今年の秋、全寮制をとっているイギリスの名門パブリックスクールの日本校が岩手県に開校する。日本では全寮制はさほど一般的な進学先ではなかったが、近年、インターナショナルスクール人気の高まりとともに新規開校が増えている。なぜ今、全寮制にスポットが当たっているのか──。
1960年、インド初代首相のジャワハルラール・ネルーが母校であるハロウ校を訪れた際の様子。ネルー首相は同校卒業後、ケンブリッジ大学に進学した。(写真:Douglas Miller/Keystone/Hulton Archive/Getty Images)
今年9月、イギリスの名門パブリックスクールであるハロウ校が岩手県八幡平市・安比高原に開校予定だ。同校はチャーチル首相などの政治家や俳優ベネディクト・カンバーバッチら著名人を多数輩出しており、映画『ハリー・ポッター』シリーズのロケ地になったことでも知られている。パブリックスクールの最高峰「ザ・ナイン」のひとつが日本に上陸するとあって、教育界を大きく騒がせている。
さらに来年9月には同じくザ・ナインのひとつであるラグビー校も千葉県柏市に開校予定だ。両校は「ボーディングスクール」と呼ばれる寄宿制(全寮制)をとっており、いずれも小学校6年生〜高校3年生相当の生徒を受け入れる。
実は今、日本国内で、学齢を問わずこうした全寮制校の開校が相次いでいる。2019年に広島県神石高原町で小学生を対象とした神石インターナショナルスクールが開校。広島県では同年、県立の全寮制中高一貫校・叡智学園も開校した。同校はインターナショナルスクールではないが、国際バカロレア認定校となっている。年内には愛知県日進市で国際高等学校と、長野県白馬村で中1〜高3を対象にした白馬インターナショナルスクールが開校を控える。
日本において進学先として全寮制学校は決して一般的ではなかったはずだ。強豪運動部であったり不登校児を受け入れるフリースクールだったり、事情があって入学するものというイメージが根強い。
「ダウンタウンの浜田雅功さんや今田耕司さんの母校・日生学園(校名は当時)の往年のスパルタぶりがテレビでよくいじられますが、同校で80年代にいじめや自殺が問題になったように、全寮制校に明るいイメージはなかったと思います。それが近年、再び注目を集めるようになっているんです」(受験情報誌編集者)
人気の理由は「子どもの自主性が育つ」「協調性が身につく」「親離れ・子離れがしやすい」「環境が良い」などだという。
「受験に熱心な家庭ほど母子密着状態になりやすいことを危惧している親御さんは多い。思春期に親元を離れて同世代と共同生活を送ることで自主性が身につき、長期休暇で帰ってくると身の回りのことを自分でこなす姿に感動する……というのは全寮制を選んだご家庭でよく聞く話です」(同)