サイゾーpremium  > 連載  > 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」  > 町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第171回

――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出演したマイケル・J・フォックスの半生と闘病生活に迫るドキュメンタリー。

監督:デイビス・グッゲンハイム、出演:マイケル・J・フォックスほか。AppleTV+で配信中。


「落ち着きのない子どもだった。いつも休むことなく走り回っていた」

マイケル・J・フォックスはドキュメンタリー『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』でそう回想する。この映画で彼は、初主演作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)でいきなり世界的な大スターになるが、難病パーキンソン病を発病し、苦難と戦い続けた人生を語っていく。

マイケルはエネルギーの塊のように元気な少年だったが、163センチから身長が伸びず、イジメられていった。そんな彼が見つけた居場所は演劇部。マイケルは顔中の筋肉を使って感情を表現して観客を笑わせ、自分の進む先を確信した。

マイケルは父の運転する自動車でカナダからハリウッドに乗り込んだ。何のコネも当てもなく、貧しさのなかでひたすらオーディションを受け続け、何年も過ぎた。

ついに掴んだ仕事はテレビコメディ『ファミリータイズ』。マイケルの役は60年代カウンターカルチャーの中で青春を過ごした元ヒッピーの両親の間に生まれた息子。彼はスピリチュアルでラブ&ピースな両親を皮肉り、物質主義と共和党を支持する80年代を体現したようなお調子者だった。

『ファミリータイズ』はシットコム(シチュエーション・コメディ)で、観客を入れたステージで演じ、観客が爆笑するまで何パターンも収録する。マイケルは次々繰り出すアドリブで、ショーをかっさらった。

彼に目をつけたのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のスタッフ。すでに撮影が始まっていたが、主演のエリック・ストルツの演技がどうも弾けないので困っていた彼らは、ストルツを降ろしてマイケルをキャスティング。それは吉と出た。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は映画史に残る大ヒット作となった。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケルは劇中の現在(85年)から30年前の1955年にタイムスリップし、ロックンロール誕生の現場に居合わせる。そのロックンロールがカウンターカルチャーを生むことになるのだが……。

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