――未払い賃金の総額は11人で約1800万円。愛媛県西予(せいよ)市の縫製会社で働くベトナム人技能実習生(以下、実習生)の違法残業が、支援団体などの介入により明るみに出た。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省が公募した医療用ガウンの生産を同縫製会社が請け負っていたことから、主要メディアもこぞって取り上げた。
雑誌サイゾーにて「外国人まかせ」を連載し、同企画をまとめた単行本『外国人まかせ 失われた30年と技能実習生』を11月21日に出版したジャーナリスト・澤田晃宏氏が、11人の実習生のうちの一人にインタビューを試みた。匿名を条件に女性(32歳)が語った違法残業現場の実態とは……。
そのほか外国人が働く現場を徹底取材! 澤田晃宏『外国人まかせ 失われた30年と技能実習生』
取材に応じた女性が働いていた縫製工場。(写真/女性提供、以下同)
仕事は朝の6時から19時半まで。休憩はお昼に30分。それ以外の時間はずっとミシン作業が続く。パジャマなど、洋服の縫製作業が多かったと女性は話す。2020年6月頃から数カ月、社長から「今は仕事が少ないからこれをやってほしい」と、医療用ガウンの縫製作業もしたと話した。
女性はベトナムのハイズオン省出身。高校卒業後、縫製工場で働いた。給料は500万ドン(約3万円)~700万ドン(約4万2千円)程度だった。すでに結婚し、今年7歳になる子どもがいる。
同工場から実習生として日本で働いていた仲間が帰国した。同僚の話を聞き、自分もと思った。夫も木工の仕事に就くが、決して生活は楽ではない。家族のために家を建てたい。親戚らから借り集めた5700ドル(当時のレートで約62万7000円)を送り出し機関に支払い、2019年末に縫製の実習生として来日。筆者が驚いたのは、来日した日や勤務を開始した日を明確に覚えていることだ。
女性は言った。
「もちろん、人生の節目の日ですから。借金をしてでも、日本に行って、いい暮らしを手に入れたいと思った」