日本という国家は、国民主権で運営されているはずなのに、我々にその実感はほぼない。しかも、国民の信託を受けていない人々によって基本的人権は侵害され、トンデモない政策や憲法改正案まで繰り出されていることに気づくことなく……勉強不足? 危機意識の欠如? 我々は洗脳されてしまっているのだろうか?
――今回は民主主義と洗脳についてお聞きしたいです。博士は近年、各所で民主主義論を語っていらっしゃいますね。
苫米地 理由は簡単で「日本には民主主義があったことなんか一度もない」から。民主主義だと思っているとしたら、それこそ権力に洗脳されているってこと。日本国憲法の第十一条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と書いてあるよ。ところが、ワクチンを打てと国策としてやった。その結果、8割の国民がワクチンを打った。これはヤバいよ。
――完全に基本的人権を侵害されてますね。
苫米地 憲法が定めた民主主義の基本がない。他にもおかしな点はいくつもあるよ。例えば、相続税。税金を払って残ったモノが相続財産だよ。それにさらに税金掛けるってどういうこと? これは二重課税だから間違いなく財産権を侵している。相続税って憲法違反なのに、そんな議論が起きないほど、国民は権力によるルール作りを盲信している。
――「富の再分配のため」と言われて納得している人もいるかもしれませんが、そもそも相続税は民主主義的な手続きで決まったことなの?と思いました。
苫米地 民主主義が機能していないことが当然になっているから、国民は、本当の民主主義が何かもわからなくなっているわけ。ではこの偽りの民主主義はいつ始まったのかというと明治ね。わかりやすい事例を言うと、1890年に行われた第一回衆議院選挙。選挙は民主主義を実現するのに欠かせない手続きと思われているけど、この時は、直接国税15円以上を払っている25歳以上の男子だけに選挙権が与えられた。つまり、人口の1・1%しか有権者ではなかったのね。被選挙権も同額以上の国税を払っている30歳以上の男子で、女子には参政権はない。でも、これで民主主義が実現したと思っていたわけでしょ。
――民主主義とは程遠いですね。
苫米地 結局、戦後になって初めて、すべての成人男女に選挙権が与えられたのね。ところが、衆議院は25歳以上、参議院は30歳以上の男女全員に被選挙権が与えられたことを嫌がる議員は少なくなくて、出馬する時は供託金を出せというルールを作ったわけだ。でも、この供託金は憲法違反だと思わない? 参政権は等しく認められているのに、お金を払わないと選挙に出られないっておかしいよ。それって、資本主義の成れの果て。だから、建前が制限選挙じゃなくなっただけで、普通選挙なんかいまでもしてないというのが実際のところ。被選挙権でいえば、テレビに出ていて知名度が高い人のほうが有利というのも、差別なく政治参加をする権利を認めている憲法に違反している。国に電波を管理されているテレビに出られるか否かが、選挙結果に影響を及ぼすなんておかしいでしょ。だから、俺は昔から、テレビに出た人は3年間ぐらいは選挙に出ちゃダメだと言っているんだよ。
――平等のためには、一方で制限が必要だと。
苫米地 本当の普通選挙にするには、現状から取っ払うべき制限と、新たに掛けないといけない制限がある。でないと、国民が平等にならないんだよ。当然、出自によって選挙が圧倒的に有利になる世襲候補なんて論外だよ。こういう基準を決めることが国会の仕事になるはず。あとで話す「新しい民主主義」とワンセットになるけど、国会の仕事は、みんなで話し合ってルールを作ること。もちろん、すべての国会での議論は、オンラインで国民が見られるようにしなきゃいけないよね。例えば、国会議員が国会議員じゃない人のメモを棒読みなんかしたら、それも憲法違反なんだよ。だけど、多くの官庁の職員たちは、政治家の横に座ってメモ書きを渡してる。政治家はただそれを読むだけ。ということは、選挙で選ばれたはずの政治家は官僚の単なるパペットじゃん(笑)。これも憲法違反なんだよ。多くの人が誤解しているけど、国会で議論していいのは公務員に限るんだよ。
――公務員!? 公務員って官僚などの役人のことですよね?
苫米地 それが間違っているんだって。憲法の第十五条にはこう書いてあるんだよ。「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と。ということは公務員って議員のことじゃん。