――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。
今月のテクノロジー
『リパブリック』Republic公式HPより。2018年に登場した、ひとくち5000円〜1万円ほどから始められる、スタートアップ投資のサービス。株式投資型クラウドファンディングと呼ばれ、どんな人でも未上場株の投資に参加できる。そのほかに米国ではWefunder、日本ではイークラウドやファンディーノといったサービスが登場しており、誰もがエンジェル投資家になれる時代を後押ししている。
さながらAmazonでお買い物をするかのごとく、自分が気に入ったスタートアップを物色しては、ワンクリックで彼らの株式に投資をする――そんなサービスが今、米国で徐々に広がってきている。
これまでスタートアップ投資というのは、限られた人たちしかアクセスできない分野だった。理由はシンプルだ。わずか数年で巨大なビジネスをつくってしまうスタートアップがある一方で、気づいたらライバルたちに敗れて、消え去っていくスタートアップも無数にある。
つまりスタートアップ投資というのは、ハイリスク・ハイリターンの世界だ。例えば2004年、創業まもない学生ベンチャーだったフェイスブックに、すでに成功した起業家だったピーター・ティール氏が50万ドル(約5500万円)を即金で投資したことは有名だ。この時の投資は、後になって数千億円という規模のリターンをもたらしたと言われている。
もちろんこれは場外ホームラン級の投資だ。フェイスブックが、単なる学生向けの恋人探しのためのネットワークで終わっていれば、その5500万円は藻屑と消えていたはずだ。
しかし大前提として、そもそも米国において大多数の一般人は、長らくスタートアップ投資の「蚊帳の外」に置かれてきた。
シリコンバレーなど特殊なエリアに住んでいたり、ハーバード大学やスタンフォード大学などのトップスクールの卒業生ならば、こうしたチャンスに自然とめぐり合う。日本であれば、都心にある急成長中のスタートアップで働くなど、この界隈にたくさんの知り合いがいなければ、そんな話に出会うこともないだろう。
さらに法的な制限もある。リスクの高いスタートアップへの投資は、いわば未上場株への投資だ。こうした投資をするには、米国では適格投資家と呼ばれる、特定の条件を満たさないといけない。
そのためには純資産で100万ドル(約1億1000万円)を持っているか、年収が2年連続で20万ドル(約2200万円)あり、これからも同水準が見込めるという経済力が求められる。
ところが米国では16年、あらゆる人たちにスタートアップ投資を開放するような法律(JOBS法)が施行された。
具体的には、スタートアップの経営者たちが、クラウドファンディングという形式を取りながら、多くの人たちから株式投資を受けられるというもの(上限は年額500万ドル)。そして適格投資家の条件を満たしていなかった人たちでも、Amazonやメルカリで買い物をするかのように、ちょこちょことスタートアップの株主になる道が開かれたのだ。それによって、冒頭で紹介したような、まったく新しいサービスが生まれているのだ。