通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!
自動運転に電動スクーターにリニアモーターカーと、日本の交通インフラにもどんどんと新しい波が押し寄せている。おまけにカネ配りオジサンなんか、宇宙ステーションへフラッとお出かけしちゃっている。世界を見ても、欧州でEVが爆売れしたり、スター起業家がSFのような交通システムに投資したりと、なんだかスゴいことに。21世紀の交通網、ちょっと始まりすぎてない?
[今月のゲスト]
日高洋祐(ヒダカ ヨウスケ)
2005年、鉄道会社に入社。ICTを活用したアプリの開発や公共交通連携プロジェクト、モビリティ戦略策定などの業務に従事。14年、東京大学学際情報学府博士課程において、MaaSの社会実装に資する提言をまとめる。現在は、MaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う。
●利用交通機関の内訳及び地方ブロック内々での利用交通機関の内訳(2019年)
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(出典)国道交通省「令和3年版交通政策白書」より
クロサカ 本日のゲストは日高洋祐さんです。日高さんはJR東日本などを経て2018年にMaaS【1】のスタートアップを創業され、交通業界や自治体と一緒に新しい交通インフラの創出に取り組んでいらっしゃいます。交通インフラは莫大な投資が必要だし、遠い未来を想定する必要があるので、一般には大企業や国の仕事と思われています。私が支援している通信業界も似ていますが、その領域での起業はかなりのご苦労があると思います。
日高 交通やモビリティには約100年前に転換点がありました。今から約100年前には自動車の大量生産・普及が始まり、鉄道やバス等公共交通網と自動車道路ネットワークがどんどん進化して都市に国土に張り巡らされた時代でした。そして、これからの100年を考えると、その構築された交通・モビリティインフラがデジタルでつながっていく転換点だと思います。
クロサカ 自動運転やシェアリングサービスなど今、交通分野に注目が集まっていますよね。
日高 それらモビリティ自体の進化ももちろんありますが、これから起きることのひとつとして、交通網という張り巡らされたフィジカルをデジタルで表現して、今ある交通にかかわるものをすべてつなぎ合わせることです。交通に関するデータがすべてつながると、オペレーションがガラッと変わる。これは100年後だけではなく、むしろ数年後くらいに向けても必要なことだと思います。
クロサカ そうした長期の予測から逆算して、現在必要なことを考えているんですね。今年1月にアメリカで開催されたCES 2022では、今年も交通に関するさまざまな技術がアピールされました。どんな印象を持ちました?
日高 CESでは、2つの流れがあったと思います。ひとつはモビリティから内側に進化するもの、もうひとつはモビリティから外側に広がっていくものです。1つめの内側に進化するのは、簡単に言うと「自動車のスマホ化」です。自動運転によって車内空間での過ごし方が変化するので、車内をパーソナライズして音楽や映像をレコメンドしたり、仕事をしやすくしたりといったものです。ソニーやアップルといった電機系メーカーの参入もそれを見越してのものと言われています。車内のセンサーを付けて、座席毎に冷暖房を最適化、効率化して、その席をその人に特化した空間を作る技術も発展しています。
クロサカ 自動運転で車内での時間の使い方がまったく変わると言われていますよね。