サイゾーpremium  > 特集  > アイドル  > 【ライブアイドル】業界関係者座談会
第1特集
「ライブアイドル界隈」覆面座談会

拝金主義と二番煎じの横行と志を見失った業界の歪んだ構造 ライブアイドルシーン最前線

+お気に入りに追加

コロナ禍を経て、ライブハウスを拠点に活動するアイドルたちの取り巻く状況は激変。ビジネスモデルは大きく変化し、自転車操業のアイドル運営が増えているという。今の流れが続くと業界は衰退する一途と警鐘を鳴らす関係者に、ライブアイドルシーンの現状を語ってもらった。

[座談会参加者]

A…ライブアイドルマネージャー(39歳)
B…ライブアイドルイベンター(29歳)
C…ライブアイドルプロデューサー(42歳)

2411_005_f_320.jpg
物販などで小金持ちになった最近のアイドル運営はハイブランドのファッションで全身を固めた小ぎれいな若者が多い。それに憧れてアイドル運営を始める若者も少なくない。(絵/藤本康生)

A ライブアイドル界隈の現状を、主にビジネス面から語り合いたいと思うのですが、コロナ以降で、かなり状況も変わりましたよね。

B 音楽業界全体に言えることですが、三密でライブハウスをまともに使えないという状況が、2年ぐらい前から徐々に緩和されて。今ではライブハウス側も、どんどんお客さんを入れちゃえという強気な姿勢になっています。アイドルイベントに限って言うと、平日や土日問わず、月に何十本もやっているライブハウスもめずらしくありません。むしろコロナ前よりもイベント数は増えているかも。

C コロナで落ちた売り上げを回収する必要がありますからね。

A お客さんも自粛期間中はガマンしていただろうし、お金も貯めていたのか、物販は羽振りが良いなと感じます。

B ただアイドルファンの数が増えているかと言えばそうではなくて、単に戻ってきているだけという印象です。

C むしろ数は減っていますよね。あとコロナ以降で大きく変わったのは、CDを作るアイドルがほぼいなくなったこと。コロナ前から減ってはいましたが、特にライブアイドルはCDを作らなくなりましたよね。

A 僕が担当しているアイドルグループは2年前に立ち上げたんですが、最初からCDを作る話は出なかったです。個人的には作りたかったんですが、若い世代はCDプレーヤーすら持っていませんから。メンバーも配信リリースだけで満足しているし、CDに幻想を抱いていないんですよ。

C かつてはCDを作るためにフリーイベントをやりました、CDを作りました、リリイベで各所を回りました、ワンマンライブをやりました、というお金の循環だったのが、コロナによってCDも作れなくなり、運営側はどうしていいのかわからなくなった。そしたらコロナが収束したタイミングで資金繰りが苦しいライブハウス側が「会場費を安くするので使ってくれ」と提案してきて。CDを出さずに、ライブハウスでフリーライブなどをやるようになったんです。

B 最初はキャパの3分の1か2分の1しかお客さんを入れられなかったから、キャパ500人だったら、200人も入れば十分。以前だったら身の丈に合わない会場も安く借りて、イベントが打てるようになったんですよね。

A 安いとはいえ、運営側がライブ会場を借りて黒字にするのはワンマンライブじゃないと難しいんですよね。かといって当時はBさんのように、たくさんイベントを組む人も少なかった。

C じゃあどうしましょうってなったときに、気の合うアイドルさんたちと一緒に3組ぐらいで合同のフリーイベントをやり始めたんですよね。それによってひとつの新しい道筋がライブアイドル界隈の中にでき始めたと。

A ただ会場が500人のところに200人しか入らないと、単純計算で2分の1以下しか収入が得られない。それを1にするために、週に1回のイベントが2回になり、3回になり。土日のどちらか1回やっていたイベントが土日の両方になりと数が増えていった。

B その後、キャパ規制がなくなったとき、僕のようなイベンターに、ライブハウス側が「とにかくハコを使ってほしい」と訴えてきたんです。それでアイドルイベントの数を増やしていく中で、イベンターの数も増えました。

A 運営側にとっては会場費を出さなくても済むので、お声がけいただいたイベンターさんに乗っかってライブをやり始めたら、リリイベをやらなくても良い新しい形が生まれてしまった。

C イベンターさんからのお声がけが増えてくると、日曜日に1日2公演とかをやり始める。でも1公演でも2公演でも、それほど収入に差はないんですよね。足して一緒か、ちょっと少ないぐらい。でもイベントにたくさん出ないと収入が減るので、悪い循環に入ってしまっている気がします。

B どうして悪循環に陥っているんですか?

2411_002_f_320.jpg
推しと2ショットで撮影できるチェキ会。ルールは運営によって異なるが、恋人さながらに距離感を詰めて来るアイドルも多く、キャバクラのように沼ってしまうファンも多い。(絵/藤本康生)

C さっきも話しましたが、ファンの母数が増えたわけではなく、むしろ減っているからです。それで何が起きているかというと、2公演をしても同じファンが来るだけ。お客さんとしては入場料に払うお金が増えて、物販やグッズにお金を回せなくなっているんです。Bさんの前で言うのも申し訳ないですが、イベンターさんは儲かるけど運営としては痛し痒しで……。

A 今の状況がまずいことに気付いている人も一部いますが、ライブアイドル界隈は長期的な視点で物事を見ていない人が多いので、このシステムに疑問を抱いていないんですよね。とりあえずライブイベントに出れば日銭は稼げますから。

C 若い運営の方に多いんですが、アイドルグループを育てるという感覚がないんですよ。極端に言えば、1億円稼ぐアイドルグループを、時間をかけて育てるよりも、適当に女の子を集めて、1000万円稼ぐアイドルグループを10組作ればいいという考え方。

A 昨今、アイドルのセカンドキャリアが取り沙汰される機会も増えましたが、それは大手事務所の話。ライブアイドル界隈で、女の子たちの将来まで考えている運営は少数派ですよね。「将来は女優になりたいです」なんて言い出したら、「他のところに行ってください。うちは新しい子を入れるので」と突き放す。でも、こんな自転車操業のようなやり方が続くとは思えないんですよね。すでに淘汰は始まっていますが、さらに今年から来年にかけて次々とアイドルグループが解散していくと思います。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年11月号

サヨクおじさんが物申す 腐敗大国ニッポンの最新論点

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