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第1特集
もう宮城リョータは活躍できない?

今のNBAやBリーグと比較!『SLAM DUNK』本当の戦力

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映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒット上映中だ。原作マンガも大人気を博し、スポーツにおけるバスケの地位を向上させたが、連載が終わったのは四半世紀以上も前のこと。あれから現実のバスケ自体が「進化」している。超人的にも見えた登場人物のプレイは、今のNBA、Bリーグ、高校バスケでどれほど通用するのか――。

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『THE FIRST SLAM DUNK』パンフレット。原作マンガの主人公は桜木花道だが、映画では宮城リョータが主役に。

原作者の井上雄彦が監督・脚本を務め、2022年12月3日に公開されたアニメ映画『THE FIR
ST SLAM DUNK』が興行収入94・5億円を記録した(1月29日時点)。原作のマンガ『SLAM DUNK』(以下、スラムダンク)は1990~96年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されて大ヒット。日本人初のNBAプレイヤー・田臥勇太(現・宇都宮ブレックス)も子どもの頃に愛読したと語っており、日本のバスケ界に大きな影響を与えたといっても過言ではない。2006年に本作の印税の一部を充てて井上が創設したスラムダンク奨学金は、数々のプロ選手を輩出した。

改めて原作について説明すると、神奈川県立湘北高校に進学した不良少年の桜木花道が、初心者にもかかわらずバスケ部に入部。キャプテンの赤木剛憲やスーパールーキーの流川楓らと共に成長していくストーリーだ。

連載当時、高校生離れしたプレイを繰り広げる登場人物たちは、実際の全国一の強豪校だった秋田県立能代工業高校(現・能代科学技術高)はおろか、NBAの選手すら凌駕しそうにも見えたが、連載終了から四半世紀以上が経ち、現実のプレイや戦略は大幅に進化。では、現時点から見たスラムダンクのキャラクターたちの戦力はどのレベルなのか? 現行のバスケに詳しい3人の専門家に話を聞いて考察していきたい。

湘北の大黒柱・赤木はセンター以外もやるべき

まず、連載時から今に至る現実のバスケの変化を確認しよう。2001年、FIBA(日本の高校やBリーグもその基準に準じる国際バスケットボール連盟)は大幅にルールを改正。Bリーグや高校バスケなどのコラムを執筆するライターの小沼克年氏は、こう語る。

「スラムダンクの時代、NBA以外の試合は前後半20分ずつでしたが、今は高校もBリーグも10分×4のクォーター制(なお、NBAは12分×4のクォーター制)。かつては主力のスターティングメンバー5人が40分間フル出場することもザラにありましたが、『タイムシェア』といって選手ひとりの出場時間は20~30分に抑え、できるだけ多くのメンバーを出場させる戦い方が一般的になりました。そのため、ベンチメンバーがより重要。Bリーグの場合、22年に優勝した宇都宮ブレックスを含め強いチームは、ベンチに入った10〜14人の誰が出ても戦力は変わらない。スラムダンクでは主力選手は5~7人程度に限られ、ベンチの全員が活躍することはほぼありません」

選手のパフォーマンスを上げることを目的に導入されたクォーター制とタイムシェアにより、試合展開はよりスピーディに。こうした変化と共に戦術も変わった。以前はチーム内で特に大柄の選手はセンターと決まっていたが、現在は「ポジションレス化」が進んでいる。そう指摘するのが、NBAやBリーグのアナリスト/解説者である佐々木クリス氏と、バスケ専門誌「ダブドリ」(ダブドリ)編集長の宮本將廣氏だ。

「連載時は、とにかくC(センター)の高さがチームの強みになりました。三井寿(湘北)や神宗一郎(海南大附属)のような3ポイントシュートのスペシャリスト、パスやドリブルに長けた宮城リョータ(湘北)や藤真健司(翔陽)みたいなPG(ポイントガード)がいる中で、まずはゴールに近いエリアでポストアップ[註1]するCにボールを預け、そこから攻撃を組み立てる“初手センター”が基本のオフェンスでしたから。しかし、NBAをはじめ現代バスケでは2010年代にペース&スペース[註2]が浸透し、Cのサイズではなくチーム全体のスキルと機動力で勝負します。そのため、5人のスペシャリストより、どこでも万能に動けるオールラウンダーをコート上に置くことが重要」(佐々木氏)

「赤木は今ならゴール下だけでなく、ほかの役割もこなす必要があります。以前はCだった2メートルを超える選手がSG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)をやる。NBAだとケビン・デュラント、日本人では渡邊雄太、八村塁がまさにだと思います。そうした選手の価値が高まっています」(宮本氏)

それぞれ得手不得手のあるスペシャリストが結集し、互いの弱点を補うことで湘北は強さを発揮したが、今それでは勝ち上がれないのかもしれない。

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