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イオンの流通革命が起こした弊害【2】

『震える牛』が警告する"食品"を"工業製品"に変えた大型ショッピングセンターの脅威

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──流通イノベーションの罪は、地方都市の商店街を衰退させただけではない。新著『震える牛』(小学館)を上梓した、作家の相場英雄が語る、我々の身にも危険が及ぶという、さらに恐ろしい流通革命、 その"罪"の深層とは――?

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相場氏は、地方に行くと、地元の人がす
すめる店を尋ねるという。そこで聞ける話
も多いそう。

 静かに空をにらむ牛の頭骨――シンプルながらインパクトのある装丁と、帯に躍る"平成版『砂の器』"の文字。社会問題を下敷きにした骨太なミステリー小説『震える牛』が2月1日に刊行され、早くも話題を広げている。

 警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一警部補は、2年前に発生した未解決事件「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。被害者は仙台在住の獣医師と、東京在住の産廃業者。一見して偶然、無関係に殺害された2人だが、そのつながりを探るうち、田川は大手ショッピングセンターの地方進出、それに伴う地域商店街の衰退など、社会の構造変化が事件に大きくかかわっていることに気づく......。

 著者の相場英雄氏は、自著のミステリーシリーズ『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』の取材を行う中で、東北のある酪農家から「日本のBSE検査は、一般消費者が考えるほど厳しいものではなく、今も"震える牛"が出てくる。トレーサビリティがしっかりしていない牛肉は、家族には食べさせられない」と聞き、衝撃を受けたという。それが、本作を書き上げる契機になった。

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イオンの流通革命が起こした弊害【1】

商店街が続々シャッター通り化!? 日本の流通を変えたイオンは革命家か? 破壊者か?

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(写真/伊藤星児)

──2000年代、大型商業施設の地方進出が進んだのは、イオンなどが起こしたイノベーションにより、流通網が目覚ましい発展を遂げた成果だ。これらの流通革命は、低迷する我が国の経済にあって、消費者に多大な利益をもたらした。しかしその一方で、00年代も半ばを過ぎると、地方の商店街をシャッター商店街化するなどの問題もささやかれてきた。さらに現在では、そうした郊外から撤退し、地元住民はゴーストタウン化にあえいでいるという。これは行き過ぎたイノベーションの、もうひとつの側面なのか?

日本における「流通・物流」の分野で革命を起こしてきたのは、イオンやセブン&アイ・ホールディングスといった大手流通グループだ。流通網を再編・統合し、大規模商業施設を地方に広げることで大きな飛躍を遂げてきたが、そのことで日本各地の商店街が打撃を受け、「シャッター通り化してしまった」という弊害を訴える声も根強い。こうした流通イノベーションはいかにして進み、日本社会にどんな影響を与えてきたのか?

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ロボットは日本の"救世主"たるか!?【2】

原発調査から海底の遺体捜索まで──震災復興で活躍するロボットと業界を読み解く書

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──数多く開発されている日本製のロボットの中から、震災復興において実際に稼働している、または稼働が期待されるロボットや、ロボット業界の今を知るための書物を紹介する。

八面六臂の活躍ができる双腕のザリガニ

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【1】『ASTACO NEO』
開発/日立建機 用途/ガレキ撤去など 全長/73.5メートル 高さ/29メートル 全幅/24.9メートル 重量/17.8トン

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2つの腕を持つ油圧ショベル「ASTACO NEO」。2011年の5月9日から宮城県の石巻市と南三陸町でガレキ撤去などのために、1週間ほど稼働した。右の主腕、左の副腕に加え、両腕のアタッチメントが付け替え可能なため、アイディア次第でさまざまな運用ができる。こうした重機は国土交通省の管轄のため、ロボットという呼称は使われていないが("ロボット"は経済産業省の管轄となる)、技術的に大きな違いはない。「ASTACO」はスペイン語で「ザリガニ」を意味する。

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ロボットは日本の"救世主"たるか!?【1】

原発安全神話で国家予算が打ち切られていた"原発事故対策ロボット"開発の行方

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(写真/田中まこと)

──かねてより"ロボット大国"とうたわれていた日本だが、震災後の福島第一原発に最初に投入されたロボットは日本のものではなかった。大々的にその技術力が世界に喧伝されていた日本のロボットは、なぜこの国難に真っ先に稼働しなかったのか? そこには、日本のロボット開発・研究の構造的問題点が存在するようだ。(本文中、太字は当特集【2】参照)

