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井川意高の天上夜想曲【1】

18歳で銀座デビュー、「化身」に魅了された夜

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――あなたの知らない「夜の世界」をご案内します

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5000億円企業・大王製紙創業家3代目の御曹司であり、東大法学部卒の超エリート。自ら起こした事件を受けて、会社を去ることになったが、自身が有する莫大な資産と華麗なる人脈、そして、その人柄に変化なし。そんな井川意高が、若き日から今に至るまで夜な夜な繰り出してきた「天上の宴」というべき夜の世界に大衆を誘う。実業家、資産家、芸能人、文化人、港区女子……そこには、どんな人々が集い、いかなる物語が奏でられてきたのか――。

サイゾーの揖斐社長から、「井川さんにとって、仕事が終わったあとの『夜の交遊』とはどんなもので、公私においてどんな意味があったのか? その魅力や危険とは? 若き日の遊び方・飲み方から、今日に至るまで、基本的には時系列でエピソードを交えつつ、一般人には体験し得ない、夜の交遊録を綴っていただきたい」と依頼された。

確かに40年以上ほぼ毎晩欠かすことなく、飲み歩いた人生だ。いろいろと面白いエピソードもあるし、立派な人物、危ない人間とも席を同じくしたこともある。様々なキャラクターの女性たち、大企業の創業家社長、裏社会の大物紳士もいた。

そんな「夜の自伝」を書くのも一興かとも思い、オファーをお受けすることにした。読者にとって面白いか面白くないか、役に立つか立たないか、なんとも言えないが、揖斐社長から「もう結構です」と言われるまでしばらく書き綴ってみよう。

まずは、私が夜の社交場に通うこととなったきっかけ、銀座デビューの話から。

無事志望大学に合格し、高校の卒業式も終えた最後の春休み、父・高雄が行きつけの銀座のクラブに私を連れて行ってくれたのだ。父自身、慶應大学在学中から銀座のクラブ通いをしていたことを武勇伝にしていたので、私の大学入学祝いのようなつもりだったのだろう。

ところが……当時の銀座の人気クラブは、私にとって眩いばかりのものだった。

兄弟は弟一人しかおらず、中学高校と男子校で過ごした私には「こんなに綺麗な女性が、こんなに大勢いる場所がこの世にあったのか!」と衝撃を受けたのだ。 今にして思えば、銀座では十人並み程度の女性たちだったのだが、女性に免疫のなかった18歳の私が魅せられるには十分だった。

しかも……私の隣に座った女性がよろしくなかった! のちに、大人気作家・渡辺淳一先生のベストセラー『化身』の主人公のモデルだともいわれたS子だったのだ。

もう42年前にもなるのに、S子の目鼻立ちのくっきりとした容貌や少し気怠げな声色は鮮明な記憶として残っている。

彼女は私と同学年で、慶應・早稲田を志望して受験したが落ちてしまい、来月から予備校に通うかたわら、その受講料を稼ぐために銀座で働くことにしたのだと語った。なんと、その日が初日だと言う。

同い年という親近感と、高校卒業と同時に水商売をするという世慣れした育ちなんだろうという想像からの一種の畏怖感が綯い交ぜになりつつ、18歳とは思えない妖艶な風貌容姿に、その時の私はすっかり魅せられてしまったのだ。

「意高! 次の店に行くぞ」と父に声をかけられ我に返った私は、そのクラブ、ランコントをあとにし、グレに向かう父のメルセデスの後部座席で恐る恐る様子を窺いながら話したのだった。

「綺麗な女性ばかりですね」

「ん? 次のグレはもっと女の子の数が多いぞ」

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