サイゾーpremium  > 特集  > 裏社会学  > 中年男性が熱中する【昭和作品の新作】

――シン・ウルトラマンの大ヒットに続き、ガンダムやドラゴンボールの新作も公開され「今は昭和か平成初期か?」と見まごうばかりの懐かしの作品が映画館を占拠している。なぜ、おじさんたちは少年期に見た作品をいつまでも愛し続けるのだろうか?

2207_ojisan_01_320.jpg
新作劇場版が話題に
ウルトラマン
1966年の「ウルトラマン」を皮切りに、「ウルトラセブン」「ウルトラマンタロウ」など、数々のシリーズが作られた。(絵/上田よう)

現在、映画館で昭和育ちのおじさんが当時熱狂した作品の新作の上映が目白押しだ。おじさんが在りし日を懐古するような映画が一定の市場を得ていることは興味深い。また映画以外にテレビやゲームでも往年のコンテンツの新作が相次いでいる。そんな中、最近では映画『シン・ウルトラマン』の快進撃が続いている。

『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明氏が企画・脚本を務め、その盟友というべき樋口真嗣氏が監督した本作は、5月13日の公開から2週間で観客動員150万人を突破。大ヒットを受けて、1966年に放送された元祖『ウルトラマン』から、庵野秀明氏が選んだお気に入りの4話を映画館で上映する特別企画も6月3日から12日まで全国13の劇場で実施された。

公開初日に見たという弘士さん(仮名・64歳)は、8歳のときに放送開始されたウルトラマンを、テレビに食いつくようにして毎週見ていたという直撃世代。今回の『シン・ウルトラマン』を見た感動をこう語る。

「私は『ウルトラマン』という作品が初めてテレビに誕生し衝撃を受けた世代です。その前に放送していた同じ円谷プロダクションによる『ウルトラQ』にも夢中になっていましたが、この作品では人間が怪獣と戦っていて、まだウルトラマンは出てこない。『ウルトラマン』が放送開始され、宇宙人であるウルトラマンが巨大化して人間のために怪獣と戦ってくれる展開を初めて見たときの衝撃は、物心ついたときからウルトラマンがいた私以降の世代には決して理解できないでしょう。今回の『シン・ウルトラマン』は、地球に初めてウルトラマンが現れたところから始まるストーリーで、まさに初めて見たときの感覚を追体験させてくれました。今回シニア料金で鑑賞しましたが、8歳のときに見たウルトラマンの感動を、64歳になってもう一回味わえるとは、子どもの頃は想像もしませんでしたね」

実際、『シン・ウルトラマン』は、冒頭から元祖『ウルトラマン』を踏襲したタイトルバックに続いて、『ウルトラQ』に登場した怪獣(『シン・ウルトラマン』では禍威獣)が次々と現れ、往年のファンにはたまらない作りになっている。ウルトラマンが登場してからのストーリー、例えば科特隊(「科学特捜隊」。『シン・ウルトラマン』では「禍特対」)の女性隊員が巨大化されてしまう展開など、原典のオマージュが満載されているのだ。さらに当時の児童雑誌が「ゾフィー」を「ゾーフィ」と誤植したというネタを利用した「外星人ゾーフィ」の登場もあり、マニアがニヤニヤする展開になっている。

一方で、『シン・ウルトラマン』の上映劇場に足を運んだ観客の中には、原典を見たこともない若い世代も多くいた。そのように予備知識がない観客にとっても楽しめ、かつ原典へのオマージュにあふれているということで、かつての『ウルトラマン』について知りたいという気持ちにさせられる。まさにおじさんと若者をつなぐ架け橋となっていると言えるのだ。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年11月号

サヨクおじさんが物申す 腐敗大国ニッポンの最新論点

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