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2024年に入り、タイでは統合型リゾート(IR)を含むカジノ合法化に向けた動きが加速しています。カジノが合法化された場合、物価が比較的安いタイでは、1000円オンラインカジノのような手頃な価格で楽しめるカジノを目的として訪れる旅行者が増える可能性があります。

しかし、このような肯定的な見方がある一方で、ギャンブル依存症や社会の風紀の乱れといった懸念も存在しています。本記事では、タイ文化と賭博の関係、カジノ合法化に向けた取り組みへの経緯やその目的などについてわかりやすく解説します。

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タイ文化と賭博

タイでは、古くから賭博が娯楽の一部として行われており、現在でも文化の一部として根強く存在しています。タイが「シャム」と呼ばれていた時代、あるいはそれ以前から、今でも存在する闘鶏や観賞魚のベタを戦わせる闘魚などの賭博が社会に浸透していたようです。


しかし、現在は1935年に施行された賭博禁止法により、公営の競馬と政府公認の宝くじを除く賭博は禁じられています。それにもかかわらず、実際にはサッカーなどのスポーツ賭博や闇宝くじ、カード賭博といった違法賭博が各地で行われているのが現状です。


このような状況から、タイ国内では国民の一定割合がギャンブル依存症に陥っているとの懸念が高まっています。

さらに、Pasuk Phongpaichit氏らの1998年の研究「Guns, Girls, Gambling, Ganja: Thailand's Illegal Economy and Public Policy」によれば、タイの違法な経済活動による収入はGDPの8%から13%に相当するとされており、この違法経済の主要な部分を占めているのは、売春業に次いでギャンブル産業であることが明らかになりました。

この研究結果は、賭博が社会的な問題を引き起こす一方で、同時に無視できない経済的影響をもたらしていることを示唆しています。

タイにおけるカジノ合法化の経緯と現状

タイでは、過去にもカジノ合法化に向けた議論が行われてきましたが、世論の反対により計画が進展しませんでした。特に2021年の世論調査では、カジノ合法化に賛成する人は少数派で、反対派が多数を占めていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響による観光需要の減少と税収低下を背景に、タイ政府は2023年10月、カジノ合法化の可能性を検討するための委員会を設立しました。この15人の閣僚を含む60人の国会議員から成る諮問委員会は、経済効果や規制の枠組みなど様々な側面を考慮しながら、カジノ合法化に関する調査・検討を任務としています。これにより、タイでのカジノ合法化に向けた動きが再び活発化し始めました。


そして、 2024年3月に諮問委員会が、関連法整備に関する提案を下院に提出し、同月28日には下院議員の大多数がこの提案を支持しました。

政府はこれらのカジノのための法的枠組みを確立するための包括的な法案を起草するよう指示されており、 6月には、タイ政府報道官Chai Wacharonke氏は閣議後の記者会見で、Srettha Thavisin首相が財務省に法案の起草を命じ、Julapun Amornvivat財務副大臣が準備を主導すると述べています。

タイ政府がカジノ合法化を進める目的

タイ政府のカジノ合法化を進める目的は、主に観光産業の活性化と経済成長です。この計画は、単に外国人観光客数の増加を目指すだけでなく、近年、その重要性を認識しているMICE産業(会議、展示会、インセンティブ旅行、国際会議などのビジネスイベント)との相乗効果も期待しています。この戦略によって、さらなる経済成長の実現が期待されています。

さらに、カジノ合法化は外国からの投資を呼び込むことも期待されています。現在提案されているタイのカジノ税率は17%で、これはアジアの競合カジノ国(日本は30%)と比較して非常に低く設定されており、外国企業にとって魅力的です。すでに一部のメディアでは、ラスベガス・サンズなどの国際的なカジノ運営企業がタイ市場への進出を検討していると報じられています。

マレーシアの大手銀行グループであるMaybankの証券部門であるMaybank Securities(タイランド)の予測によると、カジノを含む統合型リゾート(IR)の開設により、年間でGDPの約1%に相当する1,870億バーツの収入が見込まれています。この予測は、IRがタイ経済に与える潜在的な影響の大きさを示唆しています。


タイのカジノ合法化への懸念

タイ政府はカジノ合法化を通じて経済成長を加速させる自信を示していますが、専門家や大学の有識者からは社会的な悪影響を懸念する声が上がっています。2024年8月現在、政府関係筋によれば、財務省はすでにカジノ合法化に関する草案を完成させ、タイ人の入場に関しては、20歳以上であることと1人あたり5000バーツ(約20,000円)の入場料が必要になるとの見通しを、一部のメディアが報じています。

これらの規制は社会的リスクを軽減する狙いがありますが、タイ人の入場を完全に禁止しているわけではないため、むしろ問題が深刻化する可能性があります。タイでは違法薬物の入手が容易で依存症が社会問題となっており、カジノの利用が可能になればギャンブル依存症が増加するリスクがあります。さらに、タイの家計債務は対GDP比で9割を超えており、ギャンブル依存症に加えて個人破産の増加も懸念されています。

国際的な視点と今後


タイのカジノ合法化の動きは、欧米の大手カジノ運営企業だけでなく、投資家や観光業界も、国際的にも大きな注目を集めています。


具体的な合法化の日程はまだ発表されていませんが、関係者の発言によると、タイは日本の大阪で予定されている統合型リゾート(IR)の開業(2030年)よりも早い時期での開業を目指しているとのこと。また、周辺諸国では、タイのカジノ産業参入による競争激化を懸念する声も上がっています。


タイのカジノ合法化に関する最終決断と、その後の展開に世界中の注目が集まっています。合法化された場合、タイがどのようにカジノ産業を発展させつつ、社会的懸念に対処していくかが重要な課題となります。タイの取り組みは、カジノ産業と社会との共存の新たなモデルケースとなる可能性を秘めており、その成否は他国の政策にも影響を与えるかもしれません。

※本稿はインフォメーションです。



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