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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第170回

【ウーマン・トーキング】虐げられる女性は本当の自由を手に入れられるか?

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――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『ウーマン・トーキング』

舞台となる2010年のとある村では、女性が夜な夜な男性にレイプされていた。だが、それは「作り話」とされ、表に出ることはなかった。そんなある日、実際の犯罪だったことが判明、犯人の保釈を求め、村の男たちは街に向かった。その時間は2日間、果たして女性たちは……。

監督:サラ・ポーリー、出演:ルーニー・マーラほか。6月2日、全国公開。


「『ウーマン・トーキング(原題:Women Talking 意見を言う女たち)』なんてタイトルでごめんね」

2023年度アカデミー賞で脚色賞を獲ったサラ・ポーリーは、アカデミー受賞者の女性率の少なさを皮肉って言った。

『ウーマン・トーキング』は、厳格なキリスト教徒の村が舞台。女性たちは夜、眠っている間に何者かにレイプされ続けていた。男たちは「それはサタンの仕業だ」「女たちの妄想だ」などと言っていたが、ついに犯人が家に侵入する現場を押さえられ、近くの街で裁判を受けることになった。その保釈を求めて村の男たちは全員、街に行った。

2日間、男たちが留守の間、これからどうすべきか、村の女性たちは会議する。

「これを隠蔽していた男たちを絶対に許さない」。サロメ(クレア・フォイ)は言う。彼女はレイピストに性病を感染させられ、幼い娘も犯された。「男たちと戦おう」

「負けたらどうするの? 屈服させられて、彼らを許すよう強いられるよ」

そう言うマリチェ(ジェシー・バックリー)は、暴力的な夫にいつも殴られている。

「でも、強要された許しって許しなの?」

オーナ(ルーニー・マーラ)は問う。彼女はレイピストの子どもを妊娠している。

「主イエスが降臨した時、私たちは村にいなきゃ」とマリチェは言う。村民は最後の審判を信じるから、このように厳格で質素な暮らしをしているのだ。

「神の国に入れないかもしれない」と、信心深いアガタ(ジュディス・アイヴィー)もおびえる。

「来世よりも、今の人生のほうが大切じゃないの?」

オーナは本質的なことを言ってしまう。

この討議の書記は、村に唯一残った男性オーガスト(ベン・ウィショー)。なぜなら、この村の女性は読み書きを学ぶことすら許されていないから。彼女らは、自分たちでは読むことができない聖書を信じている。

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