芦田愛菜と松山ケンイチの生々しい関係が見えてくる!? 『うさぎドロップ』
関連タグ : 201109 | うさぎドロップ | トランスフォーマー ダークサイド・ムーン | 映画 | 月刊カルチャー時評 | 神様のカルテ
──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!
2011年9月号 MOVIEクロスレビュー
■大娯楽SF3部作、堂々の完結編!
(C) 2011 PARAMOUNT PIC
TURES ALL RIGHTS RESE
RVED.
『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』
監督/マイケル・ベイ
脚本/アーレン・クルーガー
出演/シャイア・ラブーフ、ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ、ジョシュ・デュアメルほか
配給/パラマウント 公開/7月29日
80年代に流行した玩具&アニメを、『アルマゲドン』のマイケル・ベイ監督が実写化した3部作の完結編。本作では、変形する金属生命体・トランスフォーマーの謎と正体、その裏に潜むアメリカ政府の陰謀を描く。
【映画文筆業・那須評】
★★★★★★★☆☆☆
「何を映すか」よりも「どう映すか」
観たことのないものを観るという映画体験に、何を映すかよりもどう映すかで迫る。その3Dは飛び出すとか奥行きといったレベルを脱し、いかにトランスフォーマーをカッコよく見せるかを追求。結果、映像はそれを需要する肉体を越え、肉眼での理解力・動体視力の限界に近い。ただ、ビジョンの進化は人知の及ばぬロボット同士の戦いに発展する作中のスケールとともに客席との距離感を麻痺させる。スクリーンをあんなに遠く感じたこともない。
『ゲド』の悲劇は回避された!? 宮﨑吾朗監督が本家と成し遂げた「なんちゃって」ではないジブリらしさ
関連タグ : 201109 | コクリコ坂から | 宇野常寛 | 月刊カルチャー時評 | 氷川竜介 | 石岡良治
「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?
本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!
【今月の一本】
『コクリコ坂から』
氷川竜介[アニメ評論家]×石岡良治[表象文化論研究者]×宇野常寛[批評家]
──言わずと知れたアニメ監督・宮﨑駿の息子である吾朗氏の初監督作『ゲド戦記』(06年)は散々な評価を受けたが、今夏のジブリの最新映画『コクリコ坂から』では、再び吾朗氏が監督を務めた。この映画、意外や意外、新生ジブリを感じさせる出来だった!?
宇野 今回取り上げるジブリ映画『コクリコ坂から』(以下『コクリコ』)は、宮﨑吾朗監督作品としては2作目で、前作の『ゲド戦記』(以下『ゲド』)と違い、宮﨑駿が脚本でしたね。まずは、それぞれの感想からうかがっていきましょう。
相武紗季と速水もこみちの健闘もむなしく、脚本が途中で息切れしてしまった『リバウンド』
関連タグ : 201108 | マンガ | リバウンド | 名前をなくした女神 | 幸せになろうよ | 月刊カルチャー時評
■香取慎吾主演月9、舞台は結婚相談所
『幸せになろうよ』
演出/澤田鎌作ほか 脚本/井上由美子、古家和尚
出演/香取慎吾、黒木メイサ、藤木直人ほか
放映/フジテレビ系にて、毎週月曜21:00〜21:54(6月27日終了)
結婚相談所のアドバイザー・高倉純平(香取)。彼の働く相談所に、美女・柳沢春菜(黒木)が訪れる。彼女と前後してイケメン弁護士・八代英彦(藤木)も入会するが、2人はそれぞれに秘密を抱えていた。香取の月9主演は、『薔薇のない花屋』以来3年ぶり。
【批評家・宇野評】
★★★☆☆☆☆☆☆☆
安直な設定が台無しに
「婚活」時代だから結婚相談所の物語にしよう、なんて浅知恵がすべて。婚活という生々しいネタを選んだのに、甘々の展開と人物造型のおかげでまったく生きてない。特に登場人物の行動する動機も全部安直で説得力がない。「他人の幸せ優先で自分の気持ちに気づけない主人公」なんてキャラクター設定は、香取慎吾の接待でしかないし、芸能事務所しか喜ばないだろう。言葉の最悪な意味で「テレビドラマ的」な上滑りだけが存在する。
性欲への異常なこだわりが出色! 『鈴木先生』の気持ち悪さは、最高に気持ち良い!!
