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萱野稔人と巡る超・人間学【第37回】

投資行動と感情の罠

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――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。

20年連続で勝ち続け、総利益100億円を達成した個人投資家テスタ氏。投資に勝つための鍵は「感情をコントロールする力」と話す彼の投資哲学と、株式市場から見える人間の行動原理を探る。

今月のゲスト
テスタ[個人投資家]

2005年、フリーターをしながら貯めた300万円を元手に専業投資家として株式投資を開始。デイトレードからスタートし、資産の拡大に伴って中長期投資に移行した後も常にプラスの運用成績を維持。2024年2月に累計の総利益100億円を達成。カリスマ的な個人投資家として数多くのメディアに出演するほか、児童養護施設への寄付などの慈善活動も積極的に行っている。

萱野 今回お越しいただいたのは個人投資家のテスタさんです。「サイゾー」読者の中には投資の世界に馴染みのない人も少なくないかもしれませんが、テスタさんは投資の世界では知らない人のいないカリスマ的存在のひとりで、今年2月には累計利益が100億円を突破したことが話題になりました。そう聞けば、株をまったくやったことがない人でも、そのすごさの一端が感じられるのではないでしょうか。

テスタ 100億円というのは税引き前の総利益なんですよ。生活費や使ったお金を差し引くと、実際の資産的には7割程度しか残っていません。

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安倍政権によるアベノミクスは賛否両論が巻き起こったが……。(写真/GettyImages)

萱野 テスタさんは株式投資を始めた2005年から2023年までその内訳を公開していて、それを見ると収支がマイナスの年がありません。これも驚異的な運用実績です。今回はそんなテスタさんにお話をうかがいながら、投資についての考えや、マーケットを通じて見えてくる人間の行動原理といったものを探っていきたいと思います。まず、テスタさんは300万円の資金を元手に投資を始めたとのことですが、最初から勝てたわけではないそうですね。

テスタ 最初の2カ月が収支マイナスで、収支がプラスになったのは3カ月目からです。ただ、そのマイナスを回収するまでに時間がかかり、生活費もすべて込みでプラスに転じたのは半年後くらいだったと思います。

萱野 半年で収支をプラスにできたこと自体、なかなか成しえないことで、テスタさんの投資の才能を示しているように思います。ただ、テスタさん自身は投資においては才能より努力が重要だとおっしゃっていますね。

テスタ もちろん、投資に向いている人と向いていない人というのはあると思います。ただ、何事においても才能と同じくらいかそれ以上に重要なのは、どれだけ努力できるかだと考えています。投資を始めた当時の僕も眠るとき以外は常にパソコンの前にいて、食事もディスプレイを見ながらとっていました。そのくらい株のことだけを考え続けていたんですね。その頃は自分の周りに株をやっている人はいませんでしたし、今ほどSNSが発達していなかったので、社会との接点がほとんどないんですよ。だから、自分がこれで生活をしていけるのか、そもそもこの道が正しいのかどうかすらわからず、不安とプレッシャーで毎朝吐いてました。今でこそ投資を楽しみながらやれていますが、最初の何年間かはとてもそんな余裕はなかったです。日々の収支で喜んだり悲しかったりはあるのですが、楽しいと思うことはできなかったですね。勝つためにどうすればいいか、それだけをひたすら考え続けていました。

萱野 そうした暗中模索の日々から脱却できたのはいつ頃ですか。

テスタ 2013年、アベノミクスが始まった頃です。その年は「ここが人生を決める勝負の年だ」と肌で感じ、ものすごく集中して取り組みました。その結果、資産がいわゆる生涯賃金を超えたんです。そこからさらに資産を拡大して5億円ほどになったときに「これで生きていける」と初めて思えました。それまでは途中で勝てなくなって消えていった人を多く見てきたので、次は自分の番かもしれないという不安が常にあり、ようやくその不安から解放されたと感じましたね。メンタル的には一度楽になった瞬間でした。

萱野 投資で利益を出し続けることは至難の業であり、投資だけで生計を立てる専業投資家はまさに茨の道です。にもかかわらず、なぜテスタさんは最初から専業投資家を選ばれたのでしょうか。

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