サイゾーpremium  > 特集  > 裏社会学  > 平成・令和の【仮面ライダー】の敵
第1特集
平成・令和仮面ライダーが表現する現代の“悪”【1】

カルト集団の一員から私利私欲の暴走へと変化 平成・令和仮面ライダーが表現する現代の“悪”

+お気に入りに追加

――正義のヒーローを描くフィクション作品は、常に悪人と向き合ってきたと言えるだろう。中でもいまだに根強い人気を誇る「仮面ライダー」シリーズを見ると、そこでは実に多岐にわたる悪の姿が活写されている。主に平成・令和の仮面ライダー作品を中心に、同シリーズが描いてきた悪の変遷を詳らかにしていこう。

[EnemyPurpose]

【1】世界征服・侵略系
[代表的作品]
『仮面ライダーカブト』(06年)、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)、『仮面ライダーゼロワン』(19年)など

カルト集団の一員から私利私欲の暴走へと変化 平成・令和仮面ライダーが表現する現代の悪の画像1
(イラスト/なかおみちお)

世界を手中に収めることを目的とした悪の存在は、ショッカーをはじめ「仮面ライダー」シリーズにおける敵の王道路線といえる。平成・令和シリーズではその尖兵として、人類以外の種が多く描かれる。人間に擬態して社会に潜入・侵略しようとする『カブト』のワーム、ゲームを通じて新種の極小サイズのコンピューターウイルスが感染者の体を乗っ取る『エグゼイド』のバグスター、人類滅亡を目論む『ゼロワン』のサイバーテロリストに従えられた人工知能搭載の人型ロボット・ヒューマギアなど、その手法も詳しく設定され、現代的なアレンジが施されている。


【2】種の進化系
[代表的作品]
『仮面ライダー555』(03年)、『仮面ライダーフォーゼ』(11年)、『仮面ライダードライブ』(14年)など

2205_RIDER_2_320.jpg
(イラスト/なかおみちお)

種族としての進化や高次的存在との接触、世界の根源の解明など、哲学的な目的を掲げる敵が多いのも平成・令和シリーズの特徴だ。彼らは目的達成のためなら周囲のどんな犠牲も厭わない。『フォーゼ』のゾディアーツは宇宙の真理に触れる「覚醒の日」を起こすために暗躍するが、実現したら日本が壊滅するほどの被害が予測されていたという。『ドライブ』の機械生命体ロイミュードは自分たちが人間と同等、あるいはそれを超える生命体になることを行動原理としていた。また『555』の怪人オルフェノクは死を通じて人類が進化した姿で、種自体をオルフェノク化するため人類を殺害し続ける。


【3】歴史改変・世界創造系
[代表的作品]
『仮面ライダー電王』(07年)、『仮面ライダーディケイド』(09年)、『仮面ライダージオウ』(18年)など

2205_RIDER_3_320.jpg
(イラスト/なかおみちお)

過去や未来、あるいは世界の在り様そのものを意のままに変容することを目論む敵。『電王』の怪人イマジンは本来の未来と別の時間軸から来た精神エネルギー体で、過去に介入することで自分たちが存在可能な未来に導こうとする。『ディケイド』では、仮面ライダーディケイドが世界の崩壊を防ぐためにほかの仮面ライダーが存在する並行世界で戦いを繰り広げる。子ども向け番組としては複雑に思える設定だが、量子力学の多世界解釈により並行世界やタイムパラドックスといった概念が近頃は一般化していることも、こうした設定に影響を与えているのかもしれない。


【4】個人的願望の充足系
[代表的作品]
『仮面ライダークウガ』(00年)、『仮面ライダー龍騎』(02年)、『仮面ライダーオーズ/OOO』(10年)など

2205_RIDER_4_320.jpg
(イラスト/なかおみちお)

平成・令和シリーズでは、個人的な欲望や願望の暴走が悪の動機として頻繁に用いられる。平成シリーズ初代『クウガ』の戦闘種族グロンギが行う殺人ゲーム・ゲゲルは階級の優劣を競うという名目はあるが、闘争本能を充足させるためのように描かれる。『龍騎』では13人の仮面ライダーが各々の願いを叶えるため、最後の1体になるまで戦うライダーバトルを繰り広げる。『オーズ』のグリードは、さまざまな生き物の力を凝縮したメダルから生まれるも、完全体になれずに欲望を満たすことができない存在だ(傷つくと、血の代わりにメダルが流れ落ちる)。高度に成熟した社会では、個人の欲望こそが最も身近でリアルな悪ということか。


【5】その他・分類不能
[代表的作品]
『仮面ライダーアギト』(01年)、『仮面ライダー響鬼』(05年)、『仮面ライダービルド』(17年)など

2205_RIDER_5_320.jpg
(イラスト/なかおみちお)

1〜4以外にも、平成・令和シリーズでは多種多様な目的を持った悪が描かれる。『ビルド』では封印された地球外生命体エボルトが自分自身を完全態として復活させるため、日本全土を巻き込んでいく。『アギト』のアンノウンは、人類とアンノウンの創造主である「闇の力」に匹敵する力を持つ「アギト」となる可能性がある人間を襲う。つまり「闇の力」は一種の神であり、アンノウンは人類が強大な力に目覚めることを阻止する天使に近い存在なのだ。そのほか、『響鬼』の魔化魍は自然発生する鬼・魔物の類で一種の災害のように見える。残念ながら同作は放送中にプロデューサー交代が起こり、当初の展開から大きく変更されたため、“悪”の目的が判然としない部分も多い。


ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年11月号

サヨクおじさんが物申す 腐敗大国ニッポンの最新論点

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