マル激 TALK ON DEMAND
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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第50回

権力の集中が悪習を招いた検察の改革は成功するのか?【中編】

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検察改革の対象は3点「組織」「捜査」「検証機能」

神保 続いて、検察改革について指宿さんの私案を伺っていきます。まずは全体的な説明からお願いします。

指宿 大きく分けると、改革の対象は「組織」「捜査」「検証機能」の3つです。「組織」の改革で重要なのは、捜査と起訴の分離。そして、検察官の倫理規定を作ることです。手続きを透明化したところで、それを守ろうという動機づけがなければ意味がありません。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第50回

権力の集中が悪習を招いた検察の改革は成功するのか?【後編】

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検察捜査の可視化は本当に可能なのか?

神保 しかしながら、いざ取り調べを最初から最後まで録音したとしても、日本では拘留期間が23日間ありますから、担当弁護士としてもすべてをチェックすることはできないのでは?

指宿 実際のところ、被疑者が暴行されたとか、違法な取引を持ちかけられたと訴えるようなことがなければ、弁護士もテープを確認する必要はありません。「録音しているから、検察官も馬鹿なことはしないだろう」という、保険になるんです。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第49回

ウィキリークスと情報漏洩は"正義"なのか"犯罪"なのか?【前編】

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──ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地──

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──11月、尖閣諸島沖で起こった中国船と海上保安庁巡視船の衝突事件を映した流出映像が動画サイトで共有され、世間を賑わせた。だが、それ以上に重大な機密資料が流出していたのだ。公安警察が作成したものとされるそれらの資料には、警視庁が監視対象にしているイスラム系外国人の詳細なプロフィール、監視している捜査員らの情報、さらには、国際会議での警備体制といった文書まで含まれていた。表向き警視庁は、流出した資料を本物とは認めていない。国際政治アナリストの菅原 出氏は、こうした出来事が無理矢理告発者を作っていると指摘する──。

【今月のゲスト】
菅原 出[国際政治アナリスト]

神保 今回は情報流出・情報漏洩をテーマに議論を進めていこうと思います。情報流出というと、まず尖閣ビデオの流出問題を思い浮かべる方も多いでしょうが、もしかすると、それよりはるかに重要な情報の流出事件が、10月末に起こっていたようですね。

宮台 人の命にかかわる情報だから、「もしかすると」ではありません。海自の尖閣極秘情報流出問題がハレーションで吹き飛ぶほどです(笑)。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第49回

ウィキリークスと情報漏洩は"正義"なのか"犯罪"なのか?【中編】

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公安による活動はインテリジェンスなのか?

神保 今回、外事三課がイラン大使館を監視下に置いていたことが明らかになりましたが、これはどういう意味なのでしょう。イランが国家ぐるみでテロを支援し、行っている疑いがあるとみているということですか?

菅原 おそらく、資金洗浄の部分で(イラン大使館の)口座を監視しているのでしょう。ただ、大使館に出入りする人間をすべて監視するというのは、テロを担当する部署がやる仕事なのか、理解に苦しむところです。

 他方、これは欧米の捜査のやり方を日本にそのまま持ち込んでいるとも言えます。イギリスにしてもフランスにしても、非常に大きなイスラム社会がある。その中でムスリム(イスラム教徒)というバックグラウンドのために差別されている人が不満を抱えてテロに走り、"国産テロリスト"が生まれてしまっているという事情があります。そういう社会においては、ムスリムが活動するためのインフラとしてのモスクを監視することには意味があります。しかし、日本は諸外国とは事情が違う。にもかかわらず欧米と同じようにとにかくモスクを監視すればいいという手法をまねるのはどうかと思います。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第49回

ウィキリークスと情報漏洩は"正義"なのか"犯罪"なのか?【後編】

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その手法と存在意義が変わりつつある告発サイト

神保 今まででも、どんな戦争でもどんな警察のオペレーションでも、やっている人間の中には不満もあれば、不条理な命令を受けないといけない場面もあったでしょうが、これまでは誰もが黙ってそれに従うしかなかった。今では、そんなときにウィキリークスにリークすれば、外部的にその組織を懲らしめてくれるようになってきた、ということですね。

菅原 これは良いか悪いかではなくて、防ぎようがないことです。サダム・フセインが処刑されたときの映像なり音声も、一兵士の携帯電話に収められていました。これだけ情報技術が発達した中で、止めようがない現実もあると思わざるを得ません。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第48回

巨星・小室直樹が残した民主主義への理解と伝搬【後編】

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ロッキード事件で逮捕された田中角栄を擁護

神保 次のテーマは「田中角栄とロッキード事件」。これは小沢一郎氏の検察審議の問題にも結び付いてくるかもしれませんが、小室先生は83年『田中角栄の呪い"角栄"を殺すと、日本が死ぬ』(同)という本を出版し、田中角栄を擁護。同10月の第一審判決の直前には、テレビの討論会に出て、田中角栄擁護の論陣を張りました。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第48回

