「シックな表紙デザインと多彩な品揃えが魅力の総合版ギフトカタログ」で知られる「たまかづら」。お値段は11,880円。洗練されたデザインで、掲載商品の総数は約1100点、416ページという香典返しカタログ特大号である。
大切な人が亡くなり、心痛ながらも香典を包む。そのお返しの文化であるのが「香典返し」だが、最近では結婚式の引出物よろしく
“香典返しカタログギフト”が人気。「本」特集の今号こそ、そんな香典返しカタログを熟読してみた。
「香典返し」とはお通夜や葬儀で故人にお供えいただいた「香典」へのお返しに御礼の品をお渡しすることである。頂戴した金額の半額をお返しする「半返し」が基本で、一般的には「忌明け」の四十九日法要後に送るとされているが、近年では葬儀の当日にお返しする「即返し」を行う人も増えてきているという。
香典返しで贈る品物を選ぶ際は、「不祝儀を残さない」という意味合いを込めて、食料品や日用品などの「消えもの」が好ましいとされる。もっともタブーとされているのは、肉や魚類といった「四つ足生臭もの」と呼ばれるもので、これは殺生を連想させるとして避けられている。このように香典返しは、故人を偲んでくれた人々への感謝の気持ちをお返しするものであるが、失礼のないように品物を選ぶのもなかなか大変である。
そこで近年は、相手の好みに合わせて選べるカタログギフトが大人気なのである。香典返しの相場は「1/3~半返し」。例えば、香典が1万円の場合は3000~5000円程度のカタログギフトをチョイスするのが目安だ(価格帯はカタログを取り扱うメーカーによって異なるが、下は2000円台から上は10万円台まで幅広く設定されている)。
香典返しのカタログには、食品や日用雑貨、小物、装飾品、キッチン用品、家電など、まるで通販雑誌かのようになんでもそろっている。数ある香典返しカタログだが、日本唯一の葬儀ライターとして活躍する奥山晶子氏は、デザインの美しさと編集能力が突出しており、まさに書籍としても楽しめる「antina」を推す。 「ほかにも〝雑誌的〟という視点で選ぶなら、『婦人画報』(ハースト婦人画報社)や『dancyu』(プレジデント社)などとコラボした香典返しカタログもおすすめです」と、それらのカタログには、上質で洗練されたアイテムが並び、眺めているだけで優雅な気分にもなれる。価格帯が高いほど、五つ星ホテルや有名温泉旅館での宿泊、高級レストランでの食事、世界の有名ブランドアイテム、伝統ある匠の技が光る品、スパ&エステ体験などのゴージャスな商品がちりばめられている。
とはいえ、香典返しである。あくまでも香典返しなのだ。慎ましやかな気持ちで受け取るはずが、「旅行やグルメを楽しみ贅沢を味わってもいいのだろうか……」と思い悩んでしまう。選ぼうにも「高価な商品を選ぶのは悪印象を与えるのでは……」的な邪念すら脳裏をよぎる。そしてなにより、ジャンルも手広く商品数が多いため、何を選べばよいのか迷ってしまう。ページを隅から隅まで探すのも億劫になり、これはもしやカタログギフト業界の陰謀かと思えてしまうほどだ。
そもそも香典返しはいつから始まったのか?その歴史を紐解くために創業89年の葬儀会社「佐藤葬祭」代表、かつ葬儀系YouTuberとしても活躍する佐藤信顕氏に聞いた。