CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評
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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第11回──【DRAMA編】

『大切なことはすべて君が教えてくれた』が象徴する"月9の世代交代"!!

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──ついに"ドラマの帝王"木村拓哉ですら視聴率の取れなくなったドラマ大恐慌時代。そんなテレビ離れ世代にこそ見て欲しい、テレビマンたちの力とは? ドラマの見方が変わる新目線批評。

2011年5月号 DRAMAクロスレビュー

■三浦春馬×戸田恵梨香on月9

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『大切なことはすべて君が教えてくれた』
演出/西浦正記、葉山裕記 脚本/安達奈緒子
出演/戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲、篠田麻里子ほか
フジテレビにて1月より毎週月曜21:00(3月28日終了)


同じ高校に勤め、結婚を目前に控える教師の夏実(戸田)と修二(三浦)。幸福なカップルだったが、修二が生徒のひかり(武井)と一夜を共にしてしまったことから、状況は一変......。若手を多く起用し注目を集めたが、視聴率は低迷。

【批評家・宇野評】
★★★★★★★☆☆☆
その挑戦的な制作姿勢を買う
脚本、キャストともに若手を大胆に起用したことはもちろん、妊娠、結婚、職業意識といった定番のネタを、高校教師という主人公たちの設定を生かして新鮮に見せるというコンセプトが効いている。主人公の元彼女や、女教師に憧れる男子生徒のエピソードなど、発展性のない伏線を容赦なく切り捨てていく思い切りの良さで、ジェットコースター性を維持したのもいい判断。フジドラマの再生に期待できる秀作だ。視聴率苦戦は枠のミスマッチが原因か。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第11回──【COMIC編】

テーマの割には意外と地味!? 「りぼん」の百合マンガ『ブルーフレンド』

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2011年5月号 COMICクロスレビュー

■女子高生たちの『ドラゴンヘッド』

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『リミット』(4巻)
作/すえのぶけいこ
掲載/「別冊フレンド」(講談社)
価格/440円 発行日/3月11日
キャンプに向かうバスが事故に遭い、山の中で生き残ったクラスメイトの女子5人。もともとスクールカーストが定着していたクラスだったが、イジメのターゲットだった森重は生き残り、鎌を手にしていた。「刃向かう奴は容赦しない」という彼女に、ほかの4人はどう対抗するのか? ドラマ化もされた前作『ライフ』では女子同士の陰湿なイジメを描き、評価の高かった作者によるリアルサバイバルもの。

【ライター、編集者・高野評】
★★★★★★★☆☆☆
スピード感と心理描写に引き込まれる
日常が崩壊したあとの世界を、どのように生き抜くか。ヒリヒリするほどリアルになってしまったテーマのため、読みはじめがつらかったが、高濃度の書き込みによるスピード感、わかりやすい心理描写に、4巻ではいよいよミステリーの要素まで加わり、ぐいぐい引き込まれた。社会派といってしまえばそれまでだが、この作風、ある意味では山岸涼子などの系譜といえるのかもしれない。作者の目には、人間がどのように映っているのだろう。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第11回──【COMIC編】

サブカル好きに大ウケする浅野いにおの『おやすみプンプン』の真価とは!?

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2011年5月号 COMICクロスレビュー

■ジャンプ流サスペンスバトル

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『PSYREN-サイレン-』(16巻)
作/岩城俊明
掲載/「週刊少年ジャンプ」(集英社)
価格/420円 発行日/3月4日
「PSYREN」と書かれた不審なテレホンカードを拾った男子高校生・夜科アゲハは、都市伝説の中で「PSYREN」と呼ばれる謎の世界が、荒廃した未来であることを知る。そこに一度行ったことで超能力を身につけた彼と仲間たちは、未来を救うためにPSYRENと現代日本を行き来しながらサイキッカー集団に戦いを挑む。

【脚本/演出家・麻草評】
★★★★★★★☆☆☆
ホラーとして読めば魅力がわかる
ホラーの面白さは、主人公がいかに不幸な目に遭うかで決まる。ところが少年マンガの快感は、不幸が努力によって覆されて生まれる。主人公が遭遇するさまざまな悪夢的状況を描いた本作は、少年マンガ的な荒唐無稽さとの相性がとことん悪かった。リアリティの欠如したご都合主義に見える展開も、ホラーの文脈で捉え直して読むとその魅力がわかる。最終巻を少年マンガの最適解へ豪腕で導いた作者の次回作は、青年誌でホラーをお願いしたい。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第11回──【MOVIE編】

日本映画のダメなところがここにある!! 『まほろ駅前多田便利軒』

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──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!

