サイゾーpremium  > 連載  > NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE TECH」【31】

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー
タイニー(Tiny)

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タイニー(Tiny)の公式HPより。

タイニーは、デザイナー出身のアンドリュー・ウィルキンソンが設立した投資会社。従来のファンドと異なり、小粒でもきらりと光るスタートアップを、最速で1週間ほどで買収し、その後長らく育て続ける。ウォーレン・バフェットを徹底研究して、その投資手法をネット業界に持ち込み成功させている。

みなさんも世界的な「投資の神様」として知られる、ウォーレン・バフェットの名前を聞いたことがあるだろう。

彼が経営してきた投資会社のバークシャー・ハサウェイは、まるで雪だるまをゴロゴロと転がすように、次々と買収した会社を大きくしていった。いまやAppleやコカ・コーラなど名門企業の大株主にもなり、バフェットが築いたコングロマリットは時価総額にして6900億ドル(約89.7兆円)を誇る。

しかしシリコンバレーには「インターネット業界のウォーレン・バフェット」と呼ばれている、とてもユニークな人物がいる。それがデザイナーであり、起業家のアンドリュー・ウィルキンソンだ。

ほっそりした体にTシャツという身なりで、とてもお金に執着するタイプには見えない。カナダはビクトリアという静かな街に暮らし、自分の時間を大切にするライフスタイルを貫いている。

実際に「僕はメールとか電話で、自分の生活を邪魔されるのが好きじゃない」と公言している。

ところが、そんな彼が経営するタイニー(Tiny)という会社は、すごいスピードで成長する投資集団になっているのだ。

カナダに本拠を置き、従業員はわずか10人ちょっと。

ところが、インターネット業界にあって誰も目に留めないけれども、実は儲かる「中小スタートアップ」を続々と買収して、どんどん大きくなっているのだ。

彼がポッドキャストで語ったところでは、これまで自分たちのアイディアで作り上げたスタートアップが11社、株式の過半数を取得したファミリー企業が44社、それ以外にも33社に投資をしており、企業価値は1300億円を超える。

例えば、彼がわずか数億円で買収したドリブル社(Dribbble)。

このサービスは、世界中で300万人以上のデザイナーが使っているとされる、デザイナーのためのソーシャルプラットフォームだ。

さまざまなアプリからウェブサイト、グラフィックアートまで、多種多様なデザイナーが自分が手掛けた作品をここに投稿して、知名度を上げたり、新しい仕事のお誘いを受ける場所になっている。

フェイスブックやインスタグラムなどと比べると、とてもニッチに聞こえる。しかし、このカテゴリーでは圧倒的な存在となっており、タイニーは買収後にビジネス規模を10倍、20倍、30倍と拡大してきた。

その他にも、聞いたこともない優良なミニスタートアップが大量に並ぶ。

ユニコーンハント社は、ヨーロッパ全土をカバーする「スタートアップ求人」のサービス。ガールボス社は、女性たちのビジネスネットワークを展開する。ランプ(ramp)は、会社が最安値で購買できるようサポートするサービスだ。

「僕は(小さいけど独立独歩な)ニュージーランドみたいなビジネスが好き」というアンドリューは、こうした小ぶりな優良スタートアップを買い漁っている。

 いまや合計1300億円を超える企業群だが、アンドリューに売る気はない。ひたすらファミリー企業として育てて、チャリンチャリンとお金を生み続けるという。

地味でも、長期的に見てたくさんのキャッシュを生み続けるビジネスを集めてゆく──。まさに若い頃のウォーレン・バフェットが、たどった道そっくりなのだ。

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