マル激 TALK ON DEMAND
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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第47回

捕鯨問題で報じられない捜査機関の介入と不条理【中編】

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グリーンピースが示した4つの根拠による正当性

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神保 しかし先月6日、2人には有罪判決が出ました。今回、裁判所は単純な窃盗事件として扱いましたが、グリーンピース側は通常の窃盗事件ではなく、4つの根拠をもって、正当な行為だと主張してきました。その1番目が「不法領得の意思の有無」についてですが、この不法領得というのは聞き慣れない言葉ですね。

星川 窃盗の刑法上の判例や定義は、伝統的に固まっています。「不法領得」とは、そのものの「経済的な利用を想定して」盗ったか否か、ということにかかわる問題です。この鯨肉の場合、食べる、あるいは売るという目的で持ち出したのではないし、検察官側もそれを認めている。そのため窃盗には当たらないというのが、日本の刑法の伝統的な解釈のはずです。しかし、青森地裁の裁判官が下したのは、「NGOの分際で、捜査機関のような捜索・押収をしてはならない」という判決でした。今回の事件を不法領得というならば、最高裁で今までの判例をひっくり返さないといけないくらい、おかしな判決なのです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第46回

電波利権の不合理性と政治家と放送局の功罪【後編】

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巨大利権のご都合主義と公共電波が持つ役割

神保 なぜ日本の放送行政では、明らかに消費者へのメリットがない施策が繰り返されるのでしょうか?

池田 放送業者が合理的に行動した結果でしょう。経済学で「市場の締め出し」という言葉があります。電力・通信・放送などの自然独占性が強い産業は、役所を使って新規参入を妨害することで、企業努力しなくても儲かる構造ができてしまうのです。それを防ぐためには、市民が監視するしかないのですが、その助けとなるべきマスコミが隠す側に回っているのが問題です。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第46回

電波利権の不合理性と政治家と放送局の功罪【中編】

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地方TV局が持つ既得権益のうまみとは?

神保 そもそも、なぜアナログ地上波から地上波デジタルへの移行が始まったのですか?

池田 世の中のさまざまな機器がデジタル化しており、時代の必然ともいえます。僕自身、テレビ放送のデジタル化自体には、反対していない。しかし、デジタル化のコストは、もっと安くできます。例えば、ヨーロッパではほぼデジタル放送への移行が完了していますが、これは通信衛星で電波を飛ばしています。人工衛星1基で300チャンネルほどカバーできるので、これがいちばん簡単。1基の打ち上げにかかる予算は100億円程度です。しかも、通信衛星なら難視聴地域対策にも効果的。旧郵政省内でも、「100億円でできるものを、なぜ1兆円もかけて行うんだ」という議論はあったのです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第46回

電波利権の不合理性と政治家と放送局の功罪【前編】

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 業界の人々が思っているほど、すぐにテレビはダメにならないと思う── 。テレビ局が持つ既得権益とそのカラクリを浮き彫りにした『電波利権』(新潮新書)の著者・池田信夫氏は、2011年のデジタル放送移行後のテレビ業界についてこう語る。だが多メディア化と昨今のメディア不況に直面しているテレビ業界に、明るい未来は描きづらいのも事実であり、また、テレビ局が独占してきた電波は今後、再分配されることが予測される。こうした中、電波という資源はどのように使われることが効果的なのだろうか?

【今月のゲスト】
池田信夫【上武大学教授】


神保 アナログ放送の停波まで、どうやら残すところ1年。「どうやら」というのは、現段階でまだ全国に7000万台のアナログテレビが残っています。この放送を強制終了させることが本当にできるのか、あるいはそれが正しいのか、という議論があるからです。ところが、放送局は自分たちにとって都合の悪いことは言わないし、日本では新聞が放送事業にまで関与しているから、新聞もこの問題では中立的な報道は望めない。そうした中で、よくわからないうちに日本の放送行政や電波行政がひどい状況になっているということを、今回のゲストである池田信夫さんの著書『電波利権』(新潮新書)を読んで知りました。今回は、デジタル放送問題だけでなく、電波そのもののあり方についても議論を深めたいと思います。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第45回

民主党は立ち直れるのか? 目的と理念への矛盾と打算【後編】

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民主党が見るべき世論はウェブの中にいるのか?

神保 去年までは野党だったから仕方ない部分もありますが、民主党は以前から「理念主導」だといわれてきました。理念的な議論、つまりサブは得意だけど、それを実現するためのロジ、要は方法論や実際に実現するための手段が甘いと。だから、いざ政権をとってみたら、やりたいことはたくさんあるのに、それがなかなか実現しなかったという見方です。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第45回

民主党は立ち直れるのか? 目的と理念への矛盾と打算【中編】

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官僚主導から政治主導へ舵を切るための戦略とは?

