「ロシア・ビヨンド」より。
2月末にウクライナへの侵攻が始まって以来、世界の大半を敵に回したロシア。かつてはネット上を中心に、ウラジーミル・プーチン大統領のコワモテぶりや、他国から見れば奇想天外なロシアの常識を「おそロシア」と面白がる傾向があったものの、今やまったく笑えない状況となってしまった。
「スプートニク」や「ロシア・トゥデイ」などといった国営メディアにも、クレムリンの言い分を垂れ流すプロパガンダ機関として、今まで以上に厳しい目が向けられている。しかしながら、そんな政府系メディアの中でも「ロシア・ビヨンド」というウェブサイトは毛並みが違う。
ロシア・ビヨンドは2007年に政府系新聞ロシースカヤ・ガゼータの一部門として創刊され、現在は独立非営利組織「TV-Novosti」によって運営されている。ほかの国営メディアとは政治色の少なさで一線を画しており、ロシアやソ連のライフスタイル、歴史、科学技術、サブカルチャーなどを紹介する娯楽的な内容が多い。それも「幻覚キノコがボリシェヴィキ革命の一因?:ソ連崩壊の前夜に世を騒がせた珍説」といったような、一風変わった記事が多く見られる。
今回はそんなロシア・ビヨンドに掲載されている記事の中でも傑作と呼べる興味深いものを、海外B級ニュースを毎日のように採掘し、ツイッターで翻訳して紹介しているライターのゼロ次郎が、独断と偏見でトップ5形式で紹介していく。
「ロシア・ビヨンド」より。
ロシアの食べ物と聞いて一般的に思い浮かべるのは、ボルシチやピロシキだろう。しかし、こちらの記事ではロシアの貧しい農民が食したという「木で作ったお粥」や、「ストーブの灰で調製される真っ黒な塩」といった、奇妙な料理が紹介されている。
「木のお粥」は、ロシアのシンボルとしても知られる白樺の樹皮にある「師部」を煮詰めて作られる。師部は人間でいうところの血管のような役割を果たす部位で、煮込むと粘り気のある、こってりとした粥になるという。なお、白樺の樹液はかつてロシア国内でジュースとして広く飲用されており、ビタミンB6とB12が豊富で、肌や髪に良い効能をもたらすことで知られていたという。
「ロシア・ビヨンド」より。
ソ連の「悪党」といえば、スターリンをはじめとする独裁者をイメージしがちだが、こちらの記事では、知られざるソ連の犯罪者やアウトローたちを紹介している。特に興味深いのが、ソ連の建国者であるウラジーミル・レーニンから車を強奪したというヤコフ・コシェリコフだ。記事によると、コシェリコフは1890年に犯罪者の一家に生まれ、1910年代に名うてのスリとして悪名を轟かせていたという。やがて武装強盗団の指導者となったコシェリコフは、1919年1月6日にモスクワ郊外で5人の仲間たちと一台の車を襲った。彼らの目的は強盗先に向かうための足を調達することだったが、この車に乗っていたのが、かのレーニンであった。
レーニンはこのときすでにソ連の指導者として権力を掌握しており、不届きな強盗団に向かって「どうなっているんだ。私はレーニンだぞ!」とすごんだものの、コシェリコフは彼の名を聞き間違え「レーヴィンだか誰だか知らないが、俺はこの街の夜の支配者コシェリコフだ」と言い放ち、身ぐるみを剥いで、まんまと車を奪い去ったのである。その後、奪い取ったレーニンの身分証明書を見て、コシェリコフはようやく自分がしでかした事の重大さを知ったが、すでに手遅れであった。彼がたどった悲惨な末路は、記事内で確認してほしい。