働き始め、すぐに異変に気づいた。30分の昼休みを除き、1日の労働時間は13時間。休みは月に2日だけ。どう考えても、働いた時間と賃金が合わないのだ。
2日しかない休みの1日は「買い出しの日」。9時から14時にかけ、社長が実習生たちを車に乗せ、5つほどの商店を回る。複合型ディスカウントストア「ラ・ムー」から始まり、衣服の「シマムラ」、100円ショップと続くのが、いつものコースだったという。1カ月間で必要なものは、この日にすべて買った。
一緒に働くベトナム人実習生の先輩に相談した。すると、こんな「決まり」を教えられたと女性は話す。
「きちんと残業代がつくのは1時間分だけ。それ以上の残業代は、1年目は時給350円、2年目以降は時給400円と言われました。文句を言いたかったですが、反抗すると帰国させられるかもと言い出せませんでした」
実習生らの残業時間の記録。
一部例外はあるが、企業は実習生を直接受け入れることができない。厚生労働省と出入国在留管理庁が所管する外国人技能実習機構が認可した「監理団体」を通じてのみ、受入が可能だ。その監理団体には、実習先の監督と実習生の保護責任がある。なぜ、女性は監理団体に相談しなかったのか?
「社長が監理団体の理事なので、相談しても仕方がないと思いました」