マル激 TALK ON DEMAND
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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第43回

民主党が知り得なかった 普天間移設問題の深淵【後編】

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2桁台の伸び率を維持する中国の軍事力とその抑制

神保 稲嶺氏・仲井眞氏はもともと沖縄の財界人ですから、経済界を代弁して発言しているところもありそうですね。それにしても、沖縄の交渉術はすごい。

守屋 議論すべき時を心得ているんです。役人は2年たつと異動するし、政治家もアメリカのように4年間も同じ部署にはいない。日本の行政組織は、継続性に乏しいのです。それゆえに、基本合意書・基本確認書の内容を明らかにすることなく、「沖縄の要望を満たしていない」とか、「ひどい案だ」と言われれば、中央の政財界・マスコミは、それに対する対応力がありません。

神保 この問題の複雑さも知らないまま、民主党は政権獲得を前に「県外移設」という実現困難な公約を打ち上げてしまった。しかし、いざ政権の座に就いてみると、軍事上・安全保障上、沖縄以外に移設の選択肢を見つけることができなかったと。今回、一応は結論を出したものの、沖縄基地問題は今後ももめそうです。政府としては、まずどんなことを考えるべきなのでしょうか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第43回

民主党が知り得なかった 普天間移設問題の深淵【中編】

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ほとんど語られない米兵と地元住民のつながり

神保 "沖縄側"といっても知事が提示したわけではなく、主体は「沖縄県防衛協会北部支部」とあります。土建業者が中心の民間の団体であり、アメリカ側に直接提案したというのは驚きです。何かパイプがあるんですか?

守屋 かつて日本は米軍に占領されていました。多くの日本人は忘れていますが、米軍基地は、戦争に負け、衣食住に困っていた日本にとって魅力的な場所でした。チョコレートも肉も食べられる。基地内の売店は免税なので日用品が非常に安い。一部の日本人は、米兵と友人になって、基地を利用していました。米軍基地の多い沖縄では、今でもその付き合いがある。沖縄の人がアメリカ人を嫌っていると考えたら、それは間違いです。本土の人よりもアメリカ人が好きだという人は少なからずいます。日本が高度経済成長を遂げ、物価が高くなると、米兵は基地の外での生活が厳しくなる。そんな時には、沖縄の人たちは米兵を招いてホームパーティを開き、友好をつないで来たのです。沖縄の人は、米軍人・家族とのコミュニケーションを大事にしているのです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第43回

民主党が知り得なかった 普天間移設問題の深淵【前編】

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──「最低でも県外」と鳩山由紀夫首相(当時)が公言してきた米海兵隊の普天間飛行場の移設先は、結局、辺野古に落ち着いた。この決定に強い反対の意思を見せた社民党・福島瑞穂消費担当相は罷免され、その後、鳩山首相は辞任し、菅直人が新総理に。7月に行われる参院選を前に、民主党政権は大きな転換期を迎えることとなった。だが、鳩山首相を辞任に追い込んだ普天間移設問題とは一体なんだったのか? 大手メディアが報じることのできない"深淵"に、収賄罪などの罪に問われ、逮捕・起訴された(現在、最高裁に上告準備中)元防衛事務次官の守屋武昌氏が重い口を開く
──。

【今月のゲスト】
守屋武昌[元防衛事務次官]

神保 今回は"また"沖縄普天間移設・辺野古問題がテーマですが、これまでとは違ったレベルの議論になるでしょう。普天間移設交渉の経緯をすべて知る元防衛事務次官・守屋武昌さんをゲストに迎え、普天間問題の深淵に迫りたいと思います。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第42回

職業政治家らが死守する既得権と地域主導化の光明【後編】

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"職業議員"らが潰す地域活性化の芽とは?

