――今や世界的な人気ジャンルにまで上り詰めたご存知K-POP。「BTSは知ってる」なんて言ったところで時代錯誤もいいところ。本稿では音楽プロデューサーのxansei®氏を招き、K-POPの緻密なサウンドプロダクションについて分析してみた。
xansei®(ザンセイ)
福岡県生まれのプロデューサー/アーティスト。下積み時代をアトランタで過ごし、現在はLAを拠点に活動。これまでにNLEチョッパーやラトーといった海外アーティストから、XGや半熟卵っちなどの国内のアーティスト、またXEONWORLDVIEWでは自らメンバーとしてもアーティスト活動を行っている。Instagram〈yungxansei〉
NewJeansの所属事務所〈ADOR〉のプロデューサー:ミン・ヒジンと、その親会社である〈HYBE〉との裁判騒動が記憶に新しいK-POP業界。昨年のBLACKPINK、今年はLE SSERAFIMが世界的音楽フェス『Coachella』に出演するなど、グローバルな活躍に拍車がかかっている。なぜ我々は今もなお変わらずK-POPのサウンドには魅了されるのか? 韓国を拠点に活動する7人組ガールズグループ・XGの楽曲「SHOOTING STAR」を手がけたプロデューサーのXansei®氏に協力を仰ぎ、移り変わりの激しいK-POPのサウンド構造を分析してみた。
まず、少女時代やKARA、BIGBANGなど“日本で売れた”K-POP第2世代を経て、2010年代にデビューしたBTSやBLACKPINK、TWICEなどは世界進出を見据えた活動を当初から視野に入れていた。この頃のサウンドはUSメインストリームのヒップホップやR&B、EDMなどのダンスミュージックを積極的に取り入れたものが多いが、独特なブランディングと音楽性で独自の道を進んでいた5人組ガールズグループ・Red Velvet「Bad Boy」(18年)がリマーカブルな作品であったと話す。
xansei® 「『Bad Boy』のサウンドの構造は、今をときめくNewJeansやILLITのような楽曲の基盤になっていると感じます。王道のK-POPはいろんな要素を詰め込みすぎた曲が多く、実はメロディが覚えにくい。『Bad Boy』は楽曲におけるメロディの重要さを気づかせてくれた曲で、僕がプロデュースしたXG『SHOOTING STAR』も要素を詰め込みすぎず1曲としての世界観を大切にした曲でもあります」
「彼女たちはヒップホップなのか?」論争が巻き起こるほど、国内外のヘッズを唸らせるラップスキルが話題の7人組グループがXG。(写真:Brendon Thorne/Getty Images for SXSW Sydney)
XGとはエイベックス傘下の韓国法人〈XGALX〉に所属する全員日本国籍のガールズグループ。NiziUやJO1、ME:Iのように日韓合同オーディションによって生まれたグループではなく、エイベックスが2017年から5年をかけて育成したハイブリッドなグループである。高水準のパフォーマンスとサウンド、最新曲「WOKE UP」は全編ラップで構成され、そのスキルはヒップホップ界隈でも話題にあがり、日本や韓国をメインに世界でじわじわと頭角を現している。しかし、厳密に言えばXGはK-POPではない。自らを“X-POP”であると謳う彼女たちが、日本と韓国を中心に世界から注目され始めているのは非常に興味深い──。話をリアルなK-POPに戻すと、ここ数年のK-POPの話をする際に避けて通ることができないのが、前述したNewJeansの登場だ。