関連タグ : 201108 | JIN-仁- | マルモのおきて | マンガ | 月刊カルチャー時評 | 鈴木先生
■視聴率20%超えの人気作完結編
『JIN-仁-』
原作/村上もとか
演出/平川雄一朗ほか
脚本/森下佳子
出演/大沢たかお、綾瀬はるか、中谷美紀ほか
放映/TBS系にて、毎週日曜日21:00〜21:54(6月26日終了)
江戸末期にタイムスリップした南方仁(大沢)は、坂本龍馬をはじめとする幕末の動乱期の主要人物たちに出会い、歴史を改変してしまうことに苦悩しながらも、近代医療を駆使して江戸の人々を救ってゆく。09年に放映され、視聴率20%超えを記録した人気作の完結編。
【批評家・宇野評】
★★★★★★☆☆☆☆
勝負作の名に恥じない作り込み
TBSの勝負作の名に恥じない作りこみで安定感があった。しかし成功のポイントはむしろ、歴史薀蓄と原作マンガの二次創作としてのアナザーエンドの提示の二点に注力したことにあったように思える。つまりウィキペディアを引きながらのダラ観とツイッター実況に相応に対応しつつ、大作としての質感を維持できていた。これは地味ながらも難しい綱渡りだったはずで、相応に評価されていいはず。しかし、たかおが21世紀にこんな「復活」を遂げるとは。
ケータイ小説的モノローグとチープな敵役で残念な出来 『悪魔とラブソング』
関連タグ : 201108 | マンガ | 僕と彼女と先輩の話 | 悪魔とラブソング | 月刊カルチャー時評 | 町でうわさの天狗の子
■天狗と高校青春ライフが同居する少女マンガ
『町でうわさの天狗の子』(8巻)
作/岩本ナオ
掲載/「月刊flowers」(小学館)
価格/420円 発行/6月10日
天狗信仰の残る緑峰町で、天狗の神様と人間の母親の間に生まれた秋姫。母のもとで育ってはいたが、週に一度はお山の父親のところに遊びに行く生活。高校入学後、新たにできた友人や同級生のタケル君、そして同じ学校に通うようになった幼馴染の天狗見習い・瞬と青春ライフを送りながら、だんだんと天狗の修業を始めるようになる。
【ライター・高野評】
★★★★★★★★★☆
"少しだけファンタジー"にできること
現実を少し超えたくらいのファンタジーが好きだ。少年少女の愉快な日々、それぞれの関係性に漂う恋や友情と断定できない情感、そして幸福なモラトリアムのあとで「何ものかになる」ことへの畏怖──17歳の夏の終わりがこういうものであったことを、空気の匂いまで思い出すだろう。シンプルな画と丁寧なネームは感情を押しつけることをしないが、決して「脱力系」ではなく、あの頃から変わらず私たちの中にある「切実さ」を刺激してやまない。
まるでアメコミ版『ビバリーヒルズ高校白書』!? 『X-MEN ファースト・ジェネレーション』のナイーブさとは?
関連タグ : 201108 | SUPER8 | X-MEN | あぜ道のダンディ | 映画 | 月刊カルチャー時評
──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!
2011年8月号 MOVIEクロスレビュー
■エイブラムス+スピルバーグで未知との遭遇!
(C) 2011 PARAMOUNT PIC
TURES ALL RIGHTS RESE
RVED.
『SUPER8』
監督・脚本/J.J.エイブラムス
製作/スティーヴン・スピルバーグ、J.J.エイブラムスほか
出演/カイル・チャンドラー、エル・ファニングほか
配給/パラマウント映画 公開/6月24日
1979年オハイオ州。地元の少年少女6人が、スーパー8ミリカメラで自主制作映画を撮っていた。ある夜、撮影中の彼らの目前で、軍の列車が車と衝突、脱線。カメラはそこに出現した何かを映す。『LOST』のJ.J.エイブラムスと、スピルバーグが手を組んだ注目作
【映画文筆業・那須評】
★★★★★★★★☆☆
ジュブナイル+クラッシャーが乙!
ロメロに影響されてゾンビ映画を撮らんとする少年たち(監督役は主人公ではない)と、彼らにつき合うヒロインの距離感が絶妙。アリスにメイクを施すジョーのぎこちない手つきに身悶える。甘酸っぱいジュブナイル臭と、J.J.ならではのミもフタもないクラッシャーの組み合わせが乙。富士フィルム製8ミリフィルム「シングル8」をモチーフにした村上賢司監督の『フジカシングルデート』と、平野勝之監督の今秋公開作『監督失格』とともに観たい。
4年ぶり10作目最新刊刊行記念!? なぜ『ハルヒ』シリーズはゼロ年代に人気を勝ち取れたのか
関連タグ : 201108 | 宇野常寛 | 月刊カルチャー時評 | 涼宮ハルヒ | 濱野智史 | 黒瀬陽平
「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?
本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!
今月の一本
『涼宮ハルヒの驚愕』
濱野智史[情報環境研究者]×黒瀬陽平[美術家]×宇野常寛[批評家]
──03年から続く人気ライトノベル『涼宮ハルヒ』シリーズの10作目が刊行された。度重なるメディアミックスによって知名度を上げ続け、ゼロ年代のオタク系コンテンツの中では最も一般的な人気を得たシリーズだが、4年ぶりの新刊をどう読むか? そもそも、『ハルヒ』とはどう受け止められるべき作品群だったのか?