神保 なるほど。では、河村さんが地域委員会にこだわる理由についても聞かせてください。

河村 国政を見ていると、地域主権も道州制も、言ってみれば「間仕切りを変えよう」という主張ばかり。「自分たちの街は自分たちでつくる」という構造になっていないことに深い疑問を抱いていましたが、国会にはこの議論がまったくありません。それどころか、政権交代に向けた団体戦だけでよしとしている。日本の社会を本当によくするためには、根底のところで、市民の自由や自立をつくらなければいけない。私はそれを見届けてあの世に行こうと決めて、国会議員を辞めたんです。

宮台 つまり「"任せる政治"から"引き受ける政治"への転換」ですね。今までの国政は"誰に任せるか"というところで「間仕切り変え」を主張していただけで、国民は"自分が引き受ける"と言わなかった。"自分で引き受ける"とは、地域の政治に身を投じることです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第42回

職業政治家らが死守する既得権と地域主導化の光明【中編】

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日本初の減税措置と地方議員の既得権益

神保 それでは、議員定数の削減についてはいかがでしょうか。議員を少なくすると、各議員の負担が増えるという声もありますが、非営利の政策シンクタンク「構想日本」がまとめたデータによれば、ロサンゼルスは人口380万人に対し議員が15人。ロンドンは人口750万人に対し25人。名古屋市は、220万人に対し75人。こうして比較してみると、確かに日本は地方議員の数が多いですね。

河村 日本の地方自治はアメリカを模倣してつくられましたが、アメリカとは相違点があります。根本的に違うのは、アメリカの議会は、基本的に「ノンパーティザン(Non Partisan)」で、つまり無所属の個人がそれぞれに意思決定をするというルールがあるが、日本は政党中心の考え方で、個人の意思が見えてこない。

 たとえば、「議員の定数と報酬を半減する」とした条例案が否決された際も、73対1で否決され、賛成の一票は私の元秘書でした。調査費だけは使って議案も提出せず、いつでもまとまってアクションを起こし、主義主張に多様性がないのであれば、そもそも議員の数など1人か2人で十分です。

 百歩譲って議員数を減らすのが難しいというなら、フランスのパリのようにすべきでしょう。パリの人口は名古屋市とほぼ同程度で、議員は約2倍いますが、年間報酬は1人当たり日本円で600万円程度。これなら多くの議員がいても、報酬が安いため、入れ替わりも早くなります。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第42回

職業政治家らが死守する既得権と地域主導化の光明【前編】

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──国会議員時代には、民主党代表選において、推薦人を確保できず立候補断念を繰り返したかと思えば、昨年4月には歴代最多得票で当選し、名古屋市長に就任するなど、なにかと政界の注目を集める河村たかし氏。そんな同氏が現在、同市議会と対立している。市議会定数と議員報酬の半減、市民税の減税、市の権限を地域住民に委譲する地域委員会の設立などを提案しているためだ。既得権益にまみれた"職業議員"たちに政治は変えられないと主張する河村氏に地方分権と地方政治の可能性について話を聞いた──。

【今月のゲスト】
河村たかし[名古屋市長]

神保 今回は名古屋市役所にお邪魔して、昨年国会議員から名古屋市長に転身して以来数々の騒動を(笑)引き起こしている河村たかしさんにお話を伺います。


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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第41回

刑事裁判の不完全性と社会の敵が持つ浄化作用【後編】

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検察は、刑事事件の真相を解明することができるのか?

宮台 おもしろいですね。安部さんのケースでは、社会学でいう「帰属処理」が行われています。つまり、人々が事件の不透明さに悩んでいる場合、「こいつが原因なんだ」と示すことで因果性をそこに帰属させて不透明感から解放されます。これは、社会心理学者が注目してきた「帰属処理」機能です。

 武井さんのケースでは、消費者金融について多くの人がさまざまなネガティブな思いを持っている場合、その象徴である人物を叩くことで、カタルシスが得られます。これは、法社会学者が従来から強調してきた「感情的回復」機能です。

 加えて、社会学者や人類学者が注目するのは、「帰属処理」にせよ「感情的回復」にせよ、「我々」が皆でそこに因果性を帰属するとか、皆で感情的回復を果たすということで、社会的意思の共有を再確認できるということです。それによって社会的連帯、すなわち「我々」という意識を再確認している面があります。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第41回

刑事裁判の不完全性と社会の敵が持つ浄化作用【中編】

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国民のカタルシスとして作用する社会の敵のつくり方

神保 しかし、そのようなイメージのレベルで、事件にかかわる報道がガラっと変わるというのも困ったものですね。さて、検面調書の内容と、法廷での証言の食い違いについて、弘中さんはどう捉えていますか?

