【青木理×川端幹人】自民党、検察、警察、週刊誌……腐敗大国ニッポンの最新論点

ジャーナリストの青木理と、編集者の川端幹人。長年、鋭い権力批判を展開してきた「サヨク」な2人が、本年2月号に続き再集結。機能不全に陥り続ける大手メディアに代わり、我が国の権力機構にはびこる看過できないニュースをチェックしてもらうと、出るわ出るわ、不正や欠陥、腐敗の数々。さらに2人が松本人志問題以降、逆風強まる昨今の週刊誌ジャーナリズムを考察すると……。

（写真／石田 寛）

サヨクジャーナリスト 青木理 × サヨク編集者 川端幹人

※「サヨク」は世間の評価です

川端　自民党総裁選からいきたいんだけど、タイミングが最悪なんだよ。この対談は総裁選前なのに、雑誌発売時には新総裁が決まっているという。

青木　でも誰になろうが、自民党の体質は変わらないよ。政治と金の問題でも、複数の候補が口にした政策活動費廃止なんて、ただのごまかし。実際、裏金議員の厳正処分や本丸の企業献金廃止には誰も踏み込まない。小泉進次郎だって、裏金議員は一切お咎めなしと言っているのに等しかった。

川端　進次郎は所詮、菅義偉の傀儡だから。総裁選でも菅政権時代の秘書官やブレーンが協力していたんでしょ。菅に近い田﨑史郎がテレビでやたら進次郎を持ち上げ、ほかの候補をけなしているのもそのあらわれ。

青木　進次郎が最悪なのは、愚鈍な上に、政策が父親の純一郎の新自由主義をそのまま引き継いでいること。解雇規制緩和だって小泉政権で竹中平蔵が言い出したものだからね。親子で非正規雇用を増やし格差社会を激化させるつもりらしい。

川端　他の候補もひどいけどね。河野太郎は同じく解雇規制の緩和に、マイナンバー強制の延長線上で国民全員の確定申告まで言い出した。高市早苗も案の定、ネトウヨ的「日本スゴイ」政策のリバイバルでしかなかった。

青木　高市の政策で最悪なのが「内閣情報局」の創設。スパイごっこに莫大な予算を使っても意味がないのは、今の公安を見れば明らかなのに。政権の意のままに動かせる秘密警察でもつくるつもりなのか。

川端　まあ、ヒトラー礼賛本に推薦文を書くような人間だからね【※1】。あと、高市が問題なのは、安倍晋三の後継者を自任するだけあって、嘘が多いこと。総務相時代の放送法解釈変更のやりとり文書が明るみに出たときも、捏造文書だ、事実なら議員辞職するとまで言ってたのに、総務省の行政文書だったことが判明。統一教会との関係でも言い訳の嘘【※2】があとで発覚したし。政治資金規正法違反隠しの領収証偽造疑惑でも事実無根と強弁したが、身内から矛盾する証言が出てきた。

【※1】高市早苗議員は、1994年に出版された『ヒトラー選挙戦略』へ推薦文を寄せていた。本書は、ユダヤ人人権団体から「ヒトラーを正当化しすぎている」などと批判を受け、発売からわずか2カ月で絶版になっている。

【※2】2022年、高市議員は、旧統一教会系メディア「ビューポイント」に登場していたが、追及に対して、同誌と統一協会との関係を知らなかったと回答。しかし、この「ビューポイント」の記事は旧統一教会系新聞「世界日報」からの転載だと判明。高市議員は「世界日報」には、過去5回場し、統一教会の思想に共鳴する発言をしていた。

青木　石破茂も、リベラルの一部までが期待しているみたいだが、どうかと思うよ。世襲議員という意味では安倍や進次郎などと同じだし、安全保障では超タカ派ですよ。

川端　でも、いまの状況を見ていると、誰が新総裁になっても総選挙やったら、自民党が大勝しそうじゃない。

青木　同じく代表選をやってる野党の立憲民主党も情けないけど、やっぱりマスコミの責任は大きい。特にテレビなんて総裁選を大々的に報じ、「派閥なき選挙」とか「過去最多数の出馬」とか、あれじゃ自民党の宣伝機関だよ。

川端　しかも、メディアは総裁選にかまけて政治と金の問題を追及しなくなった。呆れたのが、自民党の総裁選ポスター「THE MATCH」発表会見。政治資金制度を悪用して親族ぐるみで税優遇を受けていた広報本部長の平井卓也【※3】が会見に出てきたのに、平井を批判したマスコミは皆無だった。

【※3】平井卓也議員は、2020から21年にかけて計1500万円を、その親族3人は計4000万円を平井議員自身が代表を務める党支部に寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けていた。

青木　そもそも岸田首相が総裁選不出馬に追い込まれたのは、旧統一教会との癒着に加え、裏金作りという違法行為を組織的に延々続けていたのが引き金だからね。総裁選でも、そこを最大の焦点にしなければおかしい。

川端　だったら、この対談では、政治と金の問題を蒸し返そうよ。「まだ言ってんの」と冷笑されるのを承知で（笑）。