――「Kindle」や「コミックシーモア」などの電子コミック書店の期間限定で読めるマンガの中には、必ずといっていいほど「異世界転生モノ」がある。ある一定以上の年齢からすると、どれも似たようなタイトルで、似たようなストーリーだが、なぜそんな内容でも売れているのだろうか? 昨今の異世界ブームの実態を探る。
『Re:ゼロから始める異世界生活』のラムのコスプレをする女性。(写真:Getty Images/Oran Tantapakul/EyeEm)
現実社会で暮らしていた人物がひょんなことから異世界に飛ばされ、超人的な能力を与えられたり、もともと持っていた知識を駆使して大活躍する……。『蜘蛛ですが、なにか?』【1】、『転生したらスライムだった件』【2】、『賢者の孫』【3】といった作品が代表的な、「異世界転生モノ」と呼ばれるタイプの物語は、ライトノベルやマンガ、アニメなどのコンテンツ市場で一大ジャンルを形成しているが、近年はマンネリ化が指摘されている。
もともと、異世界転生モノは小説投稿サイト「小説家になろう」(以下、なろう)から人気に火がつき、「なろう系」と呼ぶこともある。事実、多くの「なろう系」作品が冒頭で述べたようなプロットをなぞっているほか、タイトルには必ずといっていいほど「異世界」「無双」「チート」「最強」といったキーワードが含まれるなど、門外漢にはもはや見分けがつかない。
とはいえ、そんな飽和状態にあってもヒット作はコンスタントに生み出されている。その要因はどこにあるのか? また、異世界転生モノに今後もジャンルとして生き残る余地はあるのか?
「異世界転生モノは、ライトノベルに限っていえばもう下火になっています。大ヒットタイトルは4~5年前までのものが多く、それらがようやくコミカライズやアニメ化に至っている状況。例としては『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』【4】などが挙げられますが、今後、新規の異世界転生モノで、このレベルまでヒットを飛ばす作品は出てこないと思います」
そう語るのは、ライトノベルを得意とする大手出版社の文芸編集者。いきなりぶっちゃけられてしまったが、異世界転生モノが下火になった理由とは何だったのか?
「売れなくなった理由はいくつか考えられますが、まずひとつは単純に飽きられたということ。『なろう』などのランキングで上位にくる作品が研究され、作家側が“売れる作品のパターン”を理解してしまったのです。その結果、2017年頃には出版業界内で『ランキングはアテにならない』という認識が定着していたといわれています」(同)