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第1特集
終わりつつある民主主義と終わらない政治不信

フェイクニュース&癒着に騙されないリテラシーを高める良書8選

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ネットの力で再当選を果たした斎藤元彦兵庫県知事だが、今度はその戦略を担ったPR会社との関係が問題視されている。また突如〝非常戒厳〟を出した韓国の尹錫悦大統領は、左翼勢力は北朝鮮に操られているという保守系YouTubeの陰謀論に影響されたのではないかという話も……。

政治報道の本質を読む

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トランプがカムバックすることから、外交手腕に注目が集まる石破茂首相。(写真/Getty Images)

自民党内の反体制派だったはずが、総理になった途端に日和り始めた石破茂総理といい、斎藤元彦兵庫県知事といい、昨今の政治状況は国民の政治不信を増す方向にばかり進んでいるように見える。いまこそ、政治系YouTubeばかり見てないで、書籍で政局を学ぶべき時が来たのかもしれない。

「今は政治不信が非常に高まっていますが、私は政治不信のかなりの部分は『政治報道不信』ではないかと思っています。政治家に実際に会ったことがある人は少なくて、皆、政治報道を通じて政治のイメージを持っている。どうやって政治記事は生まれているかということが、一般の人にはほとんど知られていません。まずはその実態を明かしてしまおうと書いたのが『朝日新聞政治部』①という本です」

こう話すのは、元朝日新聞記者で、現在はフリーランスのジャーナリストとしてウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」で、記事や動画を配信している鮫島浩氏。同氏が2022年に出版した『朝日新聞政治部』は、新聞社の政治報道の内幕を赤裸々に描いて大きな反響を呼んだ。同書では、朝日新聞社の官僚的な体質についても詳しく書かれているが、なかでもページが割かれているのは、担当する政治家に早朝から深夜まで張り付くうちに、その政治家と心身ともに密接になってしまう番記者制度の功罪についてだ。

「政治家の本性を書くためには、あの手この手を尽くして対象の政治家に肉薄しないと相手のことはわからない。その意味で番記者制度はやはり必要なのですが、普通の人はそうやって日夜政治家と行動をともにするうちに取り込まれて癒着してしまう。肉薄しながらも騙されないで厳しく批判するのが本当の政治ジャーナリズムなのに、実際は担当する政治家のシンパになってしまうのですから、政治報道は批判される一方です」(鮫島氏)。

そんな鮫島氏が政治記者になって、最初に担当したのが、98年から00年まで総理大臣を務めた小渕恵三首相の総理番だった。98年の参議院選挙での自民党の敗北の結果、小渕首相のときに公明党との連立が始まるなど、現在の政局にも連なる政治状況が展開されていた。当初の低支持率は次第に回復したが、00年に総理公邸で倒れ、在職中に帰らぬ人となった。その小渕本人に取材を重ねた上に、父親の経歴までもさかのぼって、ノンフィクションの大家・佐野眞一が書き記したのが、『凡宰伝』②である。

「小渕さんは小泉純一郎みたいなカリスマ性はない一見凡庸な人に見えましたが、実際は早稲田大学在学中から政治家を目指して、初選挙の話題作りも兼ねて世界一周をするなど、実は内面に強い権力欲を秘め、さらに粘着質な人でもあった。政治家の権力に対する執着の大元はコンプレックスであるということを、この『凡宰伝』という本はとてもうまく書いていると思います」(鮫島氏)

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書影撮影/増永彩子

政治リテラシーを高める良書

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①『朝日新聞政治部』
鮫島浩/講談社/22年
朝日新聞記者だった著者が小渕恵三や菅直人の番記者を経て、デスクとして携わった「吉田調書」報道をめぐって解任される内幕を赤裸々につづる。


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②『凡宰伝』
佐野眞一/文春文庫/03年
「凡人」「冷めたピザ」などと揶揄されながらも、実は非凡な政治力を見せ、自ら電話をかけまくる「ブッチホン」でも知られた小渕恵三の人物像を探る。(写真は単行本版)


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③『女帝 小池百合子』
石井妙子/文春文庫/20年
巧みな世渡りで都知事に上り詰めた小池百合子の来歴を検証。特に学歴詐称が取り沙汰されるカイロ時代のルームメイトの証言が注目を集めた。


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④『裏金国家日本を覆う「2015年体制」の呪縛』
金子勝/朝日新書/24年
日本の政治の本質を、裏金をばらまいて都合の悪い言論を封殺する、仲間内資本主義と断ずる著者が、日本の民主主義を破壊した元凶を糾弾する。


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⑤『民主主義へのオデッセイ私の同時代政治史』
山口二郎/岩波書店/23年
細川政権、鳩山政権という二度の政権交代を間近に見てきた政治学者が、自身の日記をもとに、なぜ二大政党制が日本に根付かなかったのかを検証。


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⑥『安倍晋三 回顧録』
安倍晋三・橋本五郎/中央公論新社/23年
読売新聞出身の橋本五郎が聞き手となり、安倍晋三に計18回、36時間にわたるインタビューを敢行。安倍の死後に刊行された。


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⑦『フェイクニュース時代を生き抜くデータ・リテラシー』
マーティン・ファクラー/光文社新書/20年
NYタイムス東京支局長を務めた著者が、ディープ・フェイクが蔓延するSNS時代において真実を見極める力をどのように身につけるかを説く。


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⑧『独裁者のためのハンドブック』
ブルース・ブエノ・デ・メスキータ&アラスター・スミス著、四本健二・浅野宣之訳/亜紀書房/13年
世界のさまざまな事例を紹介しながら、なぜ優れた民主的リーダーは短命に終わり、暴君が長く権力を握り続けるのかを解説する。

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