――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!
KISS
(絵/濱口健)本文で書きそびれたメンバーの変遷について。ドラムはピーターとエリック・シンガーの間にエリック・カーが、リードギターはエースの後にヴィニー・ヴィンセント、マーク・セント・ジョン、ブルース・キューリックが在籍した。
橋幸夫が引退する。80歳を迎える2023年5月3日の誕生日公演でマイクドロップ予定なのだ。ここ数年、「年齢による声の衰えには逆らえない」と悩んだ末、「引退ビジネス」と批判されることも覚悟で決断したという。
最後のツアーは22年1月から件のバースデイ公演まで続く。確かに長いが、この程度で「引退ビジネス」呼ばわりならば、日本のショウビズはまだまだウブじゃのう。というのも、今回紹介するバンドの「フェアウェル・ツアー」の横浜公演を私が見たのは01年。それから20年が過ぎて、彼らはいまだにツアー中なのだから。
〈Wicked Lester〉なるバンドにいた2人のユダヤ系青年、ジーン・シモンズ(ベース&ボーカル)とポール・スタンレー(ボーカル&ギター)が新バンド結成に動いたのは70年代初頭。やがて「ウィルソン・ピケットのような声で歌う」イタリア系のピーター・クリス(ドラム)とオランダ系のエース・フレーリー(ギター)が加わり、多民族なニューヨークを象徴する4人が集う。ピーターの過去のバンド〈Lips〉からの連想で〈KISS〉(以下、キッス)と命名し、エースがロゴを手描きした。
「ビッグになるためにはなんでもやる」覚悟のジーンとポールは、前バンドよりハードなサウンドと、白塗りメイク&超絶コスチュームによる視覚的インパクトを、のちにはキャラクター設定とステージ演出も導入する。もっとも、メイクばっちりで臨んだ73年の初コンサートの観客は10人に満たなかったが。めげずにエディ・クレイマー制作の5曲入り本格的デモテープを仕上げた彼らは、レコード会社の物色を開始。ブッダ・レコーズの重役を務めていた見る目がある業界人、ニール・ボガートが立ち上げたばかりのカサブランカ・レコーズ初契約アーティストとなった。