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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【75】

幽霊、悪党たちが笑うおぼこい業界。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった? 生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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90年代の『週刊少年チャンピオン』を支えた名編集長の回想録。冒頭から梶原一騎のゴッドハンド事件で面白くならないわけがない。

今号の特集テーマは「悪」らしいが、少女マンガの「極道」人気は20年ほど前からTLやBLでプチブームを何度か繰り返していたから、ようやく幼年向けにも来たかと感慨深い。当時、あるBL誌で極道ものを描いていた人気マンガ家が、編集部から「実在するので使えない団体名」リストを渡されたこともあった。さすがは「ア●ヒ芸能」の出版社だ。

マンガ家の犯罪話も時折、報道されるが、むしろ犯罪に疎いおぼこさから微罪が針小棒大になる有名税ケースのほうが多い。そもそもインドアの極みな商売だから、できる犯罪もたかが知れているし、大手だと担当編集の犯罪の片棒を担がされることもある。某メジャー誌の有名編集者は子飼いの人気作家に社外の仕事を仲介し、そのキックバックを資金に社内派閥を作り、先輩たちを追い落としたが、やりすぎて経営陣ににらまれ、社長にはなれなかった。そういえば、狸穴町のロシアンパブで出会ったロシア人に騙されて健康食品ビジネス詐欺に遭い、自費出版商売も焦げつき、本業のマンガ編集部をリストラしようとしたら誌上でその顛末を暴露され、結局は倒産、行方不明という馬鹿な社長もいた。30年近く出版業界にいると、本当にいろんなことがある。

昔、カンボジアの国境地帯へ幼女ポルノの裏ビデオを撮りに行き、帰国後に逮捕されたロリコンマンガ家もいたが、実は関西のヤクザの組長の息子だったから、これをマンガ家に括るのは違うような気がする。実際、勤めていた出版社では事件前から門前払いだったが、上司に理由を聞いたら「本物はダメだ」と。いくらロリコンマンガ誌とはいえ、リアルバウト餓狼な実践派は困るのだ。背景に深夜の小学校の教室を実写取り込みで描いたマンガ家はギリギリ笑い話だったが、仕事場に入手先不明の使用済みスクール水着を飾っていたマンガ家には困惑しかなかった。怖いよ。

あと、担当していた新人マンガ家に幼女へのわいせつ行為で逮捕歴があることを知り、クビにしたら逆恨みされ、匿名掲示板にスレを立てられた。引導を渡した際のやりとりがそのまま書かれていたから一発でわかったが、その後、有名なアニメ制作会社で作画監督になり、SNSに妻と娘の写真を載せていたのには驚いた。更生していれば、特に問題はないのだが。

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