弘中 非常に問題視しており、法廷でも取り上げています。食い違いの理由はいくつかあり、人によって違います。例えば、「検察官が嘘をつくはずがない」という思い込みがあり、検察官から「あなたは記憶にないと言うが、事実はこうなんですよ」と言われると、「そうなんだ」とその場では納得してしまうケース。ほかには、マスコミ報道の影響を受け、「自分は忘れていても、報道が正しいのだろう」というケースもあります。もっともひどいのは、検察官への供述から法廷の証言まで一貫しているにもかかわらず、検察官が調書に書いてくれないケース。つまり、検察官に対し、事実を述べるか述べないかではなく、検察官が作った調書にサインするかしないかという選択しかない、という場合があるんです。

神保 前福島県知事・佐藤栄佐久さんに関連する汚職事件の捜査では、関係者を公職選挙法などで軒並み引っ張り、「知事に対して不利な発言をすれば、保釈してやる」という、いわゆる人質司法が問題になりました。今回は、そうした形跡は見られますか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第41回

刑事裁判の不完全性と社会の敵が持つ浄化作用【前編】

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──ロス疑惑の三浦和義、薬害エイズの安部英、さらには武富士の武井保雄やライブドアの堀江貴文ら"時代の人"から、中森明菜や叶姉妹といった"お騒がせ芸能人"まで、そうそうたるメンバーの代理人を務めてきたのが、弁護士の弘中惇一郎氏だ。"負け戦"とされる裁判でも数々の勝訴を勝ち取った彼の手腕は、メディアではつとに有名である。そんな彼が現在、弁護人を務めるのが厚労官僚の村木厚子氏だ。検察と厚労省による刑事事件の矛盾を指摘し、その判決に注目が集まっているが、今回は弘中弁護士と共に、司法の不完全さを多角的に考察する──。

【今月のゲスト】
弘中惇一郎[弁護士]


神保 今回は、これまでロス疑惑の三浦和義さん、薬害エイズ事件の安部英さんなど、著名な刑事被告人の弁護を担当された弁護士の弘中惇一郎さんをゲストに迎え、恣意的な捜査を行っているとの批判が高まっている検察、それを助長するメディアの問題などについて議論を進めていきます。


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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第40回

トヨタのリコール問題を契機に「責任」の法文化を再考する【後編】

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日米間で露呈した深い感覚のズレ

神保 一連の問題を振り返ると、昨年8月にアメリカで、フロアマットの問題が浮上しました。トヨタ自動車は当初、「純正品のフロアマットを使用していれば問題ない」「2枚重ねで使っているのが原因だ」と、非を認めませんでした。今回私たちが取材をしていても、当初トヨタからは言い訳がましい言葉が返ってくることが多くありました。これはトヨタという企業の体質の問題なのでしょうか、それとも日本企業に共通する文化的な側面を持った問題なのでしょうか。

宮台 廣瀬先生がおっしゃるように、トヨタ自動車という企業固有の問題ではなく、日本の法文化によるところが大きいでしょう。例えば、85年にドイツのリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー大統領(当時)が演説を行い、戦争被害に対する個人補償について「罪」と「責任」を明確に分けました。「ナチスの犯罪についてドイツ国家は謝罪しない。組織内のポジション、軍人だったのか市民だったのか、大人だったのか子どもだったのかによって、罪が変わる。それぞれに違う人間たちの罪を政府が代表して謝罪はできない。しかし、罪はなくとも責任は果たす。それは、人に貸した車が事故を起こした場合、自分に罪がなくても所有者として責任を果たすのと同じことだ」という理屈です。責任を果たすのはなぜかといえば、国際社会における存続可能性と共生可能性──具体的に言えば、将来の欧州統合におけるポジショニング──を考えてのことです。

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宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。
花くまゆうさくの
カストリ漫報
『おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。』

マル激 TALK ON DEMAND
神保哲生×宮台真司の
マル激 TALK ON DEMAND
『ゲストと共に“ワンテーマ”を掘下げるネット発の時事鼎談。』


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