――ユニクロとKAWSがコラボした際にTシャツの購入をめぐって、とある店舗では客同士の殴り合いが発生。さらに、中野ブロードウェイにある村上隆の画廊兼ギフトショップのZingaroには日夜、転売ヤーが行列を成している。いつから、現代アートグッズは転売の対象になったのだろうか?
「メルカリで100万円も使わないだろう」と思いながら見ていると、村上隆の新作のポスターが50万〜70万円で取り引きされていた。
人気商品の買い占めや、値段の吊り上げを誘発する転売行為は、社会問題として認知されていながらも、ほぼ野放しの状態が続いている。
転売業者のターゲットにされる商品は、人気ゲーム機や数量限定のアパレル商品など、流行やコレクション性を重視する印象が強い。中でも、現代アートにまつわるグッズは熾烈な争奪戦が繰り広げられているという。
例えば2019年には、ユニクロと人気アーティスト「KAWS」のコラボ商品をめぐって中国で大混乱が起こり、店頭で客同士が殴り合いのケンカを始めるなど、さながら暴動の様相を呈していた。言うまでもなく、彼らはKAWSのファンではなく、件のコラボ商品はすぐさま定価の数倍でフリマサイトに出品されていた。
村上隆や奈良美智といった日本を代表するアーティストたちのグッズも、ほぼ例外なく転売市場に出回っており、数十万円から百万円単位の値が付けられることも珍しくない。
普遍的な知名度を持つわけではない現代アートのグッズが、なぜ転売市場で存在感を示しているのか?
「現代アートグッズの転売は基本的に損をすることがありません。手に入れることさえできれば、定価以上で買い取ってくれる人は必ずいます。ゲーム機や、再販される可能性のあるアパレル商品などと違い、アート作品は時がたっても値崩れすることがないし、むしろ数年“寝かせる”ことで価値が上昇するものもあります。だから、時間や金には糸目をつけません」
そう語るのは、会員数500人以上の転売せどり専門オンラインサロン「SLYP」を運営する黒崎誠氏。まず、業者が入手した作品はどこへ流れていくのだろうか?
「販路は大体2つありまして、ひとつはメルカリやラクマ、ヤフオクといったフリマサイト。もうひとつは買取業者です。買取業者は作品が販売される会場に集まってきて、入手できた人にその場で買取交渉をします。知人の買取業者の中には、村上隆の作品を手に入れるために現ナマで1000万円用意していった人もいました」
金に糸目をつけないというのは本当のようだ。一方で、フリマサイトで値段の吊り上がった作品を買い求めるのはどのような層なのだろうか?
「アート界隈は海外の人が多く、自分の知る限りでは中国が多い印象です。例えば『ベアブリック』なんかは、中国の大富豪がそれを置くためだけの家を建てたりしていて、富裕層が集めるアイテムになっているそうですね」
かつて日本でも、バブル時代に成金たちがこぞって、海外の名画を買い漁っていた前例がある。歴史は繰り返すというわけだ。