――韓国では、「Z世代」という呼称よりも、ミレニアル世代と合わせて「MZ世代」としてくくられて語られることが多いという。そして世界と同様、政治家、経営者、ラッパー、YouTuberなどさまざまなジャンルのタレントが出現しているようだ。日本だけでなく世界よりも幅広い年齢でマーケティングの対象となっている韓国若者論の実情を紹介しよう。
韓国のトレンドを予測する『トレンドMZ2019』(20slab)の2019年度版といったところ。2018年11月22日発売。
日本と同じく各世代に対してさまざまな呼称がある韓国だが、やはり「ベビーブーマー世代」「X世代」「M世代」「Z世代」などの世代区分がポピュラーだ。
韓国のベビーブーマー世代は朝鮮戦争以降、人口が爆発的に増加した1955~64年頃に生まれた世代を指す。60年代前半まで最貧困国のひとつだった韓国では「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済発展が起きるが、その社会の変貌を学校や職場で直接的に体験、もしくは担ったのがこのベビーブーマー世代だ。なお日本の第一次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」よりは一世代下で、どちらかというと「しらけ世代(だいたい50年~65年生まれあたり)」に近しい年齢帯である。
一方、X世代は65~79年頃に生まれた世代とされる。高度経済成長のなかで育ち、軍事独裁政権の鬱屈から解放された90年代、すなわち“民主化の春”を20代で謳歌した。それまでの全体主義的な文化を拒否し、個性をベースにした新たな大衆文化の礎を築きあげた世代でもある。ただし、97年に起きたアジア通貨危機(IMF危機)と韓国経済の破綻によって、前代未聞の就職難にもさらされた。08年のリーマンショックによる経済不況の余波も露骨に受けており、格差が目立つ世代ともされている。日本の「バブル世代」や「氷河期世代」を合わせたイメージだ。
そうした中で現在、韓国ではそれ以降の世代について「Y世代(ミレニアル世代)」「Z世代」という区分よりも、「MZ世代(MZ세대/エムジーセデ)」と一括りにした言葉を用いて評されることが多くなっている。
そもそも韓国社会では西欧文化をキャッチアップしようとする傾向が強く、一部企業やメディアにおいてY世代、Z世代という言葉も早くから使われてきた。それらがMZ世代という言葉となり決定的に定着し始めたのは、18年頃からだとされている。
当時、20代を専門的に研究する組織・20slabが『トレンドMZ2019』という書籍を発刊。その中で、MZ世代という言葉を強調した。それを発端に、韓国ではマスメディアを中心に「デジタル文化に慣れ親しんだ世代」「脱政治化性向がより強い世代」などの文脈で、MZ世代という言葉が広く使われるようになっていった。
韓国政府省庁である統計庁が22年に公表した資料によると、81年から10年に生まれた韓国国内のMZ世代の数は約1629万9000人で人口の32.5%を占める。ミレニアル世代1033万人(20.6%)、Z世代596万9000人(11.9%)という内訳だ。MZ世代は総労働力人口比でみると45%(約1250万人)に達し、首都・ソウルに住む人口としては約343万人、35.5%を占めもっとも多い世代集団となっている。
韓国の大企業において20〜30代が占める割合は約60%、IT業界やスタートアップでは80%に達するケースもある。また国内100大企業のMZ世代役員は19年に28人だったが、21年には64人まで急増している。日本より人口における“MZ世代”の構成比率は低いが、経済活動を担う人口しかり、社会における存在感という意味では決して無視できない世代となっているのだ。