――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。
『ブロス』
ハリウッド・メジャーが手掛ける“珍しい”ゲイによるロマンスコメディ。恋愛経験のない陰キャのボビーはLGBTの歴史を研究するジャーナリスト。そんな彼が弁護士アーロンと恋に落ち……。
監督:ニコラス・ストーラー、主演・脚本:ビリー・アイクナーほか。公開日未定。
「今から4500年前の古代エジプトの遺跡から、ゲイのカップルを描いた壁画が発見されています。2人は見つめ合い、今にもキスしそうです」
ボビー(ビリー・アイクナー)はLGBTの歴史について研究するジャーナリスト。ニューヨークにLGBT博物館を建てようと奔走している。そのボビーにハリウッドの映画プロデューサーがゲイのロマンティック・コメディ映画を一緒に作らないかと声をかける。
コメディアンのビリー・アイクナー脚本・主演の映画『ブロス(ブラザースの略。男同士を意味する)』はユニバーサル映画製作。ハリウッド・メジャーが手がけた珍しいゲイのロマンティック・コメディだ。しかし、ハリウッドのオファーをビリー・アイクナー扮するボビーは断る。
「僕は愛なんて信じない。僕は40年生きてきて、愛する人と巡り合わなかった」
ボビーは出会い系アプリでセックスはするが恋愛に発展したことはない。いつもイライラしている。いつも誰かの悪口を言っている。ゲイもストレートもみんなバカに見える。
特にボビーは、筋肉モリモリで、笑顔がさわやかなスポーツマンは大嫌いだ。どうせみんな空っぽで退屈な奴らなんだ、と決めつける。それは、青白くて屁理屈ばかりでクラブに行っても決して踊らない陰キャなボビーのひがみだけれど。
そんなボビーが恋に落ちる。筋肉モリモリで、笑顔がさわやかでクラブで踊りまくる、明るい弁護士アーロンに。まったく正反対の2人のラブストーリー。『恋人たちの予感』(89年)へのオマージュだ。
「僕はロマコメが大好きだった」アイクナーは言う。「でも、僕のようなゲイはそこにはいなかった。だから作ったんだ」