サイゾーpremium  > ニュース  > カルチャー  > “雲の子”が描いた最先端電子音楽の豪華コンピ

――サイゾー本誌ではアメリカのカルチャーをレポートしてきたLA在住のライター、バルーチャ・ハシム廣太郎氏。実は音楽レーベルの運営も行っており、このほど新しい電子音楽のコンピレーション・アルバムをリリースした。本人自ら同作を解説する!

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バルーチャ・ハシム廣太郎とアキコ・バルーチャによるSunEye。

LAのアンダーグラウンド・ミュージック・シーンには、メインストリームからはなかなか脚光を浴びない良質な実験音楽、インプロヴィゼーション・ミュージックをクリエイトしているアーティストが多数います。そんなアーティストたちにスポットライトを当てるべく、私たちは2016年にレーベル〈Plant Bass Records〉を立ち上げました。

これまで、LAのインプロヴァイズド・ミュージック、ジャズ、アンビエント・シーンにおけるキーパーソンであるカルロス・ニーニョの作品や、カルロス・ニーニョとジェシー・ピーターソンのユニットであるターン・オン・ザ・サンライトの作品もリリースしてきましたが、最初のリリースとなったのが2016年発表のコンピレーション・アルバム『KUMOKO』でした。

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KUMOKO

私と公私共にパートナーのアキコ・バルーチャはSunEyeというエレクトロニック・ミュージックのユニットとして活動しながら、〈Plant Bass Records〉を運営しているのですが、2人で2011年にハワイ・マウイ島を訪れたときに、飛行機から見えた雲があまりにも美しく、それに感銘を受けて『KUMOKO』というコンピレーションのアイデアが生まれました。

「この雲の中に雲の子が住んでいそうだね」という何気ない2人の会話から、KUMOKOという雲のスピリットが空の「大いなる目」から誕生し、雲を使ってアートをクリエイトし、空を色鮮やかに染めるという壮大なストーリーが自然と形成されていったのです。こうしてリリースされた第1弾のコンピレーション『KUMOKO』には、ACO、ボアダムスのYOSHIMIO、ドイツのエレクトロニクス・ミュージシャンOval、LAのDntel、カルロス・ニーニョ、Chocolat & Akito、ストリングス奏者のミゲル・アットウッド・ファーガソン、ナチュラル・カラミティなど、27人の世界中のアーティストたちにKUMOKOのストーリーを音楽として表現していただきました。

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ELECTRONIC KUMOKO cloudchild

そして、2022年1月17日にデジタル・リリースしたのは、このコンピレーション・シリーズの第2弾となる『ELECTRONIC KUMOKO cloudchild』。同じKUMOKOのストーリーをアンビエント、エレクトロ・ファンク、ダンス・ミュージックなどのエレクトロニック・ミュージックとして総勢21人のアメリカと日本のアーティストに解釈してもらい、新曲を提供していただきました。

日本からは、YMOとの活動やシンセサイザー・プログラマーの第一人者として知られる松武秀樹と『月姫』など80年代のシンセ・ポップ作品が世界的に再評価されている山口美央子、日本の環境音楽やアンビエント界の重鎮である小久保隆、アイドルから実験的エレクトロニクス・ミュージシャンに転身したTENTENKO、映画やテレビ音楽の作曲家として知られる瀬川英史と岩城由美による書き下ろしの新曲も収録。

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<上段左より>松武秀樹、山口美央子<中段左より>小久保隆、TENTENKO<下段左より>瀬川英史、岩城由美

カリフォルニアからは、プロ・スケーター兼ミュージシャンのレイ・バービー、LAのインプロヴァイズド・ミュージックを代表するカルロス・ニーニョ、LAジャズ・シーンのホープとして知られるジャズ・ピアニストのジャメル・ディーン、LAテクノ・シーンのベテランであるジョン・テハダ、レーベル〈Leaving Records〉を運営するマシューデイヴィッドが楽曲を提供しています。

近年、ウェスト・コースト・モダン・ファンク・シーンが再び盛り上がりを見せているのですが、そのシーンを代表する〈MoFunk Records〉オーナーでもあるXLミドルトン、ボーイ・デュードもKUMOKOをコンセプトにしたエレクトロ・ファンク・チューンを制作。ザ・シー・アンド・ケイクのフロントマンでありながら最近はモジュラー・シンセ・アーティストとして注目されているサム・プレコップ、ニューヨークからはビジュアル・アーティストとしても活躍するヒシャム・アキラ・バルーチャ、テキサス州マーファを拠点に活動する画家/ミュージシャンのロブ・マズレクらには、シネマティックでアブストラクトな楽曲を提供してもらいました。

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<1段目左から>レイ・バービー、カルロス・ニーニョ、ジャメル・ディーン<2段目左から>ジョン・テハダ、ブリン&マシューデイヴィッド<3段目左から>XLミドルトン、ボーイ・デュード<4段目左から>サム・プレコップ、ヒシャム・アキラ・バルーチャ、ロブ・マズレク

 エレクトロニック・ミュージックといえば、クラブ・ミュージックやEDMを連想する人も多いかもしれないですが、パンデミック中のLAでは小規模なアンビエント・ミュージックの野外イベントが開催されたり、世界的には日本の環境音楽が再評価されたりするなど、「癒しの音楽」としてのエレクトロニック・ミュージックも注目されるようになりました。今回のコンピレーションは、そんな癒しの側面を取り入れながらも、常に変化・進化し続けるエレクトロニック・ミュージックのさまざまな形を、シリアスにならず、遊び心を忘れずに表現しています。『ELECTRONIC KUMOKO cloudchild』を聴きながら、想像力を自由に膨らませたり、童心に帰ったり、心を癒していただけたら幸いです。

ELECTRONIC KUMOKO cloudchildトラックリスト
01. IMA & SunEye「Kumo Daisuki」
02. Mioko Yamaguchi & Hideki Matsutake「KUMOKO Yume」
03. Ray Barbee「Always Dreamin'」
04. Sam Prekop「There is Kumoko」
05. Jeremiah Chiu「Rocks Rise in Size」
06. Carlos Niño & Friends「Found Scrolls of Hollow Earth (with Jamael Dean and Nate Mercereau)」
07. TENTENKO「The Bug's Dream」
08. John Tejada「Kumoko's Chase」
09. BOY DUDE「KUMOKO - How can I reach you?」
10. XL Middleton「Kumoko Takes To The Sky」
11. YOKUBARI「Kumo Tono Kusen」
12. Rob Mazurek「Future Energy Beam Song」
13. Brin & Matthewdavid「imaginary creature clouds」
14. Jira ><「Shores」
15. lucky dragons「the wheel」
16. r beny「Heart Leap」
17. Yumi Iwaki & Eishi Segawa「Seed Cycling」
18. Money Mark「Cloudy Kumoko」
19. Takashi Kokubo「雲を超えて-Kumo wo Koete-」
20. Turn On The Sunlight featuring Thalma & Yohei「Kumoko Na Praia」
21. SunEye「Yummy Cloud」
22. IMA & SunEye「Kumoko Outro」

〈Instagram〉
@kumokocloudchild
@suneyemusic
@plantbassrecords

〈Twitter〉
@kumokosays
@suneyemusic
@Plant_Bass


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