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第1特集
音楽ビジネスはどう変わるか

The NFT Recordsが見据える“推し”とWeb3とブロックチェーン

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――Z世代に親和性が高いともいわれる“推し”文化。特定のアーティストを“推す”ことで自己表現を高めるカルチャーであるが、ここではZ世代に向けたマーケティングについて「The NFT Records」代表・神名秀紀氏に話を聞いた。

――まず始めに、2021年に神名さんが立ち上げた「The NFT Records」について、どのようなサービスなのかを教えてください。

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The NFT RecordsのHP。

神名秀紀(以下、神名) 「The NFT Records」は音楽のNFTを販売するマーケットプレイスで、1次販売と購入者がサイト上で転売する2次販売が可能です。NFTとは、所有権を証明する唯一無二の代替不可能なトークンであり、NFTを発行することで、所有者の情報がブロックチェーン上に記録され続けます。ブロックチェーンのシステムは、エイベックス社と共同開発した「A trust」を採用しており、これはデジタルコンテンツの所有を証明する登記簿のようなサービスです。

NFT販売の仕方は大きく分けて2つあり、オークション制と固定価格での個数限定販売です。楽曲やジャケット画像、動画コンテンツをひとつのパッケージとして販売していて、これまでにも伝説的ヘビメタバンド・LOUDNESSやラッパーのSEAMO、SKE48のコラボレーションユニット・シャチフレなど、さまざまなアーティストがNFT商品をドロップしています。現時点では、「OpenSea」といったほかのNFTマーケットプレイスと接続していないプライベートチェーンとして開発しています。また、NFTマーケットでは暗号通貨での売買が一般的ですが、「The NFT Records」ではクレジットカード決済という古典的な販売方法を採っています。というのも、やはり現時点で暗号通貨やNFTはマーケットとしてまだ成熟していない部分があり、いち音楽ファンが好きなアーティストの作品を買うためにNFTマーケットに参入するのはハードルが高い状況なので。

――「OpenSea」や「SuperRare」など、近年では国内外で数多くのNFTマーケットが登場していますが、音楽専門の「The NFT Records」を立ち上げた理由はなんでしょう?

神名 ブロックチェーン技術には2017年頃から注目していて、特に(グロックチェーン・プラットフォームの)イーサリアムを活用したゲーム「CryptoKitties」に衝撃を受けました。当時はまだ“NFT”という言葉もあまり使われていなかったと思いますが、「CryptoKitties」は猫をモチーフにしたコレクタブルNFTで、ゲーム内で得られる1点ものの猫の画像が1枚数万円で実際に売買されていました。そこからWeb3界隈でもNFTは盛り上がりを見せましたが、扱うものとしてはアートが圧倒的に多かった。ですから、これを音楽でやったら面白いと思ったんです。

iPodやダウンロードサービス、サブスクリプションなど、音楽業界はこれまで新しいサービスの形やシステムを切り開いてきましたが、NFTの導入ではなぜか遅れてしまっている状況でした。そこで、音楽×NFTにはまだ伸びしろがある、と考えてサービスを始めました。

――今回の特集は「Z世代」ということで、最先端であるNFTやWeb3といった分野とZ世代の親和性をうかがえればと考えています。「The NFT Records」のターゲット層は?

神名 「The NFT Records」は、特にZ世代を意識したものではなく、ストリーミング配信などで音楽の価値が希薄化している中、アーティストとファンのつながりというものを現代版にアップデートして価値を持たせるという点に注目して始めています。ただ結果として、デジタルコンテンツということで、Z世代を含む若い層の方々にも受け入れられた点はあると思います。

一方で、現状のWeb3界隈ではZ世代よりももう少し上の世代の人が目立っています。NFTマーケットで成功したアーティストとしても、日本では約13億円の取引額を弾き出した「新星ギャルバース」や、1枚のイラストが約600万円で落札されたイラストレーターのさいとうなおきさんなどは、Z世代よりも少し上の世代です。Z世代でいうと、元レペゼン地球のRepezen FoxxがZ世代のファンに向けてライブでNFTを配ったり、早くから独自チェーン・トークンの開発に取り組んでいたAstar Network創業者の渡辺創太さんの動きに注目していますが、まだプレイヤーは多くない印象です。

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