 2011年4月17日、福島第一原子力発電所の原子炉建屋内に、震災後初めて偵察用ロボットが投入された。ロボットの名は「Packbot」。お掃除ロボット「ルンバ」で知られるアメリカのロボットメーカー・アイロボット社の製品だ。

 5月には日立建機の重機「ASTACO NEO」【1】がガレキ撤去に使われるなど、原発以外の復興支援では国産ロボットも活躍。その後、6月に入って千葉工業大学が中心となり開発した国産の調査ロボットである「Quince」【2】が福島第一原発内に投入されることとなるが、ホンダの「ASIMO」に象徴されるような"ロボット先進国"というイメージが強い日本のロボットが、海外産ロボットの後塵を拝したことに対して、メディアを中心に落胆の声が上がった。

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タブーなき福島原発"復興策"【2】

現役厚労官僚・木村盛世と元厚労官僚・中野雅至が語る、震災時に"不能"だった官僚たち

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──未曾有の震災に見舞われた時、霞ヶ関の動きは正しかったのか? 現官僚、元官僚の言説から考えてみたい。

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中野氏が期待を寄せる「NPO法人 プロジェクトK」の
HP。

 間もなく発生から1年を迎えようとしている東日本大震災。この未曽有の大災害こそ、中央省庁の官僚たちの真価が問われる事態だったはず......だが、果たして官僚たちはどれほどの働きをしたのか? 発生当時を振り返っても、そして現在から今後へと続く処理をめぐっても、いまいちイメージが湧かないというのが大方の感想ではないだろうか。ここでは、現役厚生労働省の官僚ながら、官僚批判を続ける木村盛世氏と、元厚生労働省官僚で公務員改革を叫ぶ中野雅至氏に、震災復興での霞ヶ関の動き、そして官僚改革について話を聞いた。

「官僚は、何もまともな動きをしていませんでしたよ。そもそも、国家の危機を危機として認識していなかったのだから当然です。彼らにとっての危機とは、自分たちの立場が侵されること以外にはないんです」

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タブーなき福島原発"復興策"【1】

がれき処理の中間貯蔵施設は"金の山"? 裏社会の住人も群がる"福島原発復興策"

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福島第一原発20キロ圏内は、いまだ震
災の深い爪あとが残っている。

──「震災復興には、裏社会の手助けが必要だ」と口にして物議を醸したのは、作家・堺屋太一の発言だが、現実にはすでに、裏社会の住民らは復旧マネーの分配にあずかっている。福島第一原発半径20キロ圏内国有化計画が浮上する中、"本音"の復興改革にスポットを当ててみよう。

「復旧(復興)にはスピードが必要」「平時のように四角四面に法律を適用していては、ことは迅速に進みません。正直なところ、裏社会の人に協力を要請しないと突破できない局面も出てきます」

 こう月刊誌上で述べたことが物議を醸し、暴力団排除活動を進める全国の弁護士から抗議を受けたのは、作家の堺屋太一氏。堺屋氏は、阪神淡路大震災で政府の復興委員を務めた経験から今回の「裏社会」発言に至ったのだが、この発言は福島県の復旧の最前線を的確に反映したものともいえそうだ。というのも、週刊誌を中心に既報されているが、現実にはすでに裏社会の住人たちは復旧の最前線に根を下ろし、復旧(復興)マネーの配分にあずかっているからだ。

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新時代を切り開く"革命児"たち【企業】

「日経トップリーダー」編集長が選ぶ革命家──葬儀界のクリーン化を推し進める名社長

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──人口の高齢化が進む今の日本で、ますます需要が増してくる葬儀業界。偏見や慣例の強い業界で、改革を推し進める経営者を、「日経トップリーダー」編集長の高柳正盛氏に聞いた。

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[推薦人]
高柳正盛(たかやなぎ・まさもり) 
1963年生まれ。91年日経BP社に入社、「日経ロジスティクス」記者に。「日経レストラン」「日経ビジネス」の記者の後、「日経ビジネスアソシエ」副編集長、「リアルシンプル」発行人補佐兼編集部長、「日経レストラン」編集長などを経て、10年より「日経トップリーダー」編集長。

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高柳氏曰く「とにかく熱い人。話し出したら止まらない(笑)」。講演などを一度聴講してみては?

