映画でわかるアメリカがわかる
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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第13回

アメリカを愛しすぎた伝説の"愚か者"

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【今月の映画】

『ゴンゾ/ハンター・S・トンプソンの生涯と作品』
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05年、コロラド州の自宅で頭に銃をぶっ放し、自ら命を絶ったノンフィクション作家のハンター・S・トンプソン。アメリカ国民を驚愕させ、魅了し続けたひとりのカリスマの人生を、残された作品と共にたどったドキュメンタリー。生前からトンプソンと親交があり、彼の葬儀費用を全額負担したジョニー・デップが、本作でもナレーションを担当している。
監督/アレックス・ギブニー アメリカでは7月公開、日本では公開未定

 ハゲ頭にレイバンのサングラス、シガレットホルダーをくわえ、大量の酒とドラッグをキメ、執筆に行き詰まるとタイプライターをショットガンで吹き飛ばす。

 ハンター・S・トンプソンは、1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ』でジョニー・デップが頭の毛を剃って怪演したことで有名だ。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第12回

史上最悪の借金地獄で大国がマジで大ピンチ!

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【今月の映画】

『I.O.U.S.A.』
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財政赤字、貿易赤字、貯蓄不足、指導者不足で、いまやアメリカは政府も国民も、史上最悪の借金まみれ! 一般の納税者をはじめ、政府の役人、投資家らが、アメリカの金融危機を呼びかける衝撃のドキュメンタリー。1月に開催された08年サンダンス映画祭でも話題に。プロデューサー/クリスティーン・オマリ ディレクター/パトリック・クリードン 出演/デヴィッド・ウォーカー、ウォーレン・バフェットほか
アメリカでは8月公開、日本では公開未定

 I・O・U・S・A・? いおうさ? じゃないよ!

 I・O・U・は「I owe you(君に借りがある)」という意味で、IOUと書くと「借用書」のこと。この映画は、今のアメリカが抱えた莫大な負債についてのドキュメンタリーで、元GAOのデヴィッド・ウォーカーのレクチャーに基づいている。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第11回

瀕死のハリウッドからバカ映画が消える日

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【今月の映画】

『WALL・E/ウォーリー』
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人類がゴミだらけの地球を捨て、巨大移民船で外宇宙に旅立ってから700年後の29世紀。ひとりぼっちのゴミ処理ロボット・ウォーリー(♂)は、ある日、ピカピカの最新型ロボット・イヴ(♀)と出会う。ここで彼女を逃したら、一生恋はできないと、ウォーリーはロケットにしがみついて宇宙を飛び、そこで変わり果てた人類と直面する......。
監督・脚本/アンドリュー・スタントン 声の出演/ベン・バート、シガニー・ウィーバー、ジェフ・ガーリンほか 配給/ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
アメリカでは6月公開、日本では12月より日比谷スカラ座他全国ロードショー

 ピクサーの新作アニメ『WALL・E/ウォーリー』が、今年のアカデミー作品賞候補と言われている。最優秀アニメではなくて「作品賞」だ。巨大産業による環境破壊、消費文明による人間の退化などリアルな問題を告発した傑作とはいえ、アニメが作品賞候補と噂されるのは異常な事態だ(アカデミー会員の6割は俳優だ)。しかし、しょうがない。賞に値する映画がほかにないのだから。

 アメリカ映画はここ数年、アメコミやアニメ、テレビ番組、過去のヒット作や外国映画のリメイクばかりになり、オリジナリティとクオリティは史上最低レベルに落ち込んでいる。今年も半分以上過ぎているのに、価値のあるテーマを持つ品質の高い映画は『ウォーリー』だけだ。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第10回

人は30日間ハッパを吸い続けたらどうなる!?

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【今月の映画】

『スーパーハイ・ミー(Super High Me)』
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医療目的でのマリファナの使用が合法化されている、カリフォルニア州。そこに住むコメディアン、ダグ・ベンソンが、30日間マリファナをスッパスッパ吸い続け、マリファナが人体に本当に悪影響を及ぼすのかを体を張って調査した、おバカドキュメンタリー。
監督/マイケル・ブリーデン 出演/ダグ・ベンソンほか

アメリカでは4月にDVDが発売。日本での劇場公開&DVD発売は未定。

「あのさ、『スーパーサイズ・ミー』って映画覚えてる? 30日間マクドナルドで朝昼晩食べ続けるってドキュメンタリー」

 スタンダップ(漫談)コメディアンのダグ・ベンソンは、ステージから客に問いかけた。「オレ、同じようなドキュメンタリーをハッパでやろうと思うんだ。30日間マリファナを吸って、ハイになり続けるのを記録するのさ。題して『スーパーハイ・ミー』!」

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第9回

アイアンマンは本当に正義のヒーローなのか?

