――女性の権利向上が叫ばれる中で、性の課題について、テクノロジーで解決を試みるベンチャー企業が世界中で産声を上げている。米国ではすでにフェムテックへの投資市場は巨大なものになっており、日本でも少しずつではあるが、タブーを破り始めている。セクシュアルウェルネスを向上させる最新商品や企業を追った。
「femtech」という言葉を作り出したといわれるデンマーク出身の実業家・イダ・ティン。海外でも女性の投資家はまだ多くはないという。(写真/GettyImages)
セクシュアルウェルネスという言葉がトレンドワードとして広まりつつある。
日本語では「性の幸福感」などと訳すことができるが、世界保健機関(WHO)によれば「セクシュアリティに対して身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態であること」と具体的に定義されている。言い換えれば、性的に健康であり心が満たされ、性的アイデンティーが社会から認められ、かつ性の快楽を自由に享受することが保証されている状態を指す言葉となる。
これまで性について語ることは多くの国や社会で“タブー”とされてきた。もしくは男性中心の考え方が主流となり、女性やセクシュアルマイノリティの性は社会的に置き去りにされていた。セクシュアルウェルネスには、それら“性の課題”を克服し、よりオープンに、そして誰もがその喜びと恩恵を享受できるよう多様な価値観を認めていこうという志向性がある。加えて、性に科学的にアプローチすることで、より自身や他人の性について理解を深めるという思想も含まれている。
セクシュアルウェルネスという言葉に、まず敏感に反応しているのがビジネスの世界だ。昨今では、性的な健康や喜び、ひいては幸福感を高める「セクシュアルウェルネスグッズ」が世界各地から続々と登場している。
従来のグッズとの違いや新規性はどこにあるのか。世界初となるフェムテック専門オンラインストアを運営する日本企業・fermata(フェルマータ)に最新トレンドの解説をお願いした。話を聞かせてくれたのは、同社グローバルビジネスマネージャーを務めるLia Camargo氏だ。
なおフェムテックとは「女性の健康課題を解決するためのテクノロジーを活用したプロダクトやサービス」を指す。その範疇には、ホルモン検査キットや月経周期の管理アプリ、妊活サポートなど、女性が抱える悩みを解決するサービスやプロダクトが含まれる。セクシュアルウェルネスは、フェムテック業界にとっても重要なイシューのひとつ。そのためfermataでは、数あるフェムテック関連商品のひとつとして新たなコンセプトを持ったセクシュアルウェルネスグッズも取り扱っている。Lia氏はまず、既存のアダルトグッズとセクシュアルウェルネスグッズの違いについて簡潔に説明してくれた。
「日本では性的な快楽をサポートするグッズは、一般的にアダルトグッズと呼ばれてきました。セクシュアルウェルネスグッズは性的な快感はもちろんですが、ヘルスケアやコミュニケーションなど、より広範な意味合いでウェルネスを実現するための意図を持って開発された商品群です」(Lia氏)
従来のアダルトグッズはデザインが生々しく買うのが恥ずかしい、もしくは男性本位で女性やセクシュアルマイノリティは使いづらいというような商品が少なくなかった。また肉体的な刺激だけにフォーカスされ、精神面や身体的特性をケアする要素が抜け落ちてしまうというケースが往々にしてあった。
「セクシュアルウェルネスグッズ企業や開発陣には男性もいますが、女性やセクシュアルマイノリティの方々も多く参画しています。つくる側の人の立場や考え方、身体の違いなどに多様性があるのがセクシュアルウェルネスグッズの特徴となっています」(同)