 今葬儀業界で急成長しているティアという会社があり、そこの冨安徳久社長に注目しています。

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新時代を切り開く"革命児"たち【宗教】

宗教学者が選ぶ革命家──大川隆法、江原啓之も影響を受けた"霊的世界"思想を提唱した宗教家

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──昨年末の平田信の逮捕により、「オウム真理教」の名を久しぶりに目にした人も多いだろう。同団体などの影響により、現代の新新宗教は毛嫌いされることが多くなったが、宗教学者・島薗氏によると、こうした団体には、ある宗教家の影響があるという。

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[推薦人]
島薗進(しまぞの・すすむ) 
1948年、東京都生まれ。宗教学者。東京大学大学院人文社会系研究科教授。近代以降の日本の宗教史の研究を中心に、世界の諸地域の宗教のあり方の比較研究を行う。近年は死生学の研究に取り組む。近著に『国家神道と日本人』(岩波新書)など。

 近代に生まれた、日本の新宗教の宗教家の中で革命的だった人物は何人かいますが、70年代以降に発展期を持った、"新新宗教"において際立った人物として、私は、GLAの高橋信次氏を挙げたいと思います。GLAとは、60年代末に設立された宗教団体です。GLA総合本部はそれほど規模の大きい団体ではありませんが、高橋信次が活性化した新しい宗教思想のうねりは、今なお多くの人々に受け継がれているのです。

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新時代を切り開く"革命児"たち【教育】

元教育ジャーナリストが選ぶフリースクールの革命家──"学校へ行かない"選択肢を与えたジャンヌ・ダルク

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──12年1月、戸塚ヨットスクールで訓練生がまたも自殺を図った。同校は、不登校の子どもたちが通う"フリースクールだ。そこで今回、不登校問題に取り組み続けている保坂展人世田谷区長に、教育の革命家を聞いた。

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[推薦人]
保坂展人(ほさか・のぶと) 
1955年、宮城県生まれ。世田谷区長。中学校在学中の政治活動と学校批判をめぐり、高校生当時の72年に内申書裁判の原告となり、以降、16年間争う。80年代から教育ジャーナリストとして活躍し、96年には衆議院議員初当選。11年4月に世田谷区長選で当選を果たす。

 1970~80年代くらいまで、「不登校」は「登校拒否」と呼ばれ、"登校拒否=病気"と語られる傾向が強かった。学校へ行かないのは当事者の子ども、もしくはその子どもを育てた親に原因があるとする考え方が主流で、不登校の子どもを精神科に通院させて薬を飲ませたり、場合によっては病院側が強制入院させることもあった。「不登校の背景には"学校でのいじめ"が存在していることが多い」という因果関係が、当時はあまり理解されてなかったんですよ。だから、文部省も「登校拒否は、あってはならないこと」としていました。結果、不登校児が出ると、学校の担任教師はその子の自宅を訪問して「なんで来ないんですか」と本人や親を問い詰め、親も親で、朝になると嫌がる子どもを無理やり学校に連れていく......そういうことが日常茶飯事として行われていたんです。今年1月に訓練生が飛び降り自殺をした戸塚ヨットスクールも、海上の訓練で子どもを叩き直せば不登校を克服できるという、まさに"登校拒否=当事者の問題"ととらえたアプローチをしているわけですから、未だにそう認識している人もいる証拠です。

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新時代を切り開く"革命児"たち【自然エネルギー】

自然エネルギー政策の第一人者が選ぶ世界基準の漢──日本の風力発電を世界に知らしめた"侍"

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──福島第一原子力発電所事故の発生を受け、自然エネルギーへの関心が高まる昨今。代替エネルギーを推進する業界の雄を、自然エネルギー政策の第一人者として名高い飯田哲也氏に聞いた。

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[推薦人]
飯田哲也(いいだ・てつなり) 
1959年、山口県生まれ。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。自然エネルギー政策における第一人者として知られ、資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員なども務める。近著に『エネルギー進化論』(ちくま新書)など。

 自然エネルギーにおける「革命」というと、環境エネルギー分野のパラダイムを「増大路線から環境を重視した効率路線へ」と変えたエイモリー・ロビンズの著書『ソフト・エネルギー・パス』(時事通信社)が、70年代に槌屋治紀氏らによって翻訳・紹介され、以後日本でも、太陽光や小水力発電といった分散型エネルギーの研究は進められてきました。しかし、政策面においては、私も発足にかかわった超党派による議員連盟が1999年に設立し、02年に「自然エネルギー促進法」が国会に提出されるまで、まともな議論すら行われていない状況でした。

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