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【今月の映画】

『アイアンマン』
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日本では認知度はイマイチだが、全米で大人気のアメコミ作品の映画化。巨大軍事企業の社長スターク(ロバート・ダウニーJr.)が、自ら開発した究極のパワードスーツを装着して巨悪と闘う。全米、全世界ともに興行収入2週連続1位を記録し、このメガヒットを受け、早くも続編の公開が2010年に予定されている。
監督/ジョン・ファブロー 出演/ロバート・ダウニーJr.、グウィネス・パルトロウほか
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 日本では、9月27日より日劇3ほか全国ロードショー

 トニー・スタークは幼い頃から発明の天才で、父の後を継いで兵器産業の経営者になってからは、アメリカ軍のために日夜、最新兵器を開発している。

「スタークさん、あなたは現代のレオナルド・ダ・ヴィンチとの評判ですが」と、女性記者がマイクを向ける。「『死の商人』とも呼ばれていることについて、どう思いますか?」

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第8回

ハリウッドが認めたアジア系ヒーローって?

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【今月の映画】

『ハロルド&クマー/グアンタナモからの脱出』
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クソ真面目な韓国系アメリカ人・ハロルドと、超だらしないインド系アメリカ人・クマー、まったく正反対の性格の親友2人が、ひょんなことからテロリストに間違われ、グアンタナモ収容所に送られてしまい──。アジア系が主役とあって、人種的ステレオタイプをネタにした痛快なギャグも満載!
監督・脚本/ジョン・ハーウィッツ、ヘイデン・シュロスバーグ 出演/ジョン・チョー、カル・ペンほか 日本での公開は未定

『ラスベガスをぶっつぶせ』という映画が、アジア系アメリカ人たちから激しく批判されている。

 これは、90年代にマサチューセッツ工科大学の学生たちが、確率論によるブラックジャック必勝法の実践として全米各地のカジノに挑戦し、合計5億円も荒稼ぎした実話を基にしている。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第7回

現実の愛はかくももろく恐ろしきかな

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【今月の映画】

『バーチ通り51番地(51 Birch Street)』(写真左)
『クレイジー・ラブ』(写真右)

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左/母が急逝したわずか3カ月後、83歳の父マイクは、元同僚のキティとスピード再婚。戸惑いを隠せない息子ダグは、ある日、母の本音が綴られた日記を見つけて......。監督/ダグ・ブロック
右/弁護士プガッチは美しい受付係リンダに恋をし、いつしか2人は愛し合うようになる。しかし、実はプガッチが既婚者で、離婚するつもりのないことを知ったリンダは、ほかの男との結婚を決意。それを知ったプガッチは、嫉妬に狂って......。監督/ダン・クローズ
ともに日本公開未定。アメリカではDVD発売

 ドキュメンタリー映画の題材は、社会問題や歴史、犯罪、有名人の伝記などが多いが、男女の愛についてのドキュメンタリーは珍しい。劇映画は愛を好んで描く。ロマンスとして、夢として、娯楽として。しかし、愛についてのノンフィクションは、今回紹介する2本の映画のように、時に愛というものの恐ろしさを暴いてしまう。

 映画『バーチ通り51番地(51 BirchStreet)』のタイトルは、監督のダグ・ブロックが生まれ育ったニューヨーク州ロングアイランドの家の住所から来ている。ブロックは「映画監督」ではなく、雇われて結婚式をビデオに撮るのが仕事だった。『バーチ通り51番地』は、ブロックの生家で両親が金婚式を祝うのを記録したホームビデオで始まる。その時点では、彼は映画を作るつもりはなかった。ビデオ屋であるブロックは、メモ代わりにカメラを回す癖があった。それがこのドキュメンタリーになったのだ。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第6回

