――今の世の中、理解不能な言動を取ったり、主体性がない判断をする人が多くないか? 個が尊重される多様性社会といえば聞こえがいいが、アイツやコイツや、そして僕たちも、実は無自覚なまま、特定の権力者や情報に操られる「洗脳状態」になってはいないか? だから、脱洗脳のスペシャリストである苫米地英人博士に聞いてみたい。「僕たちは洗脳されているんですか?」
11月、創価学会を巨大宗教団体に育てた池田大作名誉会長が死去。同氏は国内の会員数を公称800万世帯以上にまで拡大し、192カ国の国や地域に進出。公明党を結成し、熱心な信者を支持層として取り込んだ。ここまでの拡大路線を歩めた裏には、「洗脳する力」やそれに類する特殊な技術があったのか? 創価学会員は洗脳されているといえるのか?
──先日、創価学会の池田大作氏が亡くなって、いろいろ物議を醸しています。
苫米地 俺も「法華一乗、一大事因縁を学ぶものとして謹んでご冥福を祈ります」とTwitter(現X)に書いたら、いろんな文句を言われたよ、「苫米地は創価学会に甘い」とか。こういう反応を見ると「創価学会って嫌われ者?」って思うよね(笑)。
――まあ、影響力は大きいですよね。
苫米地 だけど、亡くなったんだよ? 追悼の意を表するのは当たり前だし、特に俺は天台に僧籍のある身。その立場から言えば、「創価学会は法華経を広めてくれてありがとう」なんだよね。冥福を祈るのは、ますます当たり前なんだけど。
――ただ、博士はこれまで各所で「宗教と洗脳」について語ってこられたし、オウム真理教とも戦ってきてもいるので、どうしても特別な見方を期待されるんでしょうね。
苫米地 そういうこと? でも、「洗脳」ということでいえば、創価学会は当然そうだけど、浄土真宗だって日蓮宗だって、みんな洗脳集団だよ。キリスト教だって、ユダヤ教だって。前回も話した通り、洗脳の定義は「第三者の利益のために、強制力を用いて思考や行動を操作すること」。宗教でいちばん利益を得ているのは教団でしょ。ただし、その宗教内では、信仰を説くことは「信者のための教育」とされているだけ。外側から見れば、教団のためにお金と時間を献上させられている洗脳状態。
――となると、ここまで巨大化した創価学会には特殊な洗脳技術があるんですか?
苫米地 いや、ないって。俺はね、ある大きな宗教団体の部長さんクラスから「洗脳の仕方を教えてください。うちの信者が全然言うことを聞かないんです」って相談されたことがあるよ(笑)。話すと長くなるから、詳細は俺の『宗教の秘密』(PHP研究所)とかを読んでほしいけど、今の宗教は、宗教というシステムの中に洗脳技術が組み込まれているから、個々の人たちに洗脳能力なんてないんだよ。創価学会もそう。あえて持っている力をいえば、「信じれば救済される」と本当に思わせるブッダが生んだパワーかな。
――ではなぜ、創価学会はこれほどまでの影響力を持てたんですか? 公明党は政権与党ですよ?
苫米地 公明党が自民党の言いなりなのは「いつでも宗教団体にも税金かけるぜ」って脅しを受けてるからでしょ。
――ん? 公明が自民の言いなりですか!?
苫米地 そうだよ。だって宗教法人が課税対象となった瞬間に、創価学会はヤバいでしょ。その脅しがあるから、公明党は連立になって、自民の言うことをずっと聞いてるわけだ。
――逆だと思ってました。公明党が組織票を持ってるから、自民が連立を組むんだと。
苫米地 違う(笑)。今は、宗教が持つ信仰力よりも金の力のほうが強いんだよ。つまり、今の日本は“お金(カネ)教”に支配された世界なのね。そこをみんな勘違いしてるよね。だから、公明党だって「課税するぞ」と言われたら従うしかないわけだ。
――ということは、自民党がある意味いちばん強い団体!?
苫米地 洗脳力は相当あるんじゃない? 特に地方に行くと「だいたい自民党に入れておくと安心」って言う人が多い。つまり、なんだかんだ現状が経済的には守られていると思っているわけで、戦後の自民党体制の中で、どれだけ「カネこそ大事」という教えを植え付けられてきたかという話。逆にお金がない人たちは自民党に入れたがらない。