――主役が発するうんこちんこは当たり前、女性キャラでもおっぱいを惜しみなく披露し、挙げ句にはお尻まで――。90年代を彩ってきたギャグマンガは、こうした描写の雨あられ。今となっては到底考えられないこのような表現に、令和を生きる小中学生はどんな感想を抱くのか? 親同席のもと、レッツ熟読。
アイアイちゃん(14)&リルジンくん(11)姉弟(写真/宇佐美 亮)
90年代に爆発的に支持された下ネタ満載のマンガの数々。なんの疑いもなく、ただただ笑っていたが、現代でもそのオゲレツさは通用するのか? 今を生きる小中学生(&ご両親)の力を借りて、その是非を問うた。
1組目は中学2年生のアイアイちゃんと小学5年生のリルジンくん姉弟がエントリー。まずはお姉ちゃんに『おぼっちゃまくん』をジャッジしてもらいました。
『おぼっちゃまくん』 小林よしのり(月刊コロコロコミック掲載/小学館/1986年〜1994年)上流階級のみが通う小学校に転校してきた御坊茶魔が送る、痛快オゲレツ学園マンガ。
アイアイ シンプルに面白い。ギャグがスッと入ってきてわかりやすい。爆笑って感じじゃなく、断続的にクスッと笑えるかな。台詞でうんこちんこ出てくるけど、クラスの男子もしょっちゅう言ってるからイヤな印象はそんなない。
ママ 『ぶぁい』とか『でしゅ』とかの茶魔語は仲間内で使えそうじゃない?
アイアイ さすがに『おめでたまきん』は使わないけどね。あと、主人公の茶魔が財閥の大富豪に対し、貧ぼっちゃまの設定は、いじめのきっかけになりうるとかでPTAで問題になりそう。それと、絵のトーンやギャグの質感、擬音のフォントとかが古くさく感じるけど、現代でも全然通用するレベルだと思う。え、女の子向けのギャグマンガ? うーん、思いつかないなあ。私たちくらいの年になると、マンガは笑いよりもロマンスを求めるからね。
「いいなけつ!! はできないけど、へけけっとかなんとかしてクリは使い勝手がいい」と語ったアイアイちゃん。
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『珍遊記〜太郎とゆかいな 仲間たち〜』漫☆画太郎(週刊少年ジャンプ/集英社/1990年〜1992年)暴れん坊・山田太郎と僧侶の玄じょうが天竺を目指す、はちゃめちゃ珍道中マンガ。
続いて弟が語る『珍遊記』論。
リルジン 主人公の太郎が素っ裸で行動してるけど、なんで周囲の人たちは平然としてるの? 見た目で下ネタなのに、台詞も下ネタだらけ。しかも印刷ミスなのかと思ったけど、同じページに同じコマが何度も使い回されていて、すごい衝撃なんだけど。
パパ それが漫☆画太郎先生の必殺技なんだよ。
リルジン あとさ、影、描きすぎじゃない? 影にこだわりすぎているせいで絵が汚く見えちゃって、ちんちんも汚く思える。ってか、そもそもちんちん出してる主人公のマンガを読んだの初めてかも。
パパ 昔はむちゃくちゃな設定が当たり前で、パパ世代はなんの疑念も抱かなかったけど、リルジンはそういった不条理に対する免疫が作られなかったんだろうな。
「珍遊記はやたらふくろを推してくるけど、僕らの学校では伏線を回収するマンガが人気です」と真顔で語ったリルジンくん。
リルジン 太郎も最強なんだろうけど、僕の好きななろう系の主役には素っ裸のキャラはいないからね。あ、不条理さで言ったら、コロコロの『なんと!でんぢゃらすじーさん』と似てると思った。
パパ どんなマンガが学校で話題になるの?
リルジン 考察し甲斐のあるマンガだね。最近だと『タコピーの原罪』や『一ノ瀬家の大罪』とか。
パパ 下ネタは?
リルジン 最近学校で消しピンが流行ってて、そこで『喰らえ、スーパーちんちんシュート!』とか言うくらい。って、脱線しちゃったけど、僕は伏線回収が上手なマンガ家の作品が好き。珍遊記も最後まで読めばそういう部分があるかもしれないけど、今現在の『週刊少年ジャンプ』じゃ、こういうオゲレツなギャグはサヴァイブできないんじゃないかな。
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