『ヒーローと正義』では、日本古来のヒーローの分析から始まり、善と悪は対立概念なのか、ヒーローとはどんな存在なのかといった事柄について考察されている。
「平成・令和仮面ライダーが表現する現代の“悪”【1】」の最後に触れた『ヒーローと正義』の著者である白倉伸一郎氏は、『仮面ライダークウガ』にプロデューサー補として参加し、その後平成前期9作品のうち7作でチーフプロデューサーを務めた平成ライダーシリーズの立役者といえる人物だ。
同書にて白倉氏は『クウガ』について当時国会に提出された少年法改正案を引き合いに出しつつ、第35話「愛憎」で主人公・クウガが少年怪人に激しい怒りをぶつけてとどめを刺すエピソードを紹介。少年犯罪が凶悪化したとされていた風潮に対する同作のメッセージ性の高さを評価した上で、クウガを「管理社会的秩序を、強く志向する」存在とし、正義が善きことを為す勧善から、悪に制裁を加える懲悪の方向にシフトしつつある世相を論じる。こうした自シリーズのヒーローが掲げる正義の相対化と分析こそが、平成前期シリーズに革新をもたらしていたのだろう。