大兵器を駆動させる動力源なんて核くらいしか思いつかなかったし、現実の世界であんな巨大なエネルギーを生み出す核反応炉なんて、未来永劫、作れるわけがない。ビームライフルも同じで、スーパーカミオカンデの研究をしている物理学者の中にはガンダム世代もいるんだけど、その人たちに聞くと、ガンダムが装備していたビームライフル級の破壊力で粒子や陽子を撃ち出すには、東海村にある大型加速器施設の3~4倍のものが必要だっていうんだよね。

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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【3】

「岡本太郎のやってることが普通だよ!」アートディレクター・若野桂が語る"反原発"ってイイじゃん!

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──ツイッター上で原発を痛烈に批判し、自身の作品でも原子力への嫌悪感を露にする若野桂氏。こうした活動の背景にある作品について、話をうかがった。

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【12】反核をテーマにしたイベント(2011年)大沢伸一氏もゲスト参加する『CLICK!!!』のフライヤー。VJとして若野氏も「反原発」セットをひっさげて参加。【13】『ふたりのイーダ』(1976年)松谷みよ子の同名小説が原作。幼い兄妹が帰省した広島の祖母の家の近くで、しゃべる椅子と出会うのだが......。【14】『はだしのゲン』(1973年)作者の原爆体験を元にした、言わずと知れた名作マンガ。戦中戦後を生き抜く中岡ゲンの人生を描く。【15】『sign』(2002年)原爆を悪の権化として描いている作品。同曲のPVがシカゴ近代美術館のアート・フェスティバルでエントリー上映されるなど、世界的に評価が高い。【16】『明日の神話』(1969年)水爆の炸裂する瞬間をテーマとした岡本太郎による壁画。現在、京王井の頭線渋谷駅連絡通路に設置されている。右下の部分はアーティスト集団Chim↑Pomがゲリラ的に付け足して話題となった。

 俺は5月に大沢伸一くんと名古屋で「反核!」をテーマにしたイベント【12】をやるんですけど、そこでVJとして「反原発セット」っていうのをやろうと思ってます。70年代、俺が子どもの頃は、隣の福井県で敦賀原発が動いてて大人が「あの辺に住むと殺されるよ」とか話しているのを聞いていたし、昔は核や原子力について考えさせられる作品がテレビでいくつも流れていました。当時、『ふたりのイーダ』【13】って映画を見た記憶があるのですが、その内容がすごくて、幼い兄弟が帰省先でしゃべる椅子と出会うんだけど、実はその椅子は原爆で死んだ子どもをずっと待ってるっていう......。その映像が幼心にむちゃくちゃ怖くて、自分の中で核に対する恐怖が強烈に残っているんです。けれども、今では「広島も長崎ももう復興したじゃん。今回だって大丈夫」とか言っている人が普通にいます。想像力がなさ過ぎですよ。きっとそういう人は『はだしのゲン』【14】も読んだことがないんじゃないかな。

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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【2】

「『反原発』の映画を撮っても誰も見てくれない!」映画監督・鎌仲ひとみが語る反原発作品

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「反原発」作品をアーティストたちはどうとらえているのか? 原発関連の映画を製作する鎌仲ひとみ氏、「反核」イベントを企画するアートディレクター・若野桂氏、「反原発REMIX」を配信したラッパー・ECD氏に、自身が影響を受けた「反原発」作品について語ってもらった。

──かねてより原発をめぐる映画を撮り続けてきた鎌仲ひとみ氏に、原発問題の本質に迫るための作品を聞いた。

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【1】『アトミック・カフェ』(1982年)マイケル・ムーアの師匠筋によるドキュメンタリー。【2】『サクリファイス-犠牲者』(2003年)チェルノブイリ原発事故処理業者の、その後の苦しみを明らかにするドキュメンタリー。【3】『ナージャの村』(1997年)写真家・本橋成一の初監督作品。放射能汚染された村と、そこに住む人々を映している。【4】『アレクセイと泉』(2002年)汚染された村にあって、なぜか放射能が検出されない奇跡の泉。その泉とともに暮らす人を通して"本当の豊かさ"を問いかけるドキュメンタリー。【5】『東京原発』(2004年)東京に原発を誘致しようとする都知事の発言をきっかけとして巻き起こる騒動を描いたパニック・サスペンス。【6】『ミツバチの羽音と地球の回転』(2010年)祝島の反原発運動とスウェーデンのエネルギー政策から、未来のエネルギーを考える。

 日本で原発問題を描いた映像作品は多くありません。海外では、核兵器に関するさまざまな映像アーカイブをサンプリングして、核兵器推進プロパガンダの恐怖を描いた『アトミック・カフェ』【1】や、チェルノブイリ事故処理業者の現在を追った『サクリファイス─犠牲者』【2】など、かねてから核にまつわる作品が活発に製作されていました。しかし、日本では土本典昭監督による原発に関する新聞記事をまとめた『原発切抜帖』や、本橋成一監督によるチェルノブイリに生きる人々の日常を撮影した『ナージャの村』【3】『アレクセイと泉』【4】といったドキュメンタリーがわずかにあるばかりでした。日本で原発を扱ったフィクションはほぼ皆無ですが、原発の正確な情報を伝えながらエンターテインメント作品として成立している『東京原発』【5】がおススメです。

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"反原発"芸術は、原発を変えたのか?【1】

「芸術は、爆発だ!?」......反原発を訴えた"大御所"による歴史的作品群

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(絵/管 弘志)