2011年5月号 MOVIEクロスレビュー

■小説からドラマ、今度は映画化

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(C) 2011「八日目の蝉」製作委
員会

『八日目の蝉』
監督/成島出
原作/角田光代
脚本/奥寺佐渡子
出演/井上真央、永作博美、小池栄子ほか
配給/松竹 公開/4月29日

不倫の子を堕ろした後、同時期に生まれた男の正妻の子を誘拐した希和子(永作)。母娘として4年間幸せな暮らしを送るが警察に見つかってしまう。数年後、恵理菜(誘拐生活時は「薫」/井上)は大学生になり、不倫相手の子を妊娠する。原作は角田光代で、一度NHKでもドラマ化された作品。脚本は『サマーウォーズ』の奥寺佐渡子。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★★★☆☆☆
「女の業」を描く豪快な手腕
子どもの誕生はしばしば幸せの象徴とされるが、残念ながら絶対ではない。たとえば産めない者にとっては暴力にもなる。角田光代の原作は無視されがちなその事実を丁寧にあぶり出し、そこに潜む複雑な女心を繊細に綴るが、同時に強靭で過激でもある「女の業」を描く上では成島監督の豪快な手腕がハマっている。原作の要素をたくみに落とし込みながら、その両面をカバーした奥寺脚本はさすが。井上真央の生命力あふれる存在感が光っている。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第11回──【GAME編】

3D対応携帯ゲーム機が任天堂から出た意味と、ゲーム史におけるその位置付けとは?

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「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?

本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!

今月の一本
『3DS』

井上明人[GLOCOM研究員]×中川大地[ライター]×宇野常寛[批評家]

──2月末に発売されたニンテンドー3DS。DSシリーズとしてはもちろん、裸眼で3D対応ゲームをプレイできる初のポータブル機として、発売前から注目を浴びていた。まだ対応ソフトもさほど出揃っていない状況ではあるが、この新ハードの出来から、日本のゲーム業界の現状を分析する。

中川 今年はいよいよ携帯ゲーム機の世代交代の時期。国内ゲーム産業がソーシャルゲームの勃興や海外に向けてどう巻き返しを図るかという情勢の中で、その皮切りとなったのが3DSです。東日本大震災の影響で勢いは鈍らざるを得ませんが、多分被災地でも携帯ゲーム機が子どもたちの唯一の慰めになっているような光景は、少なからずあるんじゃないでしょうか。そんな大状況の中ですが、3DSへの率直な感想は皆さんどうですか? 僕は左右の視力がだいぶ違うこともあって、ほぼ3Dに見えなかったりするんですが......。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【NOVEL編】

芥川賞ダブル受賞作から問い直す メディアと表現の関係を無視する変わらぬ保守"純文学"

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新人小説家に与えられる文学賞の最高峰である芥川賞。今年上期の第144回では、まったく異なるタイプの書き手がダブル受賞を果たした。私小説という懐古趣味的ジャンルと、表現に挑戦する新しい実験小説──その解釈の正当性に疑問を提示する。

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朝吹真理子氏の『き
ことわ』

去る1月17日、第144回芥川賞が朝吹真理子と西村賢太に与えられることに決まった。

 受賞した両名は、実験小説の朝吹と私小説の西村と対比して語られる。年若い朝吹の小説が新しさを、初めて芥川賞候補に取り上げられてから受賞まで5年もかかった西村が懐古趣味的なものを代表しているかのように。

 しかし、実際は逆である。ある意味では西村の小説は現代的であり、朝吹の小説は新しくないのだ。

 朝吹の小説はヌーヴォ・ロマンからの影響がうかがえると評される。受賞作『きことわ』は、歳月が過ぎ去ることの早さを読者に抱かせるためにヌーヴォ・ロマンの手法が使われているのだが、ヌーヴォ・ロマンは今から50年前の文学運動である。主要な作家も大方が死んでしまった。つまり、いささか古いのである。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【NOVEL編】

繊細で高級だけど、退屈で冗慢な芥川賞受賞作『きことわ』

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──"ベストセラー"のハードルが下がる小説界に残された小さな希望......そんな良質な小説だからこそ! ここでは愛ある批評を捧げます。

2011年4月号 NOVELクロスレビュー

■芥川[1]風俗通いの中卒私小説家

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『苦役列車』
作/西村賢太
発行/新潮社
価格/1260円 発行日/1月26日
舞台は昭和61年。友人ナシ恋人ナシ、中卒で日雇い労働者で収入は日に5500円、楽しみはカップ酒......と、荒んだ生活を送る19歳の貫多。そんな彼にも、時として日々に変化は訪れる──。徹底してクズのような男を主人公にいくつかの私小説を書き、ここ数年注目を集めてきた作者。『どうで死ぬ身の一踊り』『小銭をかぞえる』に続く3回目のノミネートで芥川賞受賞。

【ライター・江南評】
★★★★★★★★☆☆
ジャンル「私小説」の強さを示す
日本文学における「私小説」というジャンルの強さを示す一作。著者は芥川賞受賞後に、同じく候補作だった小谷野敦『母子寮前』を「この作品には負けたと思った」と評したが、ともに王道的私小説とはいえ、本作は自己を笑いのめしキャラクター化してみせた。なにより主人公・貫多の、女(と風俗)に対する執着が笑えて仕方ない。伝統などしらぬ読者層も獲得できた理由か? 芥川賞受賞を契機にどう作風を変え、自己模倣を回避するか、今後の展開が楽しみ。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【COMIC編】

1巻ならではの散漫っぷりが魅力!? BL作家が描く『つなぐと星座になるように』

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──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!

