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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第160回

『ドーナツキング』カンボジア難民ドーナツ王波乱万丈な半生

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――雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。


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『ドーナツキング』

ポル・ポト政権による大虐殺を逃れたカンボジア難民は、アメリカで「ドーナツ王」と呼ばれるが……。

監督:アリス・グー、出演:テッド・ノイほか。


カリフォルニア州にはドーナツ店が5000店あるが、そのうち8割がカンボジア系の経営だ。なぜ? そう思った30代の中国系女性監督アリス・グーさんは、「ドーナツ王」と呼ばれたカンボジア難民、テッド・ノイの存在を知る。テッドは1980年代にドーナツ帝国を築いたが、その後、何もかも失ってホームレスに落ちぶれていた。グー監督は彼を見つけ出し、波乱万丈の生涯を語らせた。それがドキュメンタリー映画『ドーナツキング』だ。

80年前、テッドはカンボジアの中国系一家に生まれた。高校時代、一目惚れした少女クリスティはカンボジア政府高官のご令嬢だった。だが、テッドは身分の差くらいであきらめる男ではなかった。彼は夜な夜なクリスティの住むお屋敷のそばでフルートを吹いた。その美しい調べにクリスティが魅了された頃、窓から恋文を投げ込んだ。「僕はあなたに恋しています。あなたの部屋にお邪魔してもいいですか?」。彼女はジョークで返した。「お母様の部屋と間違えないでね」。

それをイエスと思ったテッドはヤシの木を登って窓から入ってきた。クリスティは彼をベッドの下に隠さざるを得なかった。それから彼はなんと45日間も彼女の部屋に潜んだという。犯罪だろ!

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