巨星・小室直樹が残した民主主義への理解と伝搬【中編】

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小室直樹が考えた敗戦問題とソ連の崩壊

宮台 まさに「急性アノミー」。小室先生は「小国民世代」です。大人なら「天皇陛下万歳」という"フリ"ができたし、乳幼児は何も考えず規律訓練的に反復できたけど、物心がついた小学校高学年や中高生は本気で万歳しました。森羅万象を天皇中心主義的に理解したのです。だから他世代と違い、敗戦の意味を生半可に咀嚼できなかった。吉本隆明さんも小国民世代。そういう世代は至極原理的な思想に進もうとします。小室先生という存在は、ティーンエイジャーの少年が敗戦に出会ったときのひとつの型を示しています。ちなみに小室先生が敗戦時13歳、吉本隆明氏が21歳で、それぞれ小国民世代の下限と上限です。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第48回

巨星・小室直樹が残した民主主義への理解と伝搬【前編】

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──希代の学者、小室直樹がこの世を去った。その斬新な思考や創造性から、時に奇人とも評されたが、彼がアカデミズムの世界に残した功績は、計り知れない。社会学、経済学、宗教学、法学、哲学など、あらゆる学問を用いた彼の論理は天才の名にふさわしいものだった。旧ソ連の崩壊、ロッキード事件における検察批判と田中角栄の擁護、そして、真の意味での民主主義への理解など、評論家、学者という肩書にとどまらない小室氏の足跡を、愛弟子である橋爪大三郎氏と宮台真司氏が、回想と共に振り返る──。

【今月のゲスト】
橋爪大三郎[東京工業大学教授/社会学者]

神保 去る9月4日、宮台さんが師と仰ぐ、社会学者の小室直樹さんがお亡くなりになりました。今の日本と世界の状況を見るにつけ、小室先生が残したこれまでの足跡を振り返ることに大きな意味があると考え、今回は小室先生の追悼特番を企画しました。

宮台 昨今話題の大阪地検特捜部の不祥事や、尖閣諸島をめぐる紛争。これらをどう考え、解決するべきか。小室直樹先生は、30年以上前に完璧な答案を書いておられた。例えば田中角栄裁判。先生のテレビ番組における奇行ばかり話題になりましたが、先生は3点を問題にされた。第1に、検察が元ロッキード社副会長アーチボルト・コーチャンの嘱託尋問調書を証拠申請し、裁判所が採用した件。嘱託尋問調書は免責特権を与えた上での供述で、それに相当する制度が日本にない以上、調書の証拠能力は定かでないこと。第2に、免責特権を与えたコーチャンに対する反対尋問権を弁護側が行使できないこと。こんなものを証拠請求する特捜検察は近代裁判がわかっていないとして、「検事をぶっ殺せ」というテレビ発言になりました。第3に、これらすべてを頬被りしても「法を守る市民倫理の枠内にいたのでは政治共同体が危機に陥る場合、たとえ法を破っても市民を守るべく政治共同体を守れ」というのがマックス・ウェーバーの言う政治倫理だとして、指揮権発動による放免を主張された。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第47回

捕鯨問題で報じられない捜査機関の介入と不条理【後編】

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調査捕鯨の既得権益と鉄のトライアングル

神保 星川さんは、この裁判で何を最も強く感じましたか?

星川 「NGOの分際で、捜査機関さえ令状がなければできないことをやったのが許せない」という言葉が、非常に心に残っています。

神保 つまり、NGOに対する蔑視ですね。

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神保哲生×宮台真司 「マル激 TALK ON DEMAND」 第47回

捕鯨問題で報じられない捜査機関の介入と不条理【前編】

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──昨今、なにかと話題に上がる捕鯨問題だが、一連の動きにかんして環境保護団体の行動もマスコミを賑わせている。今回は、グリーンピース職員が鯨肉を持ち出した「鯨肉窃盗事件」における捜査や裁判のあり方を、グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳氏と共に多角的に考察してみたい。まず最初に理不尽だったのは、5万円相当の鯨肉窃盗事件に対し、送り込まれた捜査員が70人を越えるという異常さだろうが、事件や捕鯨のみならず、グリーンピースのあり方やマスコミの報道、そしてNGOや市民活動への司法の介入に問題はなかったのか──。

【今月のゲスト】
星川 淳[グリーンピース・ジャパン事務局長]

神保 今回は「鯨肉窃盗事件」を取り上げます。この事件では、国際環境保護団体・グリーンピースの職員である佐藤潤一さんと鈴木徹さんが、調査捕鯨船団乗組員による鯨肉の横領を告発する目的で、証拠の鯨肉を倉庫から持ち出したために、窃盗などの罪で逮捕されました。そして青森地裁で9月6日、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が出ています。

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映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

未来からのシナン-目指せ!
田中圭一の
未来からのシナン
『現代のビジネスマンたちの悩みを解決する、超SFマンガ。』

ITインサイドレポート
佐々木俊尚の
ITインサイドレポート
『激変するITビジネスとカルチャーの深層を鋭く抉る!』


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