2011年4月号 COMICクロスレビュー

■王女と従者の歴史大河ロマン

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『女王の花』(3巻)
作/和泉かねよし
掲載/「ベツコミ」(小学館)
価格/420円 発行日/1月26日
正妃の母・黄妃が病弱だった為に、周囲から冷遇されていた亜の国の姫・亜姫。かつて母に仕えた青徹と知り合って文武を学び聡明に成長するが、それ故にさらに疎まれて母の生国へ人質として送られてしまう。従者で胡人(異人)の薄星と亜姫の未来は? 本巻では在りし日の母・黄妃と青徹の物語が描かれる。少女マンガの一種の王道、歴史大河モノ。

【ライター、編集者・高野評】
★★★★★☆☆☆☆☆
矜持も深慮もないヒロインで大丈夫?
青徹過去編、以上。導く男とヒロインの母・黄妃との叶わなかった恋を描くこのパートはよくまとまっていたものの、目新しさはなく、NHKがアニメ化しそうな中国モノ(『十二国記』や『彩雲国物語』のいいとこ取り)というデジャヴ感、あざとさだけが印象に残った。やがて女王になるというのなら、亜姫はもっと深く考え悩まなければならないし、生まれもっての矜持があるなら「へたり込んでケツ汚す」など問題外。読者はもっと利口では?

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【COMIC編】

『仁-JIN-』の最終巻は技巧の光る大団円か? それとも白々しい幕引きか?

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2011年4月号 COMICクロスレビュー

■『幕張』作者のアルティメット格闘モノ

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『喧嘩商売』(24巻)
作/木多康昭
掲載/「週刊ヤングマガジン」(講談社)
価格/560円 発行日/2月4日
古武術を学び、喧嘩に明け暮れる高校生・佐藤十兵衛と、彼のライバルや師匠ら周囲の人間各々の戦いと事情を、『幕張』『泣くようぐいす』同様、作者お得意の毒の強いギャグを交えつつ描く格闘マンガ。ヴァーリトゥーダー・田島が、自らの最強を証明するために仕掛けたトーナメントへ参加する面々たちの背景を描き切った今巻で第一部が完結。

【批評家・宇野評】
★★★★★★☆☆☆☆
「何でもアリ」の快楽を、もっと!
テーマであるルール無用の「喧嘩」とは「面白ければなんでもよい」という思想に貫かれており、これはギャグ作家・木多の思想そのものでもある。作者の中では、過去作と本作はそれほど離れていないはず。問題はむしろギャグの洗練に比して登場人物の過去話がすべて似通っているなど、エピソード処理の甘さだろう。20巻以上かけてあのぎこちない絵で独特の質感を構築しつつあるのは評価できる。「なんでもアリ」の快楽をもっとアクションにも生かせれば。

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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【MOVIE編】

『洋菓子店コアンドル』で森ガールを演じる蒼井優の扱いは適切だったのか!?

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──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!

2011年4月号 MOVIEクロスレビュー

■オッサン名優豪華共演アクション

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(C)2010 Summit Entertain
ment, LLC. All Rights Res
erved.
『RED』
監督/ロベルト・シュヴェンケ
出演/ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチほか
配給/ディズニー 公開/1月29日
引退して田舎暮らしを送る元CIAの凄腕エージェント・フランクは、ある夜コマンド部隊に襲われる。送り込んできたのがCIAであったことから、フランクは、同様に引退している仲間たちを集め、反撃に出る。オッサン名優によるオールスターアクション。

【映画文筆業・那須評】
★★★★★☆☆☆☆☆
冗長な物語とスターの無駄づかい
元CIAのトム・クルーズが組織を敵に回しながらキャメロン・ディアスの美女とアバンチュールを楽しむ『ナイト&デイ』は思わぬ傑作だった。2人がスターであることを存分に生かして余計な説明を省いた物語の飛ばし方が秀逸だったが、それを親切に補った結果、冗長になってしまったのが本作。名だたるスター軍団の使い方も勿体ない。ただ、出番が少なすぎた『エクスペンダブルズ』の分まで、ブルース・ウィリスが頑張っていることは確か。

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宇野常寛の批評
宇野常寛の
批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

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カストリ漫報
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