大阪・難波を拠点とするNMB48のメンバーが、新たな小説を発表。それも、芸能界がテーマの話である。近年、現役アイドルが執筆活動を始めたり、さらに小説家がアイドルの世界を舞台にした物語を描くことも増えたが、現役アイドルでありながら小説家の彼女は、何を思って筆を執るのだろうか?
(写真/佐藤将希)
「アイドル」を題材にした小説やマンガが数多く生まれている現在。その中で、現役のアイドルとして活動しながら、ほかならぬ「アイドル」をモチーフにした小説を発表しているのが、NMB48の安部若菜だ。2022年に上梓した『アイドル失格』では、人生の岐路を迎えるアイドルとオタクの気持ちのゆらぎを描き、コミカライズやテレビドラマ化も果たす。
そんな安部による新作『私の居場所はここじゃない』(共にKADOKAWA)は、芸能スクールに通う5人の高校生がそれぞれに夢を抱きながら葛藤する青春群像劇。ステージに立とうとする者たちを描き続ける彼女に、「アイドルがアイドルを描くこと」について聞いた。
――アイドルを題材にした小説を書くとき、現役アイドルであることのアドバンテージと難しさ、どちらが先に思い浮かびますか?
安部若菜(以下、安部) もちろん、利点はとてもありますが、やはり難しさのほうですね。現役のアイドルであるメリットというのは、現実のアイドル活動の細かいところまで描写できることだと思うのですが、同時に書きすぎてしまうのもよくないため、「どこまで書くか?」という線引きの難しさを感じます。
――書きすぎてしまうというと?
安部 フィクションとして書いているのですが、どの言葉も「アイドル・安部若菜」の言葉として受け取られてしまうのではないか、という不安が常にあります。それから、アイドルというのは「夢のある仕事」のため、裏側をさらけ出しすぎるのは、私が考えるアイドルの理想に反してしまうし、自分自身への営業妨害にもなりかねない……。そこは書きながら葛藤しています。
――とはいえ、人物の裏側にある背景も書かないと、キャラクターとして立ち上がってこないわけですよね。
安部 そうです。なので、とにかくキャラクターとしてのブレがないように、と思って書いています。そこに少しでも綻びが出ると、作者である私自身の言葉のように見えてしまいかねない。キャラクターがどんなことを言ったとしても、そのキャラクターとしての言葉として成り立っているなら大丈夫ではないか、と思うため、そのことは意識して書いています。
――架空のアイドルを描くとき、どのように人物造形するのでしょうか?