 3月11日、東京電力福島第一原子力発電所において、原子力事故が起きた。これまでにも、世界有数の原発所有国である日本では、幾度となく"反原発"芸術が生まれてきたが......意味はなかったのか。映画監督・鎌仲ひとみ氏、アニメ監督・富野由悠季氏、現代芸術家・ヤノベケンジ氏ら、原子力について作品を投じてきた"大御所"たちの声に耳を傾け、今、改めて考えてみたい。

 1954年、アメリカが行った水爆実験に、日本のマグロ漁船第五福竜丸が巻き込まれたことをきっかけに、日本で反核運動が巻き起こった。そんな社会情勢を背景に生み出されたのが『ゴジラ』である。水爆実験によって目を覚ましたゴジラが、東京の街を恐怖のどん底に陥れる映画だ。第五福竜丸の事故はゴジラだけでなく、59年に公開された新藤兼人監督の映画『第五福竜丸』や69年制作の岡本太郎『明日の神話』など、数多くの作品を生み出した。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【15】

元フジテレビ大物プロデューサー・吉田正樹が大胆宣告──「ニコ動に学ばなければ、 テレビはいずれ滅びる !?」

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 2006年の登場以来、ユーザーの支持を得て成長を続けるニコ動。昨今では報道に力を入れるなど、既存の大手マスメディアの役割をも奪おうとしている。果たして、ニコ動はマスメディアを代替し得るのか? テレビプロデューサーの吉田正樹氏が語る、ニコ動の可能性と今後の課題とは──?

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公式で各政党のチャンネルを設置しているニコ動。運営
側のジャーナリズムへの力の入れ具合が見受けられる。
ほかにも大手メディアや企業などの公式チャンネルも存
在し、プラットフォームとしての価値を高めつつある。

──テレビプロデューサーとして、ニコ動にはどんな印象をお持ちでした?

吉田正樹(以下、) 一言でいうと大嫌いでしたね。テレビの映像ばかり投稿されていて、人の財産を平気で侵害していましたから。しかし、2009年頃から、鳩山政権の記者会見を生放送で流すなど、ジャーナリズムの要素が多くなるにつれ、受ける印象も変わってきました。運営側が、インターネットやメディアの本質は生放送にあるということに気がついたのでしょう。最初は子どもの遊びのような発想で始まっていたものが、オリジナルのコンテンツを作り、有料会員制度を導入するなど、ビジネスとしてのプランニングがしっかりしてきたので、今はとてもポジティブに見ています。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【14】

社会学者・土井隆義氏に聞く──「ニコ動ユーザー暴走の裏にある "素人優位社会"の危険性」

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 当特集【13】の事件簿にも見られるように、ニコ動ではユーザーが生放送の配信中に問題行動を起こすケースが散見される。こうした逸脱行動が起こる理由を、若者の心性に詳しい『友だち地獄』の著者・土井隆義氏に聞いた。

誕生日に生放送をして、視聴者からのお祝いコメントに涙する配信者。
心温まる光景に見えるか、うすら寒いものを感じるかは視聴者によってわかれるところだろう。

──ニコ動では、ユーザー生放送の配信中に飲酒をする未成年や、脱ぐことによって注目を集めようとする女の子たちが問題視されています。こうした背景には、どのような心理が働いているのでしょう?

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【13】

吉牛騒動から全裸生放送まで!! 誰もが画面に釘付けになった「ウワサのニコ動事件簿」

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 ニコ動では数多くの事件が起き、時には外部をも巻き込んでの騒動となる。その中から印象的な事件をピックアップしてみたい。

 ニコ動の初期において、事件となったのが「吉野家テラ豚丼」だ。2007年11月、吉野屋のアルバイトとおぼしき店員が店の厨房で、桁外れの大盛り豚丼を作る様子をニコ動にアップした。これが話題となり吉野屋に問い合わせが殺到したことから、吉野屋が従業員を処分し、謝罪する事態にまでに至った。

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ニコニコ動画研究──その死角と展望【12】

重要メディアに変貌したニコ動の"スネの傷"──著作権問題はクリアしつつもドワンゴ内部がヤバい!?

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「ニコニコ大会議FINAL」において、ニコニ
コ動画の今後の方向性について苦言を呈
したひろゆきこと西村博之氏。株式会社ニ
ワンゴの取締役でもある。

──プレミアム会員の増加で黒字化を達成し、超巨大コンテンツ企業へと変貌を遂げたニコ動の運営者たる株式会社ドワンゴ。では、足下に問題点はないのか? そして、ニコ動は今後、どこへ向かうのか?

 動画共有サイトには、常に著作権にまつわるリスクがつきまとってきた。米グーグルが運営する動画共有サイトの代表格YouTubeも、米メディアグループViacomとの長期にわたる訴訟を抱えてきた。だが、違法動画の自動検出や迅速な削除対応などが功を奏し、YouTubeとコンテンツ企業との関係は改善、現在では、多くのレコード会社やテレビ局が公式チャンネルを開設するに至っている。

 一方のニコ動も、ほかのコンテンツ企業に対して同様の対応を取ってきた。テレビ番組や音楽PVなどの違法コンテンツに関する権利者からのクレームに対する、ニコ動の対応は迅速で、動画が削除された際に代わりに流れる音声アナウンス【音程が外れたリコーダーのジングルと、微妙に下手な女性によるメッセージ】を聞いたことのあるユーザーも多いだろう。こうしたこまめな対応、そして運営元のドワンゴが着メロ事業で音楽・芸能方面と良好な関係を築いてきたことも功を奏して、今ではニコ動上にアーティストやアニメ会社による多数の公式チャンネルが開設されるまでに至っている。

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