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第1特集
イスラムを理解するための本

なぜタリバンの政権を支持? イスラムやアフガンの読み解き方

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――今年8月、アフガニスタンでタリバンが復権し、日本でも大きな注目を集めている。日本人にとっては、イスラム教やムスリム、またはそれにまつわる政治や紛争などについて馴染みがないものだが、多様性がますます重要視される今、あらためてタリバンやイスラムを理解するために、補助になる書籍を紹介する。

日本の報道ではイスラム主義組織と呼称されているタリバンが、アフガニスタンの政治権力をふたたび掌握した。

米国は9・11同時多発テロを起こした国際テロ組織・アルカイダを保護しているという理由から、2001年以降に軍事報復および攻撃を開始。タリバン政権を転覆させた。それからおよそ20年の月日が経過した21年8月中旬、タリバンはとりわけ大きな抵抗も受けず首都・カブールを“無血開城”するにいたった。流暢な英語やSNSを駆使してメッセージを発信するその姿は、政権消失以前のタリバンとは一線を画す印象が強く現在、世界中に大きな衝撃を与えている。

ただしタリバン政権奪還の報せに対する世界のまなざしは、真っぷたつに割れているのが実情だ。まず西欧メディアの論調は“ネガティブ一色”である。シャリーア(イスラム法)の厳格な解釈に基づいた“非民主的な国家運営”が再開されることに対して、憂慮する論調がほとんどを占めている。その上、捕虜殺害や反対派への暴力、自爆テロ、女性の人権・権利抑圧といった事象を取り上げ、厳しい批判の目を向けている。

その一方、一部のイスラム教徒(以下、ムスリム/ムスリマ)からは、タリバンの政権奪取を祝福する声が聞こえてくる。パキスタンなどイスラム国家においても公式・非公式に、厳格なイスラム国家誕生を好意的に捉える動きがあるという。

日本社会においては、西欧諸国の価値観を重視したメディア報道に接する機会が圧倒的に多い。それらを鵜呑みにしてしまえば、アフガニスタンの国民や世界のムスリムたちが抱えた、重層的な思いに寄り添うことは難しくなるだろう。日本国内にも在住する彼らの価値観を理解するためにも、より多角的な視点が必要になってくる。

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DJ NAKAMULLAH氏(写真/二瓶 彩)

そこで、イスラムやアフガニスタン情勢、そしてタリバンをしっかりと理解するための本を、ナビゲーターの解説に沿って紹介していくことにしたい。関連書籍を紹介してくれるのは、ムスリムでありイスラムの歴史や音楽など文化に詳しいDJ NAKAMULLAH氏だ。

同氏は、一般にイスラム圏と呼ばれるエリアの音楽カルチャーに魅せられ、アラブ世界などイスラム教圏を取材。現地レコードを収集しながら日本で紹介する活動をしている。ヴァイナルディグでエルサレムを訪れた際にアル・アクサ・マスジドで改宗を行っている。なお、タリバンなど厳格なムスリムにとって、音楽は「禁じられているもの」と解釈されることが趨勢だ。そうした中で、イスラム文化に育まれた豊かな音楽を掘り起こし、その在り方を模索していく作業を自身のライフワークとしている。

「イスラム教徒は世界に、16億人いるとされています。日本ではまだ、“外国の宗教”、“ときにアラブ人の宗教”とすら捉えられがちですが、イスラム教全体でみると例えばアラブ系の人口は2割程度ともいわれています。アジアやアフリカはもちろん欧米にも信徒は多く、世界的規模の宗教です。、日本ともそれほど遠い宗教では決してない。そしてもちろん究極的には、本当に正しいイスラムとは、唯一神である創造主アッラーが全てご存じのことですので、私などがお伝えするのはあまりにも恐れ多いものがあります。ただし、たしかに明らかな言語をもってアッラーからの啓示は下され、クルアーンとして一字一句かえられることなく、人々に継承されました。稚拙な私が、その理解にほんの少しでも近づくために親しみを覚えた書籍を、ご紹介できればと思います」(以下、NAKAMULLAH氏)

そこでまず最初に紹介するのは、『聖クルアーン~日亜対訳注解~』【1】だ。「クルアーン」(コーラン)はイスラムの聖典であり、唯一無二の神アッラーが最後の預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)に下した啓示を記録したもの。さらに、『クルアーン~語りかけるイスラーム』【2】もおすすめだという。

「イスラムを知るために最初にコーランを読むのは素晴らしいことですが、和訳でも理解するにはハードルが高いかもしれない。難解に感じるかもしれませんし、文(章)の構造なども日本語話者には少々とっつきにくい並びや構築と見えるかもしれません。そういう意味でも本書は、そもそもクルアーンとはどんな書物なのか? というところから平易に語りかけてくれ、その親しみやすい論調は、もしクルアーンに距離のようなものを感じていたら、それを近づけてくれると、私は思います」

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