宇野 『涼宮ハルヒの驚愕』(以下、『驚愕』)を今回は取り上げるわけですが、ここではライトノベルブームの象徴としての『ハルヒ』シリーズとそれにまつわる現象というところを中心に語っていきたいと思います。詳細な読解や分析もできる作品だし、作家・谷川流について論じることも大事なんだけれど、やはり「サイゾー」という一般誌の誌面であることを強く意識した視点にしたい。
その上で、最初に僕が述べたいのは、「ハルヒ」の物語性が結果的に現代のオタクの自画像を描いてしまったんじゃないかということですね。
コマの間から匂い立つ感情 『青い花』が描く、性欲込みの女性同士の恋愛とは?
関連タグ : 201107 | ちょっと江戸まで | マンガ | 夢色パティシエール | 月刊カルチャー時評 | 青い花
■百合と女子高と江ノ電と
『青い花』(6巻)
作/志村貴子
掲載/「エロティクス・エフ」(太田出版)
価格/1000円 発行/5月12日
舞台は神奈川県・江ノ電沿線地域。交際していた従姉妹の結婚に傷心のまま、高校に入学したふみと、別の女子高に通うあきら。10年ぶりに再会した幼なじみの2人を中心に、女子高に通う生徒たちの、同性間をも含めた恋愛と友情の機微を描く。前クールのアニメ作品『放浪息子』も注目された志村貴子による、04年から続く長期連載。
【ライター・横井評】
★★★★★★☆☆☆☆
メインキャラたちの情けなさに苛立つ
読了してからずっと「なぜときめかないのか」考えている。BL的作品に顕著な人物の関係性の機微が好き、という理由であれば、本作はまさにそれがテーマだ。コマの間から匂い立つような感情表現は一級品。とすれば、その感情の問題かもしれない。「おそろいだね」や「どうしたら嫌われずに済む?」が象徴する女性同士のウェットなセリフに、たまらない違和を感じてしまう。私がときめくのは恋でなく、自立が前提にあってこその連帯なのだと、あらためて気づかされた。
"やり過ぎ"なのが魅力! 西尾維新の『めだかボックス』はアンチ「少年ジャンプ」だ!!
関連タグ : 201107 | めだかボックス | マンガ | 月刊カルチャー時評 | 未来日記 | 鈴木先生
──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!
2011年7月号 COMICクロスレビュー
■現在ドラマも放映中の奇妙な学校マンガ
『鈴木先生』(11巻)
作/武富健治
掲載/「漫画アクション」(双葉社)
価格/860円 発行/4月28日
メガネとループタイがトレードマークの中学教師・鈴木先生が、恋愛や性、友情や部活動などをめぐって彼の教え子たちが出遭う/起こす事件を、誠実に、しかし過剰で独善的ですらある情熱で解決しようとする姿を描き続けた異色の学校マンガ。本巻で完結した。4月25日より、テレビ東京にてドラマ放映中。
【脚本/演出家・麻草評】
★★★★★★★★☆☆
イッキ読み注意!なコマ割と描線
脳細胞の量は14歳程度で成長が止まるらしいが、中身は変化し続ける。熱くてクールな鈴木システムは、インストールされたあと更新するプログラムだ。喫煙所の廃止に端を発する「居所の諸問題」から煮詰まったスクールキラーの事件へ、生徒たちは自らの居所を見定め、その役を演じ対処した。演劇編の初めに描かれた、舞台での居所を決める運動を思い出す。五段組のコマ割に詰め込まれた描線も演技の集中状態を疑似体験させてくれる。
三浦春馬は秀逸ながら......ポップさに欠けた薄味で単調な『東京公園』
関連タグ : 201107 | 奇跡 | 映画 | 月刊カルチャー時評 | 東京公園 | 軽蔑
2011年7月号 MOVIEクロスレビュー
■なぜ今!? 中上健次作品、久々の実写化
(C)2011「軽蔑」製作委員会
『軽蔑』
監督/廣木隆一
原作/中上健次
出演/高良健吾、鈴木杏、大森南朋ほか
配給/角川映画
公開/6月4日
自堕落な生活を送るカズ(高良)は、踊り子の真知子(鈴木)と出会い、惹かれ合う。2人はカズの故郷で暮らし始めるが、生活は容易ではなく、真知子は東京に戻ってしまう。彼はやがて、借金を重ねて賭博に明け暮れるようになる。中上健次最後の長編を映像化。鈴木杏初の濡れ場があることが、公開前から話題に。
【映画文筆業・那須評】
★★★★★★☆☆☆☆
すべてにおいて"つなぎ方"が弱い
91年に発表された原作は、真知子とカズの関係を通して自由と束縛のジレンマから立ち上がるドラマを書いているが、映画ではストーリー上の見せ場と見せ場をつなぐ間が弱い印象があり、いかんともしがたく2人を結びつける原動力が見えにくい。愛されキャラ設定のカズの魅力も、客観的には高良のビジュアルに頼る部分が大きい。だが、シーンごとの濃密なテンションを持続させるのではなく瞬発力で見せていく編集は、現代的とも言えるかもしれない。