宮台 7月16日の新聞で「菅首相、国家戦略局設立を断念」の記事を読み、民主党は官僚に白旗を揚げたとの印象を受けました。政治家が官僚に使われるのでなく、政治家が官僚を使う。大統領制であろうが議院内閣制であろうが、それが本質的な目的・手段の関係です。

 菅さんが国家戦略室長だった際、すでに問題があらわになっていました。政治が主導して官僚を使うとして、政治がどこに向かうのかが、菅さんの口から明瞭に語られなかった。鳩山さんは理念を発信するが、菅さんは発信しない。そのため国家戦略室がなんのために存在するのかわからなかった。初発の段階で間違いがあったと言わざるを得ません。これでは、国民からすれば、官僚が「上がりの一部をポケットに入れたとしても、良い政策を打ち出してくれる」のならば、「天下りは削っても、国益にかなわない政策を連発する」民主党の政治主導よりはマシです。

 官僚主導から政治主導へと舵を切るために国家戦略局が必要だとして、何をするために政治主導が必要なのか、総理が菅さんに代わった途端わからなくなりました。むろん鳩山総理の時は、理念はわかるけれど、どうやるのかがわからなかったわけですがね。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第45回

民主党は立ち直れるのか? 目的と理念への矛盾と打算【前編】

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──歴史的な政権交代から8カ月、民主党のトップや幹部らの失言や疑惑が噴出し、支持率は下落の一途をたどる中、民主党政権後、初の参議院選挙が行われた。結果は、新しく発足したみんなの党が健闘するなど、国民は与党へ鉄槌を下した格好となった──。党幹部らの失策もさることながら、政権交代時のマニフェストに対する「落胆」が、選挙敗北の原因と見られているが、民主党幹事長代理の細野豪志氏は「国家的なビジョンが、党全体で共有できていなかった」と認めた。では、これまでの政権運営は、どこに問題があったのだろうか?

【今月のゲスト】
細野豪志[民主党幹事長代理]


神保 今回は民主党の細野豪志幹事長代理を招き、参院選で痛い敗北を喫した民主党が、選挙結果をどう総括し、それを今後の政権運営にどう生かしていくつもりなのかを伺いたいと思います。

 それにしても今回の参院選の結果は、民意が急激に民主党から離れていることを強く印象づけたのではないかと思います。一部の有権者は、すでに民主党を見放しているかのようでさえあります。とはいえ、民主党は衆院で圧倒的過半数の議席を持っているので、分裂でもしない限り、今後3年間は政権を任せなければなりません。ぜひ本音レベルで、今後の国政に光明が見えるようなお話を聞かせてください。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第44回

日本経済が停滞する理由と助成がもたらす産業的悪影響【後編】

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国民の知る権利を守る独立メディアの必要性

神保 野口先生は産業構造の改革を訴えていますが、それに対しては「痛みが大きい」だとか、「格差が生じる」という批判もあります。

野口 改革をしなければ、後にもっとひどい痛みを味わうことになります。また「格差が生じる」というのは、まさに価値判断の問題です。つまり、格差は広がったほうがよいのか、縮まったほうがよいのか、という議論になります。格差と経済成長率には関連があり、格差をなくすような所得再配分を行えば、成長率は下がります。「どの程度の格差が最適か」という問題には、経済理論では答えられない。いずれにしても、どんな政策がどんな結果をもたらすのか、ということをデータを開いて判断することが重要です。

神保 最近よく話題に上るインフレターゲット論について、先生はどう思われますか?

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第44回

日本経済が停滞する理由と助成がもたらす産業的悪影響【中編】

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日本製造業の再起には助成をやめて経済を廃墟に

神保 さて、08年秋に経済が落ち込んで以来、日本政府はさまざまな景気対策を打ち出してきました。例えば雇用調整助成金、定額給付金、エコカー減税にエコポイントなどです。野口先生は、これらをどう評価しますか?

野口 それらの景気対策が、今の状況を支えていることは間違いありません。雇用調整助成金は失業率の顕在化を抑えていますし、エコカー減税とエコポイントは消費を驚くほど増やしています。自動車産業と電器産業は、ほぼこれによって支えられていると言っていい。しかしこれらは、あくまで一時しのぎの政策であり、日本経済の構造を変えるものではない。つまり延命策なのです。緊急措置として半年くらい行うならわかりますが、経済危機から1年半が経過しても続けられているのは、いかがなものか。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第44回

日本経済が停滞する理由と助成がもたらす産業的悪影響【前編】

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──アメリカに端を発した一連の金融危機は"底"を脱したのか、2007年から11年までの各国の経済成長は回復傾向にあるという。だが、アジア新興国が成長するのは当然のことだとしても、リーマンショックを経験したアメリカが復調を見せている中、日本が置かれている状況は明るくない。その裏には、外需依存の日本経済に問題があると早稲田大学大学院の野口悠紀雄教授は指摘する。外需が期待できない現在、エコポイントの導入など、政府の助成によって"生かされている"日本の基幹産業が復活するには、日本経済の廃墟化しかないと野口氏は語る──。

【今月のゲスト】

野口悠紀雄[早稲田大学大学院教授]

神保 今回のゲストは、ファイナンス理論と日本経済論が専門の、早稲田大学大学院ファイナンス研究科・野口悠紀雄教授です。5月に上梓された『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』(ダイヤモンド社)を読み、ぜひともお話を伺いたいと思い、メインテーマもそのまま「なぜ日本経済のひとり負けが続くのか」としました。

 まずは野口先生から、日本のひとり負けを象徴するデータのひとつとして、IMF(国際通貨基金)による「2007年から2011年までの経済回復見込み」について、ご説明をお願いします。

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おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。
花くまゆうさくの
カストリ漫報
『おなじみのアフロ君がくさす、毎月の気になるニュース。』

宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

“超”現代哲学講座
哲学者・萱野稔人の
“超”現代哲学講座
『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』


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