――海外では専門校を卒業すれば“大麻ソムリエ”になれるらしいが、ディスペンサリー(合法の医療用/嗜好用大麻販売店)に勤務する“Budtender”(大麻の花穂である「バッズ」と「バーテンダー」を掛け合わせた造語)とは何が違うのか? 合法化後、ビジネスが急拡大中のロサンゼルスを拠点に啓蒙活動を続ける“大麻のマリ姐”に詳しく話を聞いた。
去る11月下旬、渋谷ロフト9にて「東京国際カナビス映画祭」が開催された。「日本人と大麻の関係性を見つめなおすとともに、映画や芸術、対話などを通して、海外の大麻文化との交流を行う」ことを目的に、大麻に関する映画やトークショー、CBDを用いたショップの出店など、SNSでも大きな盛り上がりを見せていた。そんな大麻への関心がうかがえる同祭にもスピーカーとしてゲスト出演し、現在はロサンゼルスを拠点にYouTube「ブルドリチャンネル」にてさまざまな情報を発信する“大麻のマリ姐”こと、Blue Dreamz Eiju氏。バッドテンダー(ディスペンサリーに勤務する販売員)としてディスペンサリーの店長も務め、現在は大麻活動家として、YouTubeチャンネルをはじめ、SNSで知っておくべき正しい知識を説いている。さて、一時話題となった“大麻ソムリエ”は、ビジネスが拡大化するロサンゼルスにて広く認知されているのだろうか?
──ディスペンサリーで働くきっかけから教えてください。
Blue Dreamz Eiju(以下、E) 17歳から大麻を嗜むようになり、25歳でロスに移住、30歳くらいまで嗜好品としての大麻を吸っていたんですが、その年に兄がアルコール中毒で亡くなり、とても落ち込んだんですね。しかもグリーンカードの申請中で日本に帰国することもできず、もともと好きだったお酒の量が増え、体調も芳しくない日が続きました。そのときに元旦那に「大麻の量を増やしてみたらどうだ?」とアドバイスを受け、ほぼ夜寝る前にだけ吸っていた大麻との向き合い方を変え、まず仕事から戻ったら一服するという使い方を始めたところ、みるみるお酒の量が減り、、精神も安定し、睡眠も取れるようになった。大麻が大好きで吸い続けてきて、たくさんの品種があることも知っていましたが、「こんな効果があるんだ」と、14年目にして衝撃を受けました。そこから大麻について独学で学び始め、ディスペンサリーで働き始めることにしました。
──独学はどのように?
E とにかくネットを駆使して情報を得て、わからない言葉が出てきたら調べる。今はありがたいことにYouTubeで解説動画などもあるので、最低限必要な知識は簡単に得ることができます。ただ、英語の記事や動画はいくらでも出てくるのに対し、日本語で解説されているものはほとんどない。あるにはあるんですが、英語の記事は日々更新されているのに、日本語の記事はまったく更新されていない。「なぜ日本語の情報はこんなに少ないんだろう。だったら私が始めればいい」と思い、19年にロスの情報サイト「LALALA WEB」で「マリファナのおはなし」という連載を始めることになったんです。連載は1年間続け、情報発信に向いているYouTubeでチャンネルも開設しました。
──過去に「大麻ソムリエという職業が誕生」というニュースがありましたが、現地ロサンゼルスではポピュラーなのでしょうか?
E 実はその言葉自体、現地ではあまり耳にしないんですよ。取材前に周囲にもリサーチしたんですが、「それってバッドテンダーのこと?」というリアクションで。
──バッドテンダーはディスペンサリーの販売員のことで、もちろん知識と教養あってこその職業ですが、大麻合法化に伴い、さらなる対応が必要となったことも関係しているのでしょうか?
E 商品や品種の交配などに関する知識はもちろんですが、ディスペンサリーには悩みを持って来られるお客さんも多いので、その対応もあると思います。大麻に慣れ親しんでいても喫煙したくない人もいるので、そうした場合はグミやクッキーのようなエディブル(食用)やベイプをすすめたり、塗る/貼るといったバームを提供することもあります。LAは大麻文化に根差した地域なので、(大麻草の)茎や葉をアルコールに漬けて患部に塗るホームレメディの知識を持った方も多い。バッドテンダーはあらゆるアイテムがある中で、その方に適した商品を提供するお仕事だと思っています。
──確かに海外には「Budtender(Cannabis Sommelier)」と記載されている記事もあります。
E これは私の場合ですが、日本人という国民性もある。アメリカ人って、たまげるほど手を抜く人が多いんです(笑)。私はもうアメリカ国籍ですけど、日本人魂が染みついているので、相手の欲するものを読み取り、尽くす精神は100%注いでいます。