――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。
『HOW TO BLOW UP』
環境を破壊する石油パイプラインを“爆破”するためにネットで集められた素人テロ集団……。アメリカの今が透けて見えるクライム・サスペンス。
監督:ダニエル・ゴールドハーバー、出演:アリエラ・ベアラー、サッシャ・レインほか。全国ロードショー。
『HOW TO BLOW UP(爆破する方法)』って、何を?
実はこの映画の原題は『How to Blow Up a Pipeline(パイプラインを破壊する方法)』。エコロジストの男女が石油化学企業への抗議として石油パイプラインを爆破しようとする。
原作はスウェーデンの社会活動家で、ルンド大学の准教授でもあるアンドレアス・マルムが書いたエッセイ『パイプライン爆破法―燃える地球でいかに闘うか』(月曜社)。「燃える地球」とは年々温暖化が進む世界を意味している。マルムはこう主張する。CO2(二酸化炭素)による地球温暖化は世界各地に異常気象を引き起こしているが、石油石炭産業は縮小する気配もない。これ以上、平和的な抗議運動を続けていてもらちが明かない。実力行使しかない。石油パイプラインを破壊しよう。それで石油産業のリスクやコストが大きくなれば、彼らも別のエネルギーに移行していくだろう――。
これはエコ・テロリズムのススメだが、書名に反して爆破の具体的な方法は書かれていない。ところが映画『HOW TO BLOW UP』は、それをやって見せる。当然、「テロの扇動だ」と批判を浴びた。
しかし監督のダニエル・ゴールドハーバーは、パイプライン爆破犯を英雄視しない。かといって悪として糾弾するわけでもない。参考にしたのは『オーシャンズ11』。金庫破りやハッカーなど11人のプロが集まってラスベガスのカジノの売り上げを強奪するクライム・ムービー。強奪行為自体の善悪は問わず、ただその計画をリアルに描写する。
その過程で、彼らが何者で、なぜテロに加わったのかが、回想で描かれる。