――今や世界人口の30%以上を占め、その消費行動にも注目が集まるZ世代。世界のビジネスの花形であり、流行の最先端を走るラグジュアリーブランドは、Z世代に対してどのようなマーケティングを行っているのだろうか。世界のラグジュアリーブランド業界の動向や、日本のZ世代の同分野での購買行動に詳しい有識者に聞いた。
ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」。
デジタルネイティブであり、多様性を大切にし、サステナブルな消費行動を意識するといわれるZ世代。そんな世代に対して、世界の有名ブランドはどのようなマーケティングを行っているのか。今回はファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」編集長で、世界のラグジュアリーブランドの動向に詳しい村上要氏に話を伺った。
まず近年のラグジュアリーブランドでは、若年層やエントリーユーザーをつかまえる「エントリーアイテム」が変化したという。
「以前はSLG(スモール・レザー・グッズ)と呼ばれる財布や名刺入れ、バッグが定番でしたが、20年ほど前は10万円台だったブランドのバッグも、近年は30万円前後まで価格が高騰しました。そんな中で、働くシーンのカジュアル化、若い世代のファッションのカジュアル化も進み、ここ数年はスニーカーやキャップなどが新たな定番となりました」
スニーカーは10万円前後、キャップだと3万円程度の商品が多いそうで、スニーカーに合わせてソックスも1万2000円台から販売するブランドが増えているという。そうしたストリートウェア的なアイテムが強化されているのは、やはり世界的なブラックカルチャーの隆盛などが関係しているのだろうか。
「それは確実にあると思います。今のラグジュアリーブランドはZ世代が支持する音楽を中心に、カルチャーと密接に関わることが求められている。その戦略で成功したのがルイ・ヴィトン。カニエ・ウェストと親交が深かったヴァージル・アブロー(21年に死去)を、2018年にメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターに迎えた頃から、わかりやすくストリートライクなアイテムが増えました。そして次のメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターにはファレル・ウィリアムスが起用されます」
なお近年のラグジュアリーブランドでは、Z世代に支持されるBTSなど、アジア系のスターがアンバサダーに起用される機会も目立っている。
「それはラグジュアリーブランドが本当の意味でインターナショナルな存在になった証拠といえます。30年ほど前のバブルの時期に日本から始まった購買行動がアジアに広まり、今はそれが南米あたりまで広まっています。なお中華圏、韓国などのアジアン・セレブリティがパリやミラノのショーに登場した際に、コケイジャン(白人)の若い子からも歓声が聞こえる点は面白いなと感じます」