大絶賛『ジュノ』はチト過大評価されすぎ

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【今月の映画】

『JUNO/ジュノ』
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女子高生ジュノ(エレン・ペイジ)は、クラスメイトの男子ポーリーと関係を持ったことで、予想外の妊娠。生まれてくる赤ちゃんのために、完璧な両親を探そうとするが......。本年度のアカデミー賞では主要4部門にノミネートされ、最優秀脚本賞を受賞。アメリカでは昨年12月に公開し、すでに興行収入1億ドルを突破した大ヒット作。
監督/ジェイソン・ライトマン 脚本/ディアブロ・コディ 出演/エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナーほか 配給/20世紀フォックス映画
日本では、6月、シャンテシネほか全国ロードショー

 今年のアカデミー賞授賞式で、最優秀オリジナル脚本賞を受け取ったディアブロ・コディ(29歳)は、原始人の毛皮みたいな豹柄のガウンをひらめかせてステージに上がった。真っ黒なボブにGOTHメイク、オスカーを握った腕には手足をロープで縛られたビキニの美女のタトゥーが。セレブの祭典に間違って紛れ込んだ、場末のストリッパーにしか見えないが、実際、彼女はつい3年ほど前までミネソタのストリップ・バーで踊っていたのだ。

 コディはストリッパーの日常をブログに書き、それが出版エージェントの目に留まり、彼の勧めで書いたシナリオ処女作『JUNO/ジュノ』で、いきなりアカデミー賞に輝いた。またひとつのアメリカン・ドリームの誕生だ。

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第5回

友をひたすら信じたアフガン少年の誓い

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【今月の映画】

『君のためなら千回でも』
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舞台は、まだ平和だった70年代のアフガニスタン。2人の少年、アミールとハッサンは、主従関係を超えた強い絆で結ばれていた。しかし、ある"過ち"をきっかけに、2人の友情は引き裂かれていく......。カーレド・ホッセイニの処女作にして、世界的ベストセラーを、名匠マーク・フォースターが映像化した感動作。

監督/マーク・フォースター 原作/カーレド・ホッセイニ 出演/ハリド・アブダラ、ホマユーン・エルシャディ、ショーン・トーブほか 配給/角川映画、角川エンタテインメント 日本では、2月9日より恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショー

 映画『君のためなら千回でも』は、サンフランシスコの街並みを対岸に臨む、バークレーの湾岸公園から始まる。筆者の家の近所だ。そこは凧揚げの名所で、週末には日本や中国、タイやインドネシアなど世界各国からの移民たちがそれぞれの伝統的な凧を揚げている。アフガニスタンの凧もある。ここベイエリアには、リトル・カブールと呼ばれるアフガン・タウンがある。アフガンからは、1979年のソ連軍侵攻から現在まで十数万人がアメリカに逃れ、ベイエリアだけで6万人が暮らしている。『君のためなら〜』の原作者カーレド・ホッセイニも、その1人だ。

「幼い頃、カブールでペルシャ語吹き替えのスティーブ・マックイーンの映画を観ていた時は、自分がアメリカに住むなんて夢にも思わなかった。ましてや自分の小説が、ハリウッドで映画化されるなんて」

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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第4回

ソ連を崩壊させたエロ議員と有閑マダム

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【今月の映画】

『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』
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下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、女とウィスキーを愛する平和主義者。しかし、大金持ちの未亡人ジョアンヌ(ジュリア・ロバーツ)、謎めいたCIAスパイのガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)との出会いを通じて、アフガニスタン支援のために前代未聞の一大プランをぶちあげる......! アカデミースター3人が豪華共演。
監督/マイク・ニコルズ 出演/トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマンほか 配給/東宝東和 日本では、5月より日劇1ほかにてロードショー

 トム・ハンクスが自分の主演作として、ノンフィクション『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』の映画化権を買った時、世間は驚いた。チャーリー・ウィルソンは民主党の元下院議員で、トム・ハンクスも民主党の大物サポーター、2人とも黒人や中絶の権利を支持し、銃の規制に賛成するリベラルだが、それ以外はまるで似ていないからだ。

 1980年代、グッドタイム(ごきげん)・チャーリーは、そのあだ名の通り、連夜プレイメイトをはべらせてパーティでバカ騒ぎを繰り返していた。「チャーリーズ・エンジェル」と呼ばれる巨乳美女の秘書たちを引き連れ、「デカパイの秘書は、タイプが打てる秘書より探すのが難しいよ」と自慢した。ウィルソンは、セックスだけでなく、酒とコカインにも溺れていた。そんなただれた政治家を、なぜ『フォレスト・ガンプ』の善人俳優が演じるのか?

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“超”現代哲学講座
哲学者・萱野稔人の
“超”現代哲学講座
『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』

宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』


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