呂布カルマvs.胡桃そら ラップに“かわいい”はアリ？ 誌上ディベートマッチ

――今や“論破王”としても広く知られるラッパー・呂布カルマに、サイゾー誌面でのディベート企画を提案。対戦相手は元アイドルで最後のZ世代・胡桃そら。勝敗の審査員（＋胡桃そらの助っ人）として、フィメール・ラップ批評の権威である文筆家のつやちゃんに参戦していただく。果たして、勝つのはどっちだ？

（写真／河本悠貴）

［お題］ ラップにかわいい歌詞はアリかナシか
胡桃そら 【アリ】
呂布カルマ 【ナシ】

胡桃そら（以下、胡桃）　私は女の子で元アイドルだし、かわいい歌詞は絶対にアリ！　もともと仮面女子っていうアイドルグループにいて、ラップパートも担当していたので。

呂布カルマ（以下、呂布）　ラップを担当してたの？

胡桃　本体ではなく4つユニットがあって、その中の〈アーマーガールズ〉でラップしてたんですよ。ただ、私が書いた歌詞じゃなくて、かつ結構イカつい内容だったから、もっとかわいい曲をやりたかった。今はアーティストだけじゃなく、バトルシーンでもフィメール・ラッパーが増えてきてるけど、いまだに男尊女卑の男文化でフィメール・アンチも多いじゃないですか。だから、かわいい歌詞でもっと盛り上がっていいと思う！

呂布　そもそも「かわいい」の定義って何？

胡桃　概念は……恋愛系？

呂布　恋愛はかわいいの？

胡桃　恋愛系のほうがかわいい歌詞を書きやすい。普通にお菓子の名前とか出てきてもいいわけだし。

呂布　別に恋愛の歌詞はラップに限らず、他ジャンルでも普通に存在してるじゃん。

胡桃　でもほら、暗い過去を歌うラッパーが多いじゃないですか、ヒップホップって。

呂布　それだけじゃないから（笑）。暗い過去は誰だって持ってるでしょ。それをあけすけに歌っているだけであって、特別多いわけじゃない。

胡桃　だったら、かわいい歌詞があってもいいわけじゃないですか！

呂布カルマ（りょふ・かるま）
1983年、兵庫県生まれ、名古屋在住のラッパー。バトルMCとして名を馳せ、自身のレーベル〈JET CITY PEOPLE〉を設立し、楽曲も積極的にリリース。昨今はテレビ番組やCMなどにも引っ張りだこで、グラビアディガーとしても一目置かれる存在。
Twitter〈@Yakamashiwa〉  Instagram〈ryoff000karma〉
（写真／河本悠貴）

呂布　だから、その「かわいさ」は何？

胡桃　例えば「ふわふわな気分／うわうわ好きになっちゃう」とかオノマトペで韻を踏むとか。ゴリッゴリのワードに縛られる必要はない。

呂布　大事なのは「誰から見てかわいいのか？」であって、ヒップホップはそもそもかっこつけが多いから、「かわいい」とは対極の位置にあると思うんだよね。かつ、ラップする人がありのままであるからリアルになるわけであって、そこに「かわいい」を入れ込むと“媚び”を感じる。リリックに媚びがあるのはイヤじゃない？

胡桃　JKや10代はそんな深くないから、普通にかわいい言葉が出てくると思う。

呂布　JKにはJKの、10代には10代のリアルがあるじゃん。普段の語彙でラップしたら、それは「リアル」であって「かわいい」とはまた別のもの。リアルにラップしているのに「かわいい」ってジャッジしちゃったら、それはラッパーをバカにしてる感じがしない？

胡桃　そのリアルを「きゃわ！」って評価することで、その人のレベルを下げてる、みたいな？

呂布　そう。ことヒップホップに限っては「媚びる」はアウトだと思う。

胡桃　でも、ド天然だったらどうですか？　ドッキリカメラ的に隠し撮りしても「マジ天然！」と検証されるレベルの女の子が、キャラ作りでもなく、媚びてるわけでもなくラップしてたら？　かわいい文化はヒップホップに少なからず必要なはず！

呂布　J-POPやアイドル、媚び媚びの歌詞はめちゃくちゃ流行ってて、日本の音楽業界はそれに蝕まれてるじゃん。だから、わざわざそのかわいい文化をラップやヒップホップに持ち込む必要はなくて、そういった界隈でやればいいじゃんと思う。そういう「ヌルい音楽がイヤだ！」って人たちがヒップホップとか違うジャンルを聴き始めるわけだし。だから同じフィールドに持ち込まず、分けておいていい。アイドルでふわふわ媚びまくってても、女の子にだってドロドロはあるでしょ。もしかしたらそれは男よりもエグいかもしれないし。それをアイドルの舞台でやる必要はなくて、あけすけに歌いたいならヒップホップでやればいい。

胡桃　でも、アイドルオタクの連中はめっちゃ金持ってますよ。その金をもっとヒップホップ文化に持ち込みたいじゃないすか。今日、ヒップホップに新しい風を吹かすためにもやってきてるんで。アイドル文化、一緒に潰しましょうよ！

呂布　いや、潰すなら違う方法で潰さないと。アイドルの手法をラッパーが後追いしたところで、アイドルオタクの人はこっちに来ない。

胡桃　だから、私ががんばるんすよ、かわいいラップのリリックで！

呂布　そうなると、アイドルがラップを取り入れてるに過ぎない。イコール、ヒップホップが流行る、盛り上がってることにはならない。ジャニーズのメンバーがラップするのと一緒。

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