近年、坂道シリーズやK-POP、そして第三勢力の目覚ましい成長ぶりが目立つアイドル業界。そして、「推し活」という名目で今は「推し」にカネを落とすことが推奨されている。かつて、「オタク」とさげすまれた者たちに対して、世間とアイドル業界は一体何を企んでいるのだろうか?
(絵/Hisae Sasaki[vision track])
どのグループの誰があのCMに出てたっけ?
◉坂道シリーズ
代表例:乃木坂46、櫻坂46(旧・欅坂46)、日向坂46(旧・けやき坂46)
2011年、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)と秋元康の合同プロデュースで「AKB48公式ライバル」という触れ込みで登場した乃木坂46。それに続くグループとして、15年に現在の櫻坂46と日向坂46が誕生。なお23年デビューの「僕が見たかった青空」は乃木坂46のライバルという設定だった。
(絵/Hisae Sasaki[vision track])
ネトウヨたちをも虜にした圧倒的Power
◉K-POP
代表例:IVE、LE SSERAFIM、NewJeans
TWICEを筆頭にK-POPの多国籍化が認められだした2020年以降、LE SSERAFIMのSAKURA(元・HT48メンバーの宮脇咲良)など、日本人メンバーも所属するグループが急増。また、NewJeansは旧来のファン層以外からも高い評価を受け、昨年のSUMMER SONICに出演。観客が次々と熱中症で倒れた。
(絵/Hisae Sasaki[vision track])
TikTokでバズればワンチャンあるよ!
◉大手事務所
代表例:FRUITS ZIPPER、ときめき宣伝部
エイベックス、スターダストプロモーション、アソビシステムなど大手事務所のアイドルはももいろクローバーZ以降、なかなかパッとしなかったが、近年はFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」や超ときめき♡宣伝部の「最上級にかわいいの!」の振り付けがTikTokでバイラルヒット。ブレイクの糸口をつかんだ。
(絵/Hisae Sasaki[vision track])
視聴者たちからの応援が絶対条件
◉サバイバルオーディション番組
代表例:ME:I、IS:SUE
JO1とINI(ともに男性アイドルグループ)を輩出したサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN(通称、日プ)』(TBS系)の第3シーズンで、女性アイドルグループが誕生。同番組は視聴者の国民投票によって勝ち残る者が決まるということで、視聴者は「国プ(国民プロデューサー)」と呼ばれる。
今年もあと2カ月もすればNHK『紅白歌合戦』の出演者が発表される。故ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、旧ジャニーズ事務所の出演者が皆無となった昨年の同番組で、視聴者の記憶に強く残ったのはYOASOBIの「アイドル」のパフォーマンスだろう。
アニメ『推しの子』の主題歌で、櫻坂46、JO1、SEVENTEEN、NiziU、NewJeans、乃木坂46、LE SSERAFIMなど、男女問わず日韓アイドルのコラボレーションが実現した、異例のステージだった。
“旧ジャニーズ以外のアイドル”が一堂に会したことで、世間には驚きをもって迎えられたが、その一方で「今はこんなにもアイドルがいるのか……」と感じた視聴者は多かったかもしれない。
確かに80年代のおニャン子クラブ、00年代のモーニング娘。による一強時代、そして10年代にAKB48の人気と同時に「アイドル戦国時代」に突入した結果、コロナ禍を挟んだ20年代も、アイドルたちが群雄割拠している状況は大きくは変わらない。
10年代と異なるのはアイドルを応援する「推し活」という言葉が一般社会に大きく浸透したことだろう。「推し」のアクリルスタンドと一緒に旅行や食事をして写真に収めたり、自宅の“祭壇”に推しのグッズを飾ったり、推しの担当カラーと同じ色の服を着る……。このような推し活には、かつての「オタク」あるいは「ヲタク」のような自嘲やさげすみはない。むしろ、マスメディアで「推しがいるのはよいこと」と喧伝されているほどだ。
さらに最近は同性のアイドルを推すことを公言している女性も、ごく一般的な存在となっている。一体、アイドルを取り巻く環境に、